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[G-O-23]Subsurface flexural structure and gravity anomaly in the Kiisuido Strait offshore Tokushima region

*Jun ARIMOTO1, Ayumu Miyakawa1 (1. Geological Survey of Japan, AIST)
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Keywords:

Kiisuido Strait,Seismic stratigraphy,Gravity anomaly,Late Quaternary,Active structures

 紀伊水道は瀬戸内海東部に位置し,四国・淡路島・紀伊半島に囲まれる浅海域である.紀伊水道の北部には,中央構造線(以下,MTL)活断層系に属する西南西−東北東走向あるいは南西−北東走向の活断層が多数分布しており,紀淡海峡−鳴門海峡セグメントとして活動性が評価されている.産業技術総合研究所では,令和2年度から紀伊水道沿岸域の地質情報整備を実施しており,その一環として小型船舶を用いたマルチチャンネル反射法音波探査や海域重力探査が行われた.本講演では,徳島沖の海底下音響層序と地質構造,及び重力異常の分布について報告し,その地質学的意義について考察する.
調査海域に分布する往復走時約0.3秒以浅の海底下地質体は,海岸線付近に伏在する音響基盤と,それを覆う堆積層ユニットに区分される.さらに徳島沖MTL以南の堆積層ユニットは,侵食面を伴う不整合を境界として上位ユニットと下位ユニットに区分される.隣接する徳島平野のボーリングコアに基づく地下地質層序(羽田ほか,2025)との対比から,海域で認定される音響基盤,堆積層下位及び上位ユニットはそれぞれ,三波川変成岩類に代表される基盤岩類,MIS5e層準を含む上部更新統以下,及び最上部更新統−完新統の沖積層相当に位置付けられる.反射断面に認められるMTL活断層系は,沖積層ユニットの基底あるいは内部を変位させている.一方,MTL活断層系分布域より南方の,淡路島沖合に位置する沼島から徳島平野南部沖合にかけて,堆積層下位ユニットに撓曲構造の発達が認められる.この撓曲構造の分布は,沼島から徳島沖にかけて約20 km近く連続する,南西−北東走向の高重力異常南縁にほぼ一致している.重力異常の不連続パターンは,密度の異なる地質体の水平分布あるいは伏在断層による基盤の高度差を表す可能性があるが,撓曲変形帯の存在から,徳島沖では基盤岩類を切る伏在断層の存在が示唆される.この撓曲変形は,沖積層相当ユニットの基底以上にはほぼ及んでいないことから,最終氷期最盛期以降,現在にかけて非活動的であると推定される.また,これらの撓曲変形帯及び重力異常は,現在活動的であるMTL活断層系の西南西−東北東横ずれ断層群とは斜交する.従来より,フィリピン海プレートの斜め沈み込みに伴う前弧スリバーの西進運動を背景として,西南日本弧の地形や活構造が形成されてきたことが指摘されていた(佃,1992).これに対して,本研究の結果は紀伊水道北部における断層活動の様式が後期更新世以降に変化した可能性を提示し,後期第四紀テクトニクスと地質構造発達に新たな示唆を与える.

参考文献:羽田裕貴ほか (2025) 地質学雑誌, 131, 11–30.;佃 栄吉 (1992) 地質学論集, 40, 235–250.