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[G-O-29]Origin and genesis of dolomite beneath the continental shelf offshore northwestern Australia

*Kosuke YOSHII1,2, Hideko TAKAYANAGI1,3, Shigeyuki WAKAKI4,6, Lars REUNING5, Yasufumi IRYU1,3 (1. Department of Earth Science, Tohoku University, 2. Japan Organization for Metals and Energy Security, 3. Advanced Institute for Marine Ecosystem Change (WPI-AIMEC), 4. National Museum of Japanese History, 5. Institute of Geosciences, CAU Kiel University, 6. Kochi Institute for Core Sample Research, JAMSTEC)
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Keywords:

Carbonate sedimentology,Dolomite,Carbonate platform,North West Shelf

 本研究ではオーストラリア北西沖大陸棚(North West Shelf: NWS)に分布するドロマイトを対象に,鉱物学的・岩石学的・地球化学的手法を用いて,その起源と成因を考察した.NWSは受動的な大陸縁辺部に位置する炭酸塩プラットフォームであり,中新世には浅海における炭酸塩の堆積と,乾燥・高塩分水環境下における蒸発岩および炭酸塩の堆積が繰り返されたことが知られている.
本研究で検討した試料は,NWSのRoebuck Basinで実施されたIODP第356次航海のU1464地点より得られたコア試料から採取した139試料である.
研究対象の中新統は岩相に基づいて6つのユニットに区分され,その中には3回の不整合が認められる.本研究の成果と先行研究の生層序データを統合することにより,U1464地点の堆積過程とドロマイトの形成過程を明らかにした.その概要は,以下の通りである.
ユニット6は浅海で堆積したbioclastic floatstone/packstone/wackestoneから構成され,その堆積年代はSr同位体比から,約19.5~16.5 Maと推定される.この間,約18~16.5 Maには当時の海水を母液として,本ユニットが部分的にドロマイト化した.
その後,約16.5~15.5 Maには本地域一帯は乾燥化し,高塩分の極浅海で,ユニット5に含められるbioclastic mudstone/wackestone/packstoneが堆積した.本ユニットのドロマイトは,蒸発岩や蒸発環境を示す堆積構造を伴うことと酸素同位体比が大きいことより,蒸発性ドロマイト化作用によって形成されたと思われる.ドロマイトのSr同位体比年代は,ユニット6およびユニット5の堆積年代から推定される堆積年代より古い値を示す.これらより,本ユニットのドロマイトは,堆積場が外洋から隔離された状態下で,下位層に由来するSrを含む高塩水から析出したと想定される.
ユニット4はユニット5の上位に不整合関係で重なり,両者間には約200万年間の堆積間隙がある.ユニット4は部分的にドロマイト化したbioclastic wackestone/packstoneよりなり,その堆積年代は生層序より,約13.5~11.5 Maである.本ユニットにおいても,Sr同位体比年代は堆積年代より古い値を示し,これは浸食により下位層由来のSrが当時の海水に供給されたことが原因と思われる.
続いて,11.5 Ma前後に本地域一帯は乾燥化し,堆積場は極浅海の高塩水環境となり,bioclastic mudstone/packstoneからなるユニット3が堆積した.本ユニットには蒸発岩や蒸発環境を示す堆積構造が認められることから,本ユニットのドロマイトは蒸発性ドロマイト化作用によって形成されたと考えられる.本ユニットのドロマイトは87Sr/86Srは変動幅が広い.これは下位層由来の87Sr/86Srが低いSrに加え,オーストラリア大陸由来の87Sr/86Srが高いSrも母液に取り込まれたためと推定される.
ユニット2は極浅海環境で堆積したbioclastic wackestone/rudstoneからなり,ユニット3とは不整合関係にある.本ユニットのドロマイトの大部分はSr同位体比年代が10〜8 Maであることから,本ユニットの堆積は11.5〜10 Maの範囲内であると思われる.本ユニットは部分的にドロマイト化しており,このドロマイトは当時の海水から析出したドロマイトの酸素同位体比の推定値より大きな酸素同位体比を有することから,母液は高塩分の海水であると思われる.また,Sr同位体年代が10〜8 Maという狭い範囲内にあることから,ユニット2に形成された高塩分水が約120 mに渡って浸潤して,ドロマイトが形成されたと推定される.
最上位のユニット1はユニット2に不整合関係で重なり,両者間の堆積間隙は最大で約150万年に及ぶ.ユニット1は浅海環境で堆積したbioclastic packstoneからなり,その生層序年代を外挿して求められる堆積年代は約8~6 Maである.本ユニットは一部ドロマイト化しており,その年代は約7~5 Maである.同様の年代および酸素同位体比を有するドロマイトはユニット2の下部にも認められるため,海水起源の母液が少なくとも海底下約200 mにまで浸潤してユニット1および2のドロマイト化作用を起こした可能性がある.
本研究により,NWSでは堆積環境の変化に伴い海水ドロマイト化作用と蒸発性ドロマイト化作用とが繰り返し発生したことが明らかになった.NWSは典型的な炭酸塩プラットフォームであることから,世界の他の炭酸塩プラットフォームでも同様のドロマイト化作用が生じたと想定される.この成果はドロマイトの成因に関する理解を深める新たな知見である.