Presentation Information
[T11-O-7]Aplication of microtremor measurements to active fault research
*Mamoru KOARAI1, Tomoki KANEKO2, Nobuyuki NAKAJIMA3, Shigeki SENNA4 (1. College of Science, Ibaraki University, 2. JRTT, 3. Graduate School of Science and Engineering, Ibaraki University, 4. NIED)
Keywords:
microtremor obsevation,active fault,displacement of terrace gravel,deposition of soft strata
1.はじめに 演者らは常時微動を使って段丘礫層のずれ等の地下構造を求めて、活断層の位置や活動履歴を明らかにする研究を行っている。これらの成果を紹介して、常時微動計測が活断層研究にどこまで有効かについて考えていきたい。
2.塩ノ平断層の例(小荒井ほか,2025) 2011年福島県浜通りの地震でいわき市に地表地震断層が出現した。1.9mの垂直変位の地表地震断層が出現した塩ノ平地区で、断層線を挟んだ河床内2箇所で常時微動計測した結果、基盤到達S波速度を300m/s前後と設定すると、6m弱西側(河川上流側)が低下する基盤のズレが確認できた。過去の活動で2011年と同程度の変位が発生したと考えると、河川が形成されてから3回程度の変位の累積が考えられる。地震直後は断層の低下側で深さ1.9mの深い淵が形成されていたが、現在軟弱な堆積物が厚く堆積し深さは30cm程度に変化していた。断層低下側の常時微動計測結果は、100m/s程度の軟弱地盤が深度3m、200m/s程度の軟弱地盤が深度7m強まで確認されており、複数回の上流側の低下による軟弱層の厚い堆積が示唆される結果である。塩ノ平断層は2011年に活断層と知られていない範囲まで活動して、綱木で60cm西側低下の地表地震断層が出現した。その周辺での常時微動計測では、基盤到達S波速度を300m/sと仮定すると、断層を境に130cm程度の西落ちの基盤のズレが確認でき、2回分の変位を記録している可能性がある。塩ノ平と綱木の変位の累積の違いは、綱木までは変位が及ばず塩ノ平周辺のみ動いた変動があった可能性を示唆する。
3.双葉断層の例(金子ほか,2025) 双葉断層は福島県浜通り地方の南北約100km以上の断層であるが、相馬市・南相馬市の一部を除き推定活断層とされている。鈴木・小荒井(1989)では真野川沿いの南相馬市栃窪と上真野川沿いの南相馬市橲原で東側1.5m低下の活断層露頭のスケッチと低断層崖の測量結果が記載されており、栃窪では福島県(1999)によるトレンチ調査も行われている。段丘露頭や断層露頭直上で常時微動計測を行った結果、断層東側のジュラ系の基盤到達S波速度を300~400m/s、断層西側の新第三系堆積岩の基盤到達S波速度を200m/sとした。低断層崖を挟む測線で多数計測を行った結果、栃窪ではⅢ面で約150cmの東側低下、Ⅴ面で約70cmの東側低下、橲原ではⅡ面で約150cmの東側低下、Ⅲ面で約70cmの東側低下が確認できた。2地区での段丘面区分の再検討が必要ではあるが、1回あたり70cm程度の東落ちの断層変位の累積性を示す。同様の調査を宇多川沿いの相馬市山上と請戸川沿いの浪江町室原で行っているが、山上では明瞭な基盤のずれが認められない結果、室原では地形・基盤双方にズレは確認できたが、詳細は不明である。
4.宮野原断層の例(小荒井ほか,2024) 新潟県津南町に位置する宮野原断層は、都市圏活断層図では推定活断層とされている。2011年長野県北部地震の震源断層では無かったが、建物被害は宮野原断層周辺に集中していた。産業技術総合研究所が断層線に直交する方向に群列ボーリングを実施しており、同じ場所でボーリングよりも高密度に常時微動計測を実施した。段丘礫層に到達したボーリングと対比し、その深度がS波速度が300m/s付近でS波速度が急上昇する深度に一致した。河岸段丘上の計測結果を河岸の地質調査と比較しても同様の結果で、S波速度300m/sに達する深度を段丘礫層の上端と設定した。常時微動計測結果から段丘礫層上端の明らかな変位が2箇所で確認できた。北側の変位は約5mで低断層崖の位置と概ね一致し、南側の変位は約7mで周辺の地形には大きな変位は認められない。段丘面が約5万年前に形成されたと仮定して、北側が0.11m/千年、南側が0.14m/千年の平均変位速度であった。宮野原断層の南側(低下側)に全壊建物が複数認められたが、S波速度が200m/s以下の地層が深度10m以上も存在しており、断層の低下側に軟弱な堆積物が厚く堆積している。
5.まとめ 露頭やボーリングデータのある地点でS波速度構造を求め、段丘礫層や基盤岩の到達深度のS波速度が設定できると、面的に常時微動計測を展開することで、地下の活断層の位置を推定することが可能である。また、断層低下側の軟弱堆積層の厚さから変位の累積を見積もることも可能である。
引用文献
金子ほか(2025)日本地理学会春季大会要旨集
小荒井ほか(2024)JPGU要旨SSS11-07
小荒井ほか(2025)JPGU要旨SSS14-05
国土地理院 1/25,000都市圏活断層図「相馬」「南相馬」「津南」
鈴木・小荒井(1989)活断層研究, 6, 23-29.
福島県(1999)双葉断層に関する調査報告書
2.塩ノ平断層の例(小荒井ほか,2025) 2011年福島県浜通りの地震でいわき市に地表地震断層が出現した。1.9mの垂直変位の地表地震断層が出現した塩ノ平地区で、断層線を挟んだ河床内2箇所で常時微動計測した結果、基盤到達S波速度を300m/s前後と設定すると、6m弱西側(河川上流側)が低下する基盤のズレが確認できた。過去の活動で2011年と同程度の変位が発生したと考えると、河川が形成されてから3回程度の変位の累積が考えられる。地震直後は断層の低下側で深さ1.9mの深い淵が形成されていたが、現在軟弱な堆積物が厚く堆積し深さは30cm程度に変化していた。断層低下側の常時微動計測結果は、100m/s程度の軟弱地盤が深度3m、200m/s程度の軟弱地盤が深度7m強まで確認されており、複数回の上流側の低下による軟弱層の厚い堆積が示唆される結果である。塩ノ平断層は2011年に活断層と知られていない範囲まで活動して、綱木で60cm西側低下の地表地震断層が出現した。その周辺での常時微動計測では、基盤到達S波速度を300m/sと仮定すると、断層を境に130cm程度の西落ちの基盤のズレが確認でき、2回分の変位を記録している可能性がある。塩ノ平と綱木の変位の累積の違いは、綱木までは変位が及ばず塩ノ平周辺のみ動いた変動があった可能性を示唆する。
3.双葉断層の例(金子ほか,2025) 双葉断層は福島県浜通り地方の南北約100km以上の断層であるが、相馬市・南相馬市の一部を除き推定活断層とされている。鈴木・小荒井(1989)では真野川沿いの南相馬市栃窪と上真野川沿いの南相馬市橲原で東側1.5m低下の活断層露頭のスケッチと低断層崖の測量結果が記載されており、栃窪では福島県(1999)によるトレンチ調査も行われている。段丘露頭や断層露頭直上で常時微動計測を行った結果、断層東側のジュラ系の基盤到達S波速度を300~400m/s、断層西側の新第三系堆積岩の基盤到達S波速度を200m/sとした。低断層崖を挟む測線で多数計測を行った結果、栃窪ではⅢ面で約150cmの東側低下、Ⅴ面で約70cmの東側低下、橲原ではⅡ面で約150cmの東側低下、Ⅲ面で約70cmの東側低下が確認できた。2地区での段丘面区分の再検討が必要ではあるが、1回あたり70cm程度の東落ちの断層変位の累積性を示す。同様の調査を宇多川沿いの相馬市山上と請戸川沿いの浪江町室原で行っているが、山上では明瞭な基盤のずれが認められない結果、室原では地形・基盤双方にズレは確認できたが、詳細は不明である。
4.宮野原断層の例(小荒井ほか,2024) 新潟県津南町に位置する宮野原断層は、都市圏活断層図では推定活断層とされている。2011年長野県北部地震の震源断層では無かったが、建物被害は宮野原断層周辺に集中していた。産業技術総合研究所が断層線に直交する方向に群列ボーリングを実施しており、同じ場所でボーリングよりも高密度に常時微動計測を実施した。段丘礫層に到達したボーリングと対比し、その深度がS波速度が300m/s付近でS波速度が急上昇する深度に一致した。河岸段丘上の計測結果を河岸の地質調査と比較しても同様の結果で、S波速度300m/sに達する深度を段丘礫層の上端と設定した。常時微動計測結果から段丘礫層上端の明らかな変位が2箇所で確認できた。北側の変位は約5mで低断層崖の位置と概ね一致し、南側の変位は約7mで周辺の地形には大きな変位は認められない。段丘面が約5万年前に形成されたと仮定して、北側が0.11m/千年、南側が0.14m/千年の平均変位速度であった。宮野原断層の南側(低下側)に全壊建物が複数認められたが、S波速度が200m/s以下の地層が深度10m以上も存在しており、断層の低下側に軟弱な堆積物が厚く堆積している。
5.まとめ 露頭やボーリングデータのある地点でS波速度構造を求め、段丘礫層や基盤岩の到達深度のS波速度が設定できると、面的に常時微動計測を展開することで、地下の活断層の位置を推定することが可能である。また、断層低下側の軟弱堆積層の厚さから変位の累積を見積もることも可能である。
引用文献
金子ほか(2025)日本地理学会春季大会要旨集
小荒井ほか(2024)JPGU要旨SSS11-07
小荒井ほか(2025)JPGU要旨SSS14-05
国土地理院 1/25,000都市圏活断層図「相馬」「南相馬」「津南」
鈴木・小荒井(1989)活断層研究, 6, 23-29.
福島県(1999)双葉断層に関する調査報告書
