Presentation Information

[T11-O-8][Invited] Development of 3D Models for Shallow Subsurface Geology Based on Kyushu Geotechnical Information Database

*Yoshiro ISHIHARA1 (1. Fukuoka University)
PDF DownloadDownload PDF
【ハイライト講演】  都市域における浅層の地質・地盤特性の三次元的な分布の把握は,平野の形成過程の解明のみならず,地盤の強度や液状化ポテンシャルといった工学的観点からも極めて重要な課題である.本講演では地質・地盤の三次元モデルの構築手法の概要と,演者が行ってきた九州地盤情報共有ボーリングデータベースを用いた浅層地質・地盤モデルの事例を中心に紹介し,今後の高精度化の可能性について議論する. ※ハイライト講演とは...

Keywords:

Chuseki-so,borehole database,3D geological model,Kyushu Geotechnical Information Database,sedimentary facies


 都市域における浅層地質や地盤の実態の把握は,平野の形成過程を地質学的に明らかにするうえで重要であるだけでなく,地盤の強度や液状化の可能性といった工学的観点からも極めて重要な課題である.とりわけ,主要都市が立地する海岸沿いの平野部には,最終氷期に形成された谷地形を未固結かつ軟弱な粘土・シルト・砂層から成る沖積層が厚く埋積しており,基盤地形に加えてその内部構造の詳細な把握が重要である.
 このような平野の地下地質やその形成過程の復元には,複数のオールコアボーリングが実施され,堆積相解析や年代測定などが行われている.これらと,既存のボーリングデータベースとの対比や物理探査との併用により,堆積体の連続性が検討され,より詳細な復元が可能となる.さらに,ボーリングデータを活用した三次元モデルは,地下地質や地盤特性の空間分布の可視化において有効な手法となっている.
 本講演では,地質・地盤の三次元モデルの構築手法の概要と,筆者らが行ってきた九州地盤情報共有ボーリングデータベースを用いた浅層地質・地盤モデルの事例を中心に紹介し,今後の高精度化の可能性について議論する.
九州地盤情報共有データベース
 浅層地質・地盤に関しては,標準貫入試験を含むボーリング調査が行われ,調査・記録・保存に関しては統一された基準が適用されている.得られた土質や地盤強度の指標(N値)は数値化され,ボーリングデータベースとして蓄積される.これらは地質調査会社や自治体によって収集・管理されており,複数のデータベースが統合された汎用的なデータセットも存在する.かつては独自形式で構築されていたが,近年ではXML形式に統一されつつある.
 この中で,九州地盤情報共有システム協議会は,九州地盤情報共有データベース2006年に第1版を公開したあと,2012年に第2版,2019年に第3版を公開した.このデータベースでは,最初期から個別のボーリングデータのXML形式のファイルを格納し,閲覧システムを別途提供する形式で公開され,利活用が非常に容易であった.第1版では30,580のボーリングデータであったものが,第2版で32,560,第3版で18,480と追加され,九州の各県の合計が81,620となっている.このデータベースは,地質・地盤モデルの作成のほか,地質コンサルタントや地盤工学を専門とする研究者によって,土壌汚染調査におけるGISの活用,地盤災害に関連した特殊性地盤の抽出・分析など,その使いやすさから様々に活用されてきている.
三次元モデルの構築
 ボーリングデータベースを用いた三次元地質・地盤モデルの構築は比較的古くからさまざまな目的で行われており,モデル様式に応じてサーフェイスモデルやボクセルモデルなどに分類される.サーフェイスモデルは比較的初期から用いられており,ボーリングデータに基づく地層区分や層相区分に従って,地層ユニットの境界面を三次元的に構築する.地層境界の認定は専門家によって行われることで高精度化が可能であり,データの分布が不均一な領域でもモデルの構築が可能となる.ただし,地層境界の解釈には一定の労力が伴い,必要とするモデルに応じて境界を再定義が必要となる場合もある.一方,ボクセルモデルでは,対象領域を小さな直方体に区切り,各セルに土質やN値などの属性を付与する.ボクセルモデルは不連続な地質体の表現にも適しており,より複雑な地質構造を再現することが可能である.
モデルの高精度化に向けて
  浅層地質の三次元モデルを高精度化するには,まずその根拠となるボーリングデータベースの充実が必要である.また,現状のデータベースを生かし,堆積過程を考慮したモデルを構築することが有効であると考えられる.筆者らは,オールコアボーリングによる詳細な解析に基づき,谷を埋積する地層の分布を検討する際にボクセルモデルを活用している.たとえば,東京―中川低地では,最終氷期以前に形成された谷底には基底礫層が分布し,最盛期以降に砂泥互層を伴う蛇行河川,潮汐チャネル,干潟,内湾へと変化しながら順次埋積されていった.内湾の埋積が進行すると再びデルタプレーンの砂層が累重する.このような海水準変動に伴う堆積環境の変遷は地層の分布を大きく制約すると予測される.こうした堆積過程を考慮することで,地層連続性を反映したより精度の高い三次元モデルの構築が可能となる.一方,ボーリングデータのみから分布を決定づける堆積相を検討するには,土質情報,地盤強度に加え,累重パターン,異方性や連続性などを数値化する必要がある.これらはある程度特徴的な堆積相の可視化に寄与するが,その堆積システム形成の背景にある海水準変動によって分布が規制される関連性が大きく,コストと求めたい結果とのバランスを考慮する必要がある.