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[T11-O-13]The Current State of Land Subsidence in the World (Part 2) Europe area
*Katsuhiro FUJISAKI1 (1. None)
Keywords:
Groundwater over-extraction,Land subsidence,Lignite mining,Natural gas extraction,Salt mining
昨年の講演では,アフリカ,西・南・東南アジア地域の地盤沈下の概況について報告した(藤崎,日本地質学会第131年学術大会講演要旨,T-8-O-7,2024).別途,東アジア・オセアニア地域の沈下の現況について報告した(藤崎,第34回社会地質学シンポジウム論文・要旨集,2024).今回は,ヨーロッパ地域の地盤沈下の概況を報告する.EU加盟27ヵ国+英国・ノルウェーの範囲について,2016年からヨーロッパ地盤変動サービス(EGMS)が,合成開口レーダー衛星(InSAR)による直近5年間(2019-2023)の平均変動量マップと沈下表示点の変化時系列を公開している(https://egms.land.copernicus.eu).以下,注釈のあるもの以外の沈下量はEGMSによるものである.スカンジナビア半島では,10-30mm/yの後氷期隆起が生じているが,泥炭地の5-10mm/yの沈下域が散在している.フィンランドのヘルシンキでは5-7mm/y(1992-2002)の構造物荷重による沈下が報告されている.スエーデンのウプサラでは,最大10mm/yの沈下が観測され,建物の抜け上がりが見られる.ポーランドの上シレジェン炭田では,採鉱のための地下水排水により500㎢以上の沈下域が広がり,最大では1m(1992-2012)に達した.レグニツァ・グヴォグフ銅山でも地下水排水による最大52mm/yの沈下が観測されている.コニン褐炭田では,地下水排水による最大31mm/yの沈下が生じている.岩塩鉱山では範囲が狭いが,シンクホールなどの地表面変形が見られる.ヴィエリチカ岩塩鉱では最大21mm/y(2015-2016),ボフニャ岩塩鉱では最大250mm(1997-2015),イノブロツクフ岩塩鉱では5mm/yの沈下が報告されている.ドイツのライン炭田では,褐炭の露天採掘が3ヵ所で行われていて,それぞれで最大26mm/y,35mm/y,14mm/yの沈下が観測されている.コットプス炭田では2015の閉山後,環境修復が進められていて10mm/yの隆起が生じている.オランダのグローニンゲン州では,天然ガス採取と泥炭の収縮・分解による最大8mm/yの沈下が見られる中に,岩塩の液化採取による沈下が3ヵ所見られ,沈下量は最大で30mm/yに達する.泥炭の圧密・分解による7-8mm/yの沈下を防ぐため,高地下水位農法が推進されている.ベルギーのアントワープでは,港湾の埋立地で16-20mm/yの沈下が観測されている.スペインのグアダレンティン盆地では,農業用地下水の過剰揚水で最大86mm/yの沈下が生じている.バルセロナでは,埋立地で最大30mm/yの沈下が観測されている.カルドナ岩塩鉱では,最大120mm/y以上の沈下が見られる. イタリア北部のポー平野では,農業・工業・水道用地下水揚水と天然ガス採取による広範囲の沈下が生じている.70年代までは100mm/y単位の沈下が観測されていたが,近年では減少している.ボローニャ市からモデナ市の北部には20mm/yに達する沈下域が広がっている.アドリア海沿岸のラベンナ市では,最大15mm/yの沈下が観測されている.トスカナ地方のピストイアでは17mm/y,ピサで17mm/y,リボルノで23mm/yに達する沈下が観測されている.ラルデレッロの地熱発電地帯では,最大24mm/yの沈下が発生している.ティベリ川デルタでは,埋立地で15mm/yに達する沈下が見られる.カンパニア地方のヴォルトゥルノ川海岸平野では,農業用地下水揚水による最大20㎜/yの沈下が観測されている.セレ平野では10mm/yに達する沈下が見られる.フーリア州のタボリエレ平野では,最大20mm/yの沈下が,カラブリア州のシーバリでは最大13mm/y,ジョイア・タウロでは12mm/yの沈下が観測されている.ギリシャのテッサロニキ平野では16mm/y,アンテマウンタス盆地では26mm/yに達する沈下が観測されている.テッサリア平野では,農業用揚水による10-40mm/y程度の沈下域が広がっている.アナルギロイ褐炭田では,露天採掘の排水のため17mm/y程度の沈下が見られ,周辺の村落の建物被害が生じている.トルコのゲディーズ盆地では,農業用地下水揚水による最大64mm/y(2017-2021)の沈下が観測されている.コンヤ平野でも,農業用揚水による最大60mm/y(2014-2018)が生じており,石灰岩分布域ではシンクホールの発生も見られる.

