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[T1-P-12]Coarse-grained garnet in a quartz vein of the Sanbagawa schists from Nagatoro area,japan

*Masato KATO1, Mutsuko Inui1, Katsuyoshi Midhibayashi2 (1. Kokushikan University, 2. Nagoya University)
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Keywords:

Sanbagawa Metamorphic Belt,Nagatoro,garnet,Metamorphic rock,Spessartine

 ザクロ石は幅広い温度圧力で出現する変成鉱物で、沈み込み帯の温度圧力履歴を読み取れる可能性があることから多くの研究に用いられてきた。関東山地長瀞地域には三波川変成帯の低変成度部分が分布し、泥質片岩中に極細粒のザクロ石が時折不均質に出現することが知られていた(Inui et al. , 2020)。この度この地域の石英脈中に、極端に粗粒でMn端成分に非常に富んだザクロ石を新たに発見し、化学組成累帯構造と結晶方位解析を行ったので報告する。
長瀞地域の三波川変成岩は大部分が泥質および砂質片岩からなり、少量の塩基性片岩、石英片岩を伴う。泥質~砂質片岩の鉱物組み合わせおよび石墨化度に基づいて最高到達温度の低い方から第Ⅰ帯、第Ⅱ帯、第Ⅲ帯に分帯され、ザクロ石は第Ⅱ帯から出現する(橋本ら,1992)。本研究の粗粒ザクロ石が発見された露頭は、見かけ上位の黒色の砂泥質片岩と下位の緑色片岩に挟まれた部分である。黒色の片岩層と淡緑色の片岩層が重なって折りたたまれたように見え、さらに様々な厚さの低角の石英脈が同じように折りたたまれている。変成度は第Ⅰ帯と第Ⅱ帯の境界にあたると考えられ、見かけ上位に接する泥質片岩中に極細粒のザクロ石がみつかっている(Inui et al. , 2020)。炭質物のラマン分光分析により最高到達温度は約400~460℃とされている(Inui et al. , 2017)。採集したサンプルは緑色の泥質片岩であり、白雲母、緑泥石が定向配列し、主に石英からなる層と交互に片理を形成していた。母岩中の石英層の厚さは約1.2mmであり、石英粒は片理と平行に伸長し長さは100~200㎛程、幅は40㎛程であった。 低角の石英脈中の石英は直径200~300㎛程で角張った不定形であり、母岩中の石英層とは厚さも結晶の大きさ、形状も異なっていた。中に黄色みがかった肉眼でもわかる角張った1~2mm程のザクロ石が点在していた。粗粒ザクロ石の角ばった粒はいくつかまとまって分布していた。形状から、元々ひとつだった粒が割れて互いに離れつつあるように見えた。この粗粒ザクロ石は一つの石英脈のみから産し、他の石英脈には見られなかった。
SEM-EDSによるマッピングと半定量分析の結果、粗粒ザクロ石の化学組成は中心から周縁部にかけてほとんど均質でおおよそMn:Ca:Fe:Mg=0.78:0.10:0.09;0.01(陽イオンのモル比率)であった。また、粗粒ザクロ石の内部には化学組成の異なる微小な部分が不規則に点在していた。その部分の化学組成は(Mn:Ca:Fe:Mg=0.76:0.08:0.15:0)であり、Alの含有量が少ない部分{(Mn+Ca+Fe+Mg):Al:Si=3.49:1.51:2.99}もあった。粗粒ザクロ石の外周部にCa増加(Mn:Ca:Fe:Mg=0.74:0.15:0.11:0.06)が見られた。粗粒ザクロ石が割れて離れた部分では、そこに新しくできた表面にCa増加がある場合とない場合が見られた。
次にSEM-EBSDを用いて結晶方位を測定した結果、この粗粒ザクロ石は直径5~10㎛程の微小な結晶からなる集合体だと分かった。結晶方位としてのずれは小さくなく、もともと一つの結晶であったものが割れただけとは考えにくい。マッピング分析で見られたFeに富む部分は集合体を形成する微小な結晶の中心付近にあることが多かった。この結晶の内にもわずかな結晶方位のずれが見られ、亜粒界と考えられる。 外周部のCa増加部分は大きさ25㎛程のやや大きい自形の結晶が見られた。
粗粒ザクロ石の外周部と割れてできた隙間には直径20㎛程の自形細粒ザクロ石が多数分布した。コア(Mn:Ca:Fe:Mg=0.80:0.10:0.08:0.01)からリムにかけてCaの増加(Mn:Ca:Fe:Mg=0.72:0.17:0.1:0.01)が見られた。これらの自形細粒ザクロ石のコアとリムの化学組成は粗粒ザクロ石の中心部とリムの化学組成と一致した。 石英脈中の粗粒ザクロ石は微小な結晶の集合体であると考えられる。石英脈中に見つかったことから何らかの流体が関与した可能性がある。また、外側にCaの増加が見られるリムを持つがCa増加するリムの化学組成が同じだったことから粗粒ザクロ石の外側と自形細粒ザクロ石は同時期に成長したものだと考えられる。
参考文献
Inui et al.Minerals. 2020, 10, 292-305.
橋本光男ら. 地質学雑誌. 1992, 98, 953-965
Inui et al.国士舘大学理工学部紀要. 2017, 11, 55-60.