Presentation Information
[T1-P-18]Relationship between metamorphic temperature and degree of graphitization and microstructural development of quartz and albite in Sambagawa pelitic schist, Tenryu area
*Aoi Harada1, Yui Kouketsu1, Katsuyoshi Michibayashi1 (1. Department of Earth and Planetary Sciences, GSES, Nagoya University)
Keywords:
Sanbagawa belt,Raman carbonaceous material geothermometer,SEM-EBSD,Quartz,Albite
本研究は、天竜地域西部白倉ユニットの結晶片岩について、特に泥質片岩中の炭質物に対して炭質物ラマン温度計による最高被熱温度を推定するとともに、泥質片岩の石英曹長石優勢層に対してSEM-EBSD分析による結晶方位ファブリック解析を行い、天竜地域白倉ユニットの温度構造と微細構造を考察した。
研究地域の岩相は泥質片岩が主体であり、緑色片岩、珪質片岩が多く観察された。露頭で測定した泥質片岩の片理の走向は北東から北西方向で、線構造はほとんどが東西方向であった。露頭スケールの褶曲も複数存在し、褶曲軸はおおよそ東西方向であった。薄片観察から泥質片岩の主要構成鉱物は石英、曹長石、白雲母、炭質物、緑泥石、一部の試料でざくろ石や方解石が確認された。泥質片岩は白雲母緑泥石優勢層と石英曹長石優勢層が不規則に互層した片理構造をもつ。
研究地域の変成相は緑泥石帯〜ざくろ石帯である(Tagiri et al., 2000)。このうちざくろ石帯で観察されたざくろ石は、曹長石中の包有物と基質に存在するものがあったが、基質に存在するざくろ石には破断された組織(脆性ブーディン)も確認された。
中部地方三波川帯天竜地域ではこれまで炭質物の石墨化度を用いた温度構造の推定が行われた(Tagiri et al., 2000)。本研究の白倉ユニットで得られた炭質物ラマン温度計による最高被熱温度は約360℃から約460°Cであり、調査地域の北東から東部で高温を示す傾向にあった。また、ざくろ石を含む泥質片岩の最高被熱温度は395°C以上であった。本研究で得られた最高被熱温度の結果はTagiri et al. (2000)による炭質物の石墨化度と正の相関を示すことから、Tagiri et al. (2000)の石墨化度の分布を最高被熱温度に読み替えることは可能である。
SEM-EBSD分析から、石英の平均粒径は12–60 µm、曹長石の平均粒径は15–75 µmであった。これらの粒径結果をそれぞれの試料の最高被熱温度と比較した結果、最高被熱温度が高くなると曹長石は最大粒径が大きくなる傾向を示したが、石英粒径は特に顕著な変化を示さなかった。石英の微細組織に明らかな動的再結晶作用の証拠が観察されたことから、降温期変成作用の後期に石英は塑性変形して細粒化した一方で、曹長石は脆性領域で変形しなかったことが示唆される。
石英曹長石優勢層の石英の結晶方位定向配列について、研究地域では主に底面a軸すべりが優勢なタイプIクロスガードルを示すが、本研究では400°C以下の低温領域で柱面a軸すべりが優勢なYマキシマパターンを示す泥質片岩を確認した。柱面a軸すべりの石英粒子は変形時のc軸結晶方位の姿勢によってすべり系が変化したことが示唆される。
引用文献:Tagiri et al., 2000, Island Arc, 9, 188–203.
研究地域の岩相は泥質片岩が主体であり、緑色片岩、珪質片岩が多く観察された。露頭で測定した泥質片岩の片理の走向は北東から北西方向で、線構造はほとんどが東西方向であった。露頭スケールの褶曲も複数存在し、褶曲軸はおおよそ東西方向であった。薄片観察から泥質片岩の主要構成鉱物は石英、曹長石、白雲母、炭質物、緑泥石、一部の試料でざくろ石や方解石が確認された。泥質片岩は白雲母緑泥石優勢層と石英曹長石優勢層が不規則に互層した片理構造をもつ。
研究地域の変成相は緑泥石帯〜ざくろ石帯である(Tagiri et al., 2000)。このうちざくろ石帯で観察されたざくろ石は、曹長石中の包有物と基質に存在するものがあったが、基質に存在するざくろ石には破断された組織(脆性ブーディン)も確認された。
中部地方三波川帯天竜地域ではこれまで炭質物の石墨化度を用いた温度構造の推定が行われた(Tagiri et al., 2000)。本研究の白倉ユニットで得られた炭質物ラマン温度計による最高被熱温度は約360℃から約460°Cであり、調査地域の北東から東部で高温を示す傾向にあった。また、ざくろ石を含む泥質片岩の最高被熱温度は395°C以上であった。本研究で得られた最高被熱温度の結果はTagiri et al. (2000)による炭質物の石墨化度と正の相関を示すことから、Tagiri et al. (2000)の石墨化度の分布を最高被熱温度に読み替えることは可能である。
SEM-EBSD分析から、石英の平均粒径は12–60 µm、曹長石の平均粒径は15–75 µmであった。これらの粒径結果をそれぞれの試料の最高被熱温度と比較した結果、最高被熱温度が高くなると曹長石は最大粒径が大きくなる傾向を示したが、石英粒径は特に顕著な変化を示さなかった。石英の微細組織に明らかな動的再結晶作用の証拠が観察されたことから、降温期変成作用の後期に石英は塑性変形して細粒化した一方で、曹長石は脆性領域で変形しなかったことが示唆される。
石英曹長石優勢層の石英の結晶方位定向配列について、研究地域では主に底面a軸すべりが優勢なタイプIクロスガードルを示すが、本研究では400°C以下の低温領域で柱面a軸すべりが優勢なYマキシマパターンを示す泥質片岩を確認した。柱面a軸すべりの石英粒子は変形時のc軸結晶方位の姿勢によってすべり系が変化したことが示唆される。
引用文献:Tagiri et al., 2000, Island Arc, 9, 188–203.
