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[T12-O-19][Invited] Constraining the timing of Ontong Java eruptions using the Cretaceous sedimentary sequence

*Hironao MATSUMOTO1 (1. Institute of Life and Environmental Sciences, University of Tsukuba)
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【ハイライト講演】  巨大火山噴火は気候や生態系に甚大な影響を及ぼし、地球史における主要な環境変動の要因となってきた。松本廣直氏は、白亜紀における世界最大級の火山活動の産物であるオントンジャワ海台の噴火史と、それに伴う地球表層環境変動との因果関係を同位体地球化学的に精査し、関係解明に大きく貢献してきた気鋭の若手研究者である。本講演では、堆積岩に刻まれた記録を通じて、大規模火山活動が環境に及ぼす影響の最新成果が示される。 ※ハイライト講演とは...

Keywords:

Ontong Java Plateau,Oceanic Anoxic Event 1a


 西太平洋に位置するオントンジャワ海台は、白亜紀中期のアプチアン(~120-113 Ma)に噴出した世界最大の火山である。これまで玄武岩の放射年代の値が、白亜紀最大規模の海洋無酸素事変であるOAE1a(~119 Ma)と整合的であったことから、両者の因果関係が議論されてきた。しかし近年、オントンジャワ海台の斜長石から得られた高精度放射年代の値が、OAE1aの値よりも著しく若い(~116-108 Ma)ことが判明し、両者の関連に疑問が持たれるようになった[1]。本発表ではこれまで報告されてきた堆積岩に記録された火山活動の指標として知られるオスミウム・炭素同位体比や、太平洋の堆積物に記録された火山灰といった火山活動を直接的に示唆する情報をまとめ、オントンジャワ海台の噴出年代を再評価し、この火山活動が地球環境に与えた影響を考察する。
オントンジャワ海台の周辺で堆積した、太平洋地域の掘削コア中(例えばDeep Sea Drilling Project Sites 167, 463)には、OAE1aの最下部に大量の火山灰が確認されている[2,3]。最近の鉛同位体比分析の結果から、これらの火山灰はオントンジャワ海台の噴火活動に由来することが示されており[2]、オントンジャワ海台において、降灰を伴う爆発的な噴火活動が発生したことを示唆している。また、この火山灰層の産出のタイミングで、世界中の堆積物から復元された古海水のオスミウム同位体比、炭素同位体比が大きく低下したことから、爆発的な噴火に伴いマントル起源の揮発性元素が放出されたことが判明している。その後、温暖化・大陸風化の活発化が起こり、少し遅れて有機物の埋没が全球的に広がりOAE1aが発生したと考えられる。堆積岩に記録されているこれらの情報は、オントンジャワ海台の噴火活動がOAE1aと同時期であったことを示すとともに、それらの詳細な時系列変化を示している。
文献: [1] Davidson, P. C. et al. Science, 380(6650), 1185-1188. [2] Matsumoto, H.et al. (2024). Communications Earth & Environment, 5(1), 155. [3] Matsumoto, H. et al. (2025). Science Advances, 11(9), eadt0204.