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[T13-O-7]High Resolution Calcareous Nannofossil Biostratigraphy of the Upper Quaternary System, Offshore Akita: Insight into Late Quaternary Paleoceanography

Ryoko Setoguchi1, *Toshinori Imai1, Tokiyuki Sato2 (1. JOGMEC, 2. Akita University)
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【発表者変更】 瀬戸口 怜子→今井 利矩(2025.9.12 変更)

Keywords:

Calcareous Nannofossil,Benthic Foraminifera


 秋田地域では石油探鉱を目的として掘削された坑井に有孔虫化石層序に基づく地層区分が用いられており、かねてより岩相層序に基づく地表地質層序との対比に混乱が生じていることが指摘されてきた(佐藤ら, 1988;佐藤, 2012)。本研究では、秋田沖の基礎試錐「本荘沖」、「由利沖中部」、「子吉川沖」及び「西目沖」の新生界最上部の石灰質ナンノ化石の再鑑定を行い、石灰質ナンノ化石層序に基づく地質年代値を用いて地表地質層序との対比を行った。加えて、詳細な群集変化の考察が未実施である基礎試錐「本荘沖」の基礎試錐報告書既報の底生有孔虫化石データを再検討し、底生有孔虫化石の群集変化及び石灰質ナンノ化石の貧化石帯が氷期‐間氷期サイクルを反映している可能性を議論する。
 秋田沖基礎試錐における石灰質ナンノ化石の再鑑定の結果、沖合に位置する基礎試錐「本荘沖」及び「由利沖中部」において0.85Maより新しい堆積物が層厚約1,500 m以上で分布すること、今回再鑑定を実施した全ての秋田沖基礎試錐において0.85~1.18Maの間に時間間隙が存在することが示された。また、基礎試錐「本荘沖」において、0.85Maより新しい堆積物を対象とし、底生有孔虫化石をInner neritic、Outer neritic、Subtoxic、Dysoxicを示す群集に分け、各群集について底生有孔虫化石の総数に対する割合を算出した結果、Dysoxic を示す種はほぼ産出せず、Inner neritic、Outer neritic、Subtoxicを示す底生有孔虫化石群集の周期的な増減が認められた。さらに、石灰質ナンノ化石の貧化石区間は周期的に出現し、Inner neriticあるいはOuter neriticを示す底生有孔虫化石群集の割合が増加する区間に概ね一致した。
 本研究により、一般的に秋田沖には笹岡層が厚く分布すると考えられてきたが,基礎試錐「本荘沖」及び「由利沖中部」では秋田平野の笹岡層が堆積した時代に対比される地層は薄く、それよりも新しい0.85Ma以降の海成層が厚く分布することが明らかになった。また、秋田沖基礎試錐で確認された時間間隙(0.85~1.18Ma)はMid-Pleistocene climate transitionに対応し、氷床拡大に伴う海水準の低下によって不整合が形成されたことが原因であると考えられ、秋田沖が汎世界的な環境変動の影響を受けていたことを示す。0.85Ma以降の堆積物における周期的な底生有孔虫化石の群集変化及び石灰質ナンノ化石の貧化石区間の出現は、氷期‐間氷期サイクルの影響による海洋環境の変化が影響した可能性があることから、秋田沖基礎試錐位置では、不整合が形成された後も汎世界的な環境変動の影響を受け続けていたと考えられる。

引用文献
佐藤 時幸, 2012, 微化石研究の現状と石油地質学への応用—古海洋環境変化とは何かー,石油技術協会誌;佐藤 時幸・高山 俊昭・加藤 道雄・工藤 哲朗, 1988, 日本海側に発達する最上部新生界の石灰質微化石層序その3:秋田地域および男鹿半島, 石油技術協会誌