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[T2-O-12]Magma chamber processes deduced from the crystallization conditions of zircon in the Tono Plutonic Complex, Kitakami Mountains, northeast Japan

*Yasuhiro OGITA1,2, Shuhei SAKATA3, Takeshi OHNO4, Tatsunori YOKOYAMA1, Takashi YUGUCHI5 (1. JAEA, 2. Yamagata Univ., 3. Univ. of Tokyo, ERI, 4. Gakushuin Univ., 5. Kumamoto Univ.)
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Keywords:

Zircon,U-Pb age,Ti concentration,Th/U,Tono Plutonic Complex,Magma chamber process

 沈み込み帯での火成活動において,地史の中で比較的大規模であった時期“フレアアップ”が存在する(Paterson and Ducea, 2015, Elements).フレアアップで生じたマグマ溜りプロセスは,大陸地殻の成長に資する物質の活発な供給をもたらすため,大陸地殻の発達・進化を議論するうえで重要な知見となる.白亜紀のフレアアップを示す深成岩体のうち,東北日本の北上山地に分布する遠野複合深成岩体(遠野岩体)は,中心部にアダカイト質岩(中心相)を,その周縁に非アダカイト質岩(主岩相)を有する累帯深成岩体である.このような累帯構造は,別起源のマグマが立て続けに地殻へ貫入して形成されたと考えられているが(土谷ほか, 2015, 岩石鉱物科学),それぞれのマグマの貫入・定置や固化に至るプロセスの相違は明らかにされていない.そこで本研究では,遠野岩体のアダカイト質マグマと非アダカイト質マグマそれぞれの貫入・定置年代とその時の温度条件を明らかにし,岩相ごとの温度・時間履歴に制約を与えることを目的として,それぞれの岩相に含まれるジルコンの結晶化年代,結晶化温度の推定を行った.遠野岩体の空間的,時間的な変遷を追うために,中心相,主岩相からそれぞれ6地点のサンプルのジルコンを用いた.ジルコンのU-Pb同位体分析及びTi濃度分析には,ジルコンの結晶化開始時点の情報を得るために分離ジルコンを,ジルコンと周辺鉱物との晶出順序の情報を得るために薄片中のジルコンを用いた.分離ジルコン及び薄片中のジルコンに対して,カソードルミネッセンス(CL)像観察に基づく内部構造の把握を行い,レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法によるU-Pb年代,Ti濃度の同時取得を実施した.遠野岩体の各岩相のジルコンに共通のCLパターンとして,高輝度と低輝度の領域を繰り返すオシラトリーゾーニング(OZ)と輝度が均質な領域(HR)の2パターンが主に認められた.また,1粒子の中に低輝度なコア(LLC)とそれを取り囲むOZを有する複合パターンの粒子も認められた.これらのCLパターンに関して,岩相ごとの産出頻度に明瞭な相違は無い.U-Pb年代は,粒子内での位置(コア/リム)やCLパターンに関わらず分布範囲が重なる(中心相:138.2±2.1 Ma-95.3±5.2 Ma,主岩相:138.7±5.0 Ma-96.1±4.5 Ma).Ti濃度は,LLC領域において他のCLパターンの領域に比べて高い傾向が認められた.この傾向は,ジルコンのLLC領域が比較的高温で,つまり岩体形成の早期で形成されたことを示す.薄片中のジルコンでは,ジルコンを包有する鉱物種の違いによるU-Pb年代の明瞭な相違は認められなかった.マグマの分別結晶の指標となるジルコンのTh/U(Kirkland et al., 2015, LITHOS)は,一部のサンプルでTi濃度(∝結晶化温度)の低下にしたがって低下する傾向が認められた.また,中心相の一部のサンプルでは,ジルコンを包有する鉱物種毎にTi濃度やTh/Uが異なる.これは,分別結晶の複数のステージでジルコンが晶出したことを反映していると考えられる.このようなジルコンを包有する鉱物種の相違に関連したTi濃度,Th/Uの傾向に基づき,遠野複合深成岩体を形成した各岩相の温度・時間履歴を議論する.本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和6年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)(地質環境長期安定性総合評価技術開発)」の成果の一部を使用している.