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[T1-P-27]Preliminary study on the formation of jadeite and glaucophane in jadeite-quartz meta-tonalite in the Kamuikotan Zone, Hokkaido, Japan

*Hayato Ueda1, Masaki Nakano1 (1. Niigata Univ.)
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Keywords:

Kamuikoatn Zone,jadeite,glaucophane,metagranite,metamorphism

 白亜紀~古第三紀の高圧変成帯である北海道の神居古潭帯には,少量ながらひすい輝石+石英の組み合わせをもつ変成岩が産し,それらの一部には花崗質岩の原岩組織を残すものがある.沈み込み帯深部への花崗質岩の搬入は当時のテクトニック・セッティングを復元する鍵となる可能性があり,原岩の年代や性質とともに,変成履歴の解明が重要である.本発表では,演者らが最近着手した変花崗質岩の検討の経過を報告する. ひすい輝石+石英を含む変花崗質岩は,神居古潭峡谷の江丹別第8線川と北方の納内幌内川に産出が知られる.いずれの流域でも変花崗質岩は径数十cm~数mの転石として産し,露頭は見つかっていない.現在調査を進めている江丹別第8線川では,変花崗質岩の転石がみられる場所には,変成した斑れい岩~閃緑岩(藍閃石-ひすい輝石岩)やより細粒な変成火山岩が普遍的に伴われる.これらはいずれも,片理を全く持たず,非変形のまま原岩の組織を残している.転石の分布域の基岩は砂泥質の結晶片岩を主体とし,蛇紋岩を挟在する. 変花崗質岩は粗粒等粒状の組織を残しており,残存する石英のほか,斜長石部が淡緑色のひすい輝石とローソン石に,有色鉱物部が藍閃石に置換されている.カリ長石は認められず,原岩は優白質なトーナル岩だったと推定される.また,変花崗岩の転石には,しばしば塊状無片理の藍閃石岩が付着している.断片的な転石ばかりなので元の全体像はまだ明らかでないが,付着する藍閃石岩には変花崗岩の表面を覆う被膜状だったと思われるものが多く,そのほかに脈状の藍閃石岩もみられる. これまでに検討した変花崗岩部は石英+ひすい輝石+ローソン石+藍閃石+チタン石の組み合わせで,曹長石はみられない.一方,付着する藍閃石岩部は上記鉱物に加えて曹長石がみられる.変花崗岩部のひすい輝石は,ローソン石とともに原岩の粗粒な斜長石部を置換した集合体を形成している.これらのひすい輝石は鏡下で著しく汚濁しており,SEMでは比較的粗粒なひすい輝石結晶の内部に幅数ミクロンの虫食い状の石英包有物が多数集まったミルメカイトないし微文象様の組織が観察される.この組織は,斜長石の分解によってひすい輝石と石英がその場で同時成長したことと,この反応が熱水流体を介した溶解・沈殿ではなく固相反応として進行したことを示唆する.すなわち,累進的な昇圧により曹長石→ひすい輝石+石英の反応がおこった痕跡だと解釈される. 変花崗岩部と藍閃石岩部の双方において,藍閃石が縮退するひすい輝石を置換して成長した接触関係が観察され,藍閃石の結晶内部に元のひすい輝石の外形がゴースト状に認められる部分もある.当岩石では藍閃石以外に苦鉄質鉱物が含まれないため,ひすい輝石から藍閃石への置換には,外部から苦鉄質成分が付加される必要がある.苦鉄質成分の給源として最も考えやすいのは,周囲にあったであろう蛇紋岩である.たとえば,ひすい輝石+石英+蛇紋石→藍閃石+水 のような反応がおこれば,変花崗岩と周囲の蛇紋岩との境界に藍閃石の皮(リンド)が生じうるし,変花崗岩内部の置換も説明できるかもしれない.そして藍閃石岩の中には曹長石も認められるので,藍閃石岩の形成は,ひすい輝石+石英→曹長石 の反応線より低圧側でおこったと考えられる. 以上の藍閃石形成に関する考察が正しいなら,変花崗岩は昇圧時にはまだ蛇紋岩と接しておらず,恐らく大規模な地質体の一部として沈み込んだ後,減圧時に細かく分断して蛇紋岩と接したことになる.今後事例観察を増やして,この仮説を検証していきたい.