Presentation Information
[T1-P-15]Metamorphic reaction and fluid behavior in ultramafic rocks associated with contact metamorphism: a case study of the Sanbagawa Belt, Northern Akaishi Mountains
*Kaho NOBUHARA1, Hiroshi MORI1, Yurie TSUKISHIMA1, Takayoshi NAGAYA2, Takafumi SHINYA1, Yuho HAYAKAWA3, Ken YAMAOKA4, Koichiro FUJIMOTO5, Tetsuya TOKIWA1 (1. Shinshu University, 2. Waseda University, 3. Chuo Kaihatsu Corporation, 4. GSJ, AIST, 5. Tokyo Gakugei University)
Keywords:
Subduction zone,ultramafic rocks,Sanbagawa metamorphic belt,contact metamorphism,fluid,mineral assemblage,metamorphic reaction
超苦鉄質岩類の加水・脱水反応に伴う流体挙動は,沈み込み帯深部の水循環や島弧マグマ活動といった多様な地質学的現象と密接に関係する.高圧変成帯に分布する超苦鉄質岩類は,これら挙動追跡に有用であるが,上昇時に後退変成作用を強く被っており,特に,沈み込み帯深部で発生する脱水反応時の情報抽出は困難である.そこで本研究では,接触変成作用を被った高圧変成帯の超苦鉄質岩類に着目する.偏光顕微鏡観察・SEM-EDS・ラマン分光分析を基に,鉱物組み合わせと変成反応の詳細を明らかにするとともに,XRD分析・XRF分析に基づく全岩鉱物量比,含水量,全岩化学組成の空間的特徴を組み合わせて,接触変成作用に伴う流体活動について検討した.
研究対象とした長野県伊那地域・三波川帯には,泥質片岩に挟まれて超苦鉄質岩類が北北東–南南西方向に細長く分布し,北端では木舟深成岩体の貫入熱影響を被っている1.本研究では,貫入境界から約12 km以内の超苦鉄質岩類を対象とした.
研究地域は,鉱物組み合わせの空間変化に基づき,貫入岩体に近づくにつれてLizardite (Liz) zone, Antigorite (Atg) zone, Olivine + Talc (Ol + Tlc) zone, Ca-amphibole (Ca-amp) zoneに区分される.主な鉱物組み合わせは,Liz zoneがリザダイト,クリソタイル,クロムスピネル,Atg zoneがアンチゴライト,クリソタイル,クロムスピネル,Ol + Tlc zoneがカンラン石とタルク,Ca-amp zoneがカンラン石,トレモラ閃石/Mg普通角閃石,スピネルである.これらの空間変化は,Atg~Ca-amp zoneが接触変成作用を受けたことを示す.変成反応としては,Atg zoneはリザダイトからアンチゴライトへの相転移,Ol + Tlc zoneはアンチゴライトの脱水反応,Ca-amp zoneはトレモラ閃石の脱水反応と緑泥石の単独脱水分解が推定される.また,木舟岩体の定置圧力条件(約2 kbar)2を考慮すれば,温度条件は,Liz zoneが350 ºC以下,Atg zoneが350~500 ºC,Ol + Tlc zoneが500~630 ºC,Ca-amp zoneが700 ºC以上に制約される.加えて,貫入境界近傍では,1)カンラン石脈の頻出,2) MSH系からCMASH系への変化,3) Ca-richな斜長石(アノーサイト)やMg普通角閃石を置換したNaに富むパーガス閃石の存在が認められた.これらの特徴は,貫入境界近傍(主にCa-amp zone)において,脱水反応(流体放出)とともに,Ca・Naなどに富む外部流体の供給があったことを示唆する.
XRD分析(RIR法)から推定された全岩鉱物量比と含水量は,Ca-amp zoneにおけるトレモラ閃石/Mg普通角閃石の急激な増加と,それに伴う含水量の減少を示す.また,XRF分析による全岩化学組成は,Ca-amp zoneでのCaO,Al2O3,Na2Oの著しい増加を示している.これらの全岩解析結果は,上述の1)~3)の岩石学的特徴と整合的であり,流体授受の解釈を支持する.
[引用文献]1牧本ほか, 1996,地域地質研報, 34, 114 p; 2Nobuhara et al., 2024, JpGU Meet. Abstr., SCG45-P01.
研究対象とした長野県伊那地域・三波川帯には,泥質片岩に挟まれて超苦鉄質岩類が北北東–南南西方向に細長く分布し,北端では木舟深成岩体の貫入熱影響を被っている1.本研究では,貫入境界から約12 km以内の超苦鉄質岩類を対象とした.
研究地域は,鉱物組み合わせの空間変化に基づき,貫入岩体に近づくにつれてLizardite (Liz) zone, Antigorite (Atg) zone, Olivine + Talc (Ol + Tlc) zone, Ca-amphibole (Ca-amp) zoneに区分される.主な鉱物組み合わせは,Liz zoneがリザダイト,クリソタイル,クロムスピネル,Atg zoneがアンチゴライト,クリソタイル,クロムスピネル,Ol + Tlc zoneがカンラン石とタルク,Ca-amp zoneがカンラン石,トレモラ閃石/Mg普通角閃石,スピネルである.これらの空間変化は,Atg~Ca-amp zoneが接触変成作用を受けたことを示す.変成反応としては,Atg zoneはリザダイトからアンチゴライトへの相転移,Ol + Tlc zoneはアンチゴライトの脱水反応,Ca-amp zoneはトレモラ閃石の脱水反応と緑泥石の単独脱水分解が推定される.また,木舟岩体の定置圧力条件(約2 kbar)2を考慮すれば,温度条件は,Liz zoneが350 ºC以下,Atg zoneが350~500 ºC,Ol + Tlc zoneが500~630 ºC,Ca-amp zoneが700 ºC以上に制約される.加えて,貫入境界近傍では,1)カンラン石脈の頻出,2) MSH系からCMASH系への変化,3) Ca-richな斜長石(アノーサイト)やMg普通角閃石を置換したNaに富むパーガス閃石の存在が認められた.これらの特徴は,貫入境界近傍(主にCa-amp zone)において,脱水反応(流体放出)とともに,Ca・Naなどに富む外部流体の供給があったことを示唆する.
XRD分析(RIR法)から推定された全岩鉱物量比と含水量は,Ca-amp zoneにおけるトレモラ閃石/Mg普通角閃石の急激な増加と,それに伴う含水量の減少を示す.また,XRF分析による全岩化学組成は,Ca-amp zoneでのCaO,Al2O3,Na2Oの著しい増加を示している.これらの全岩解析結果は,上述の1)~3)の岩石学的特徴と整合的であり,流体授受の解釈を支持する.
[引用文献]1牧本ほか, 1996,地域地質研報, 34, 114 p; 2Nobuhara et al., 2024, JpGU Meet. Abstr., SCG45-P01.
