Presentation Information
[T11-O-5]Study on urban ground conditions in the Osaka Bay Area
*Naoko KITADA1, Mamoru MIMURA1 (1. Geo-Research Institute)
Keywords:
Bay Area,Landfill,marine clay,borehole data,urban ground
大阪のベイエリアは,咲州,舞洲,夢洲は1967年~埋立てが開始され,その後,大阪港第4次改訂計画では咲州,舞洲,夢洲の地域を国際交易,高度情報通信,先端技術開発の機能集積を図るベイエリアとしての街づくり計画が立案された。夢洲では大阪関西万博が現在進行形で開催されており,将来的には統合型リゾートの用地としての利用が計画されている。夢洲は良質土で埋め立てられるような通常の埋立地と異なり,大阪港の航路確保のために浚渫された土砂の土捨て場として計画されたもので,埋立に用いられる材料が軟弱な粘性土であるという特徴を有している。このため,大阪湾内の建設工事で想定される自然堆積地盤の沈下に加え,埋立層の圧密沈下が生じるという特異性がある。当該地では埋立事業に伴って,多数のボーリング調査がなされており,ベイエリアの堆積環境のみではなく,開発に伴う地盤の変化も併せて検討することが可能である。
本発表では,ベイエリア地域の堆積環境の特徴と開発における地盤の変遷について,その特徴を示して発表する。 ベイエリアの北端は現淀川の河口である。旧淀川の流路は大川・堂島川・安治川からなり,さらに木津川,尻無川に分流することから,実際には,埋立地の地域は旧淀川の河口域に該当する。関西圏地盤情報ネットワーク(KG-NET)の地盤情報データベースに格納されるデータを用いて検討を行うと,大阪市内から港湾部に至っては,Ma12層の上面をDg1層が削剥しながら堆積する構造が観察される(北田1),KG-NET・関西圏地盤研究会2)など)。このDg1層の削り込みの大きな部分は当時の河道と推定でされ,安治川河口域から西南西方向に,尻無川河口域から西に向かって旧河道が流下していることが読み取れる。また,夢洲地域では,埋立前に実施されたボーリングの海底面標高は約-10 mであり,これがMa13層の上面標高である。これに対して,2019~2020年のボーリング柱状図から読み取れる旧海底面の標高は約-18 m程度である。埋立に伴ってMa13層およびその下位の粘土層が圧密して沈下していると考えられる3)。 埋立前の夢洲周辺の地盤の特徴は,海底面(標高約-10 m)から沖積粘土層(Ma13層)が堆積しており,その下に第1洪積砂礫層(Dg1層)が標高-40 m付近に層厚6~8 m程度確認できる。その下位には洪積粘土層(Ma12層)が確認できる。いずれも海成粘土層であるが,Ma13層およびMa12層の下位には海進時期に形成された砂とシルト層が互層状含まれる,やや粗粒なシルト質粘土層も一連の海成粘土層の一部に含んだ。Ma13層の下部層はシルトや砂を含むため,自然含水比wnや液性限界wLの値は比較的小さいが,海進が進んで海水面が上昇するとやがて安定した粘土層が堆積している(標高-30 m以浅)。すると,自然含水比wnと液性限界wLが大きく変化し,50%程度であったものが100%を越え,自然含水比wnもwn≒wLであることが特徴である。標高-30m~-15 m付近は海進最盛期で海が深い時期に相当し,この時期が最も液性限界wLが高い。Ma12層も下部の海進時の堆積物にwnやwLが小さくなる区間があることが確認できる。海進が進むと海成粘土が堆積してwn,wLが大きくなる傾向は同じであるが,海進最盛期 でもwn<wLである。Ma13層最上面は埋立前の海底面であるが,海底面から数mまでの区間は値がばらつく傾向がみられる。これは,最上部が浚渫によって攪乱あるいは人工埋め土の薄層が分布すると考えられる。Ma13層とMa12層の間に分布するDg1層は礫層からなり,上下粘土層が圧密する際の排水層となる。Ma12層の上面は海退の途中でDg2層に覆われていることから,Dg2層はMa12層の上端部を削剥して堆積している。削剥量は,河口に近い東側で多く,西側で少なくなる傾向が見られた。 このような地盤の特徴をモデル化することによって,今後の圧密変形に供する解析が可能となり4),埋立地の開発と維持管理に利用する。
1)北田奈緒子:地盤情報の活用による地質地盤リスク評価,地盤工学会誌,70(55),p10‐13,2022.
2)KG-NET・関西圏地盤研究会:新関西地盤-大阪平野から大阪湾-,354p.,2007..
3)北田奈緒子・三村衛・濱田晃之:ボーリングデータベースを用いた夢洲および周辺の地質地盤の特徴,Kansai Geo-Symposium 2022,pp.126-131, 2022.
4)北田奈緒子・三村衛・林健二:埋立前の夢洲の地盤性状と埋立による地盤の変形解析,基礎工,vol.53,No.7,pp.32-34.
本発表では,ベイエリア地域の堆積環境の特徴と開発における地盤の変遷について,その特徴を示して発表する。 ベイエリアの北端は現淀川の河口である。旧淀川の流路は大川・堂島川・安治川からなり,さらに木津川,尻無川に分流することから,実際には,埋立地の地域は旧淀川の河口域に該当する。関西圏地盤情報ネットワーク(KG-NET)の地盤情報データベースに格納されるデータを用いて検討を行うと,大阪市内から港湾部に至っては,Ma12層の上面をDg1層が削剥しながら堆積する構造が観察される(北田1),KG-NET・関西圏地盤研究会2)など)。このDg1層の削り込みの大きな部分は当時の河道と推定でされ,安治川河口域から西南西方向に,尻無川河口域から西に向かって旧河道が流下していることが読み取れる。また,夢洲地域では,埋立前に実施されたボーリングの海底面標高は約-10 mであり,これがMa13層の上面標高である。これに対して,2019~2020年のボーリング柱状図から読み取れる旧海底面の標高は約-18 m程度である。埋立に伴ってMa13層およびその下位の粘土層が圧密して沈下していると考えられる3)。 埋立前の夢洲周辺の地盤の特徴は,海底面(標高約-10 m)から沖積粘土層(Ma13層)が堆積しており,その下に第1洪積砂礫層(Dg1層)が標高-40 m付近に層厚6~8 m程度確認できる。その下位には洪積粘土層(Ma12層)が確認できる。いずれも海成粘土層であるが,Ma13層およびMa12層の下位には海進時期に形成された砂とシルト層が互層状含まれる,やや粗粒なシルト質粘土層も一連の海成粘土層の一部に含んだ。Ma13層の下部層はシルトや砂を含むため,自然含水比wnや液性限界wLの値は比較的小さいが,海進が進んで海水面が上昇するとやがて安定した粘土層が堆積している(標高-30 m以浅)。すると,自然含水比wnと液性限界wLが大きく変化し,50%程度であったものが100%を越え,自然含水比wnもwn≒wLであることが特徴である。標高-30m~-15 m付近は海進最盛期で海が深い時期に相当し,この時期が最も液性限界wLが高い。Ma12層も下部の海進時の堆積物にwnやwLが小さくなる区間があることが確認できる。海進が進むと海成粘土が堆積してwn,wLが大きくなる傾向は同じであるが,海進最盛期 でもwn<wLである。Ma13層最上面は埋立前の海底面であるが,海底面から数mまでの区間は値がばらつく傾向がみられる。これは,最上部が浚渫によって攪乱あるいは人工埋め土の薄層が分布すると考えられる。Ma13層とMa12層の間に分布するDg1層は礫層からなり,上下粘土層が圧密する際の排水層となる。Ma12層の上面は海退の途中でDg2層に覆われていることから,Dg2層はMa12層の上端部を削剥して堆積している。削剥量は,河口に近い東側で多く,西側で少なくなる傾向が見られた。 このような地盤の特徴をモデル化することによって,今後の圧密変形に供する解析が可能となり4),埋立地の開発と維持管理に利用する。
1)北田奈緒子:地盤情報の活用による地質地盤リスク評価,地盤工学会誌,70(55),p10‐13,2022.
2)KG-NET・関西圏地盤研究会:新関西地盤-大阪平野から大阪湾-,354p.,2007..
3)北田奈緒子・三村衛・濱田晃之:ボーリングデータベースを用いた夢洲および周辺の地質地盤の特徴,Kansai Geo-Symposium 2022,pp.126-131, 2022.
4)北田奈緒子・三村衛・林健二:埋立前の夢洲の地盤性状と埋立による地盤の変形解析,基礎工,vol.53,No.7,pp.32-34.
