Presentation Information
[T1-P-25]Deformation history of the Nishisonogi metamorphic rocks
*Miki SHIGENO1, Yasushi MORI1, Kazuo INOUE2 (1. Kitakyushu Museum of Natural History and Human History, 2. Nagano prefecture Matsumoto construction office)
Keywords:
Nishisonogi metamorphic rocks,deformation history,fold
西彼杵変成岩類は、九州北西部に分布する低温高圧変成岩であり、主に泥質片岩、塩基性片岩、砂質片岩、蛇紋岩からなる(西山, 1989)。片岩類には重複する様々な規模の変形構造(複数の片理面、形状の異なる褶曲、鉱物線構造など)が見られ(服部ほか, 1993)、西彼杵半島の南部や西部において変形史が検討された(重野・卯田, 1993, 1995; 井上・卯田, 1995)。
本地域では近年、石英を含むヒスイ輝石岩や超高圧変成岩類の発見(Shigeno et al., 2005; Nishiyama et al., 2020)、変成作用の継続時間の推定(Miyazaki et al., 2019)、変成温度構造の推定(Mori et al., 2019)などの成果があった。これらの新知見を踏まえ、西彼杵半島全体を対象として変形史を再検討した。
西彼杵半島西部では、主要片理面が地質図規模のオープン褶曲(褶曲軸はNE-SW〜NNE-SSW)により緩傾斜を示すほか、露頭規模の小褶曲(褶曲軸はNE-SW、NW-SE、NS)が見られる。東部では地質図規模のオープン褶曲はあまり発達せず、主要片理面は東傾斜である。
重複する構造の具体例としては、片岩類には露頭で主に形成時期の異なる2つの面構造が認められる。1つは露頭規模の小褶曲で曲げられていて、小褶曲の翼部では岩相境界に調和的である。もう1つは小褶曲の軸面劈開に相当する。前者は西彼杵半島の西部で観察される。東部の泥質片岩には主要片理面以前の数cm規模の小褶曲が見られるため、東部の東傾斜の面構造は、後者のような面構造の更新によるものと判った。
褶曲構造については、露頭観察と片理面のステレオ投影結果から、褶曲軸の方向はNW-SE、NS、NE-SW、EWである。このうちの2方向の褶曲の重複したステレオ投影結果が多く得られ、褶曲軸は西部〜中部でNW-SEとNS、中部でNS、中部〜東部でNSとNE-SWのように漸移する。このような漸移変化は、変成温度(440–520℃)が北西部から南東部に向かって高くなる傾向 (Mori et al., 2019)に類似する。東部の主要片理面が東傾斜のMori et al.(2019)の高温部にあたる区域では、3方向の褶曲軸が低角に交わる。
野外観察や顕微鏡観察から、NW-SE軸の褶曲の後にNS軸の褶曲、NS軸の褶曲の後にNE-SW軸の褶曲、最後に西部で局所的なEW軸の褶曲という前後関係が明らかになった。なお、石英を含むヒスイ輝石岩や超高圧変成岩は、中部〜西部の中でも比較的、狭い範囲に褶曲が重複する区域に産出する。
井上・卯田 (1995)は泥質片岩から、コアに炭質物包有物からなる微小褶曲と包有物のないクリアなリムを持つ曹長石斑状変晶を報告した。微小褶曲は南北断面の薄片で見られるため、その褶曲軸はEWに近い可能性がある。この構造は、前述のような、その地点における地質図規模〜露頭規模の褶曲形成以前のものと考えられる。
以上をまとめると、曹長石コアの微小褶曲に続き、西部〜中部のNW-SE軸の褶曲、中部のNS軸の褶曲、広範囲で見られるNE-SW軸の褶曲の順に発達し、東部で東傾斜の片理、西部で局所的なEW軸の褶曲が形成されたと考えられる。これは、南北圧縮から東西圧縮をへて北西-南東圧縮という、主歪みの方向の変遷を示している可能性がある。
引用文献 服部ほか (1993) 神浦地域の地質. 地質調査所; 井上・卯田 (1995) 日本地質学会要旨; Miyazaki et al. (2019) Contrib Mineral Petrol, 174: 91; Mori et al. (2019) Jour Mineral Petrol Sci, 114, 170–177; 西山 (1989) 地質学論集, 33: 237–257; Nishiyama et al. (2020) Sci. Rep., 10: 11645; Nishiyama et al. (2024) Island Arc,33,e12527;重野・卯田 (1993, 1995) 日本地質学会要旨; Shigeno et al. (2005) Jour Mineral Petrol Sci, 100: 237–246.
本地域では近年、石英を含むヒスイ輝石岩や超高圧変成岩類の発見(Shigeno et al., 2005; Nishiyama et al., 2020)、変成作用の継続時間の推定(Miyazaki et al., 2019)、変成温度構造の推定(Mori et al., 2019)などの成果があった。これらの新知見を踏まえ、西彼杵半島全体を対象として変形史を再検討した。
西彼杵半島西部では、主要片理面が地質図規模のオープン褶曲(褶曲軸はNE-SW〜NNE-SSW)により緩傾斜を示すほか、露頭規模の小褶曲(褶曲軸はNE-SW、NW-SE、NS)が見られる。東部では地質図規模のオープン褶曲はあまり発達せず、主要片理面は東傾斜である。
重複する構造の具体例としては、片岩類には露頭で主に形成時期の異なる2つの面構造が認められる。1つは露頭規模の小褶曲で曲げられていて、小褶曲の翼部では岩相境界に調和的である。もう1つは小褶曲の軸面劈開に相当する。前者は西彼杵半島の西部で観察される。東部の泥質片岩には主要片理面以前の数cm規模の小褶曲が見られるため、東部の東傾斜の面構造は、後者のような面構造の更新によるものと判った。
褶曲構造については、露頭観察と片理面のステレオ投影結果から、褶曲軸の方向はNW-SE、NS、NE-SW、EWである。このうちの2方向の褶曲の重複したステレオ投影結果が多く得られ、褶曲軸は西部〜中部でNW-SEとNS、中部でNS、中部〜東部でNSとNE-SWのように漸移する。このような漸移変化は、変成温度(440–520℃)が北西部から南東部に向かって高くなる傾向 (Mori et al., 2019)に類似する。東部の主要片理面が東傾斜のMori et al.(2019)の高温部にあたる区域では、3方向の褶曲軸が低角に交わる。
野外観察や顕微鏡観察から、NW-SE軸の褶曲の後にNS軸の褶曲、NS軸の褶曲の後にNE-SW軸の褶曲、最後に西部で局所的なEW軸の褶曲という前後関係が明らかになった。なお、石英を含むヒスイ輝石岩や超高圧変成岩は、中部〜西部の中でも比較的、狭い範囲に褶曲が重複する区域に産出する。
井上・卯田 (1995)は泥質片岩から、コアに炭質物包有物からなる微小褶曲と包有物のないクリアなリムを持つ曹長石斑状変晶を報告した。微小褶曲は南北断面の薄片で見られるため、その褶曲軸はEWに近い可能性がある。この構造は、前述のような、その地点における地質図規模〜露頭規模の褶曲形成以前のものと考えられる。
以上をまとめると、曹長石コアの微小褶曲に続き、西部〜中部のNW-SE軸の褶曲、中部のNS軸の褶曲、広範囲で見られるNE-SW軸の褶曲の順に発達し、東部で東傾斜の片理、西部で局所的なEW軸の褶曲が形成されたと考えられる。これは、南北圧縮から東西圧縮をへて北西-南東圧縮という、主歪みの方向の変遷を示している可能性がある。
引用文献 服部ほか (1993) 神浦地域の地質. 地質調査所; 井上・卯田 (1995) 日本地質学会要旨; Miyazaki et al. (2019) Contrib Mineral Petrol, 174: 91; Mori et al. (2019) Jour Mineral Petrol Sci, 114, 170–177; 西山 (1989) 地質学論集, 33: 237–257; Nishiyama et al. (2020) Sci. Rep., 10: 11645; Nishiyama et al. (2024) Island Arc,33,e12527;重野・卯田 (1993, 1995) 日本地質学会要旨; Shigeno et al. (2005) Jour Mineral Petrol Sci, 100: 237–246.
