Presentation Information

[T1-P-29]Zircon U-Pb Age of Albitite and its Genetic Relation to Jadeite in Itoigawa city, Niigata

*Hinata NISHIZAWA1, Hana OKADA1, Hayato UEDA1 (1. Niigata University)
PDF DownloadDownload PDF

Keywords:

Jadeitite,Albitite

 新潟県糸魚川市周辺で産出するひすい輝石岩は,その成因について,曹長石からひすい輝石が生じたとする説(Shido, 1958 ほか)と,熱水からひすい輝石が生じたとする説(Miyajima et al., 1999)の2つが考えられてきた.糸魚川産のひすい輝石岩にしばしば見られるひすい輝石+方沸石はH2Oに不飽和でないと共生できないため,熱水流体の存在と矛盾する.一方,糸魚川地域では,中心部に曹長岩,周縁部にひすい輝石岩という累帯構造を持つひすいが産出することが知られており,これが曹長石からひすい輝石が生じたとする根拠とされた.しかし糸魚川産のひすい輝石岩のなかに石英が見られないことから,この説は近年は疑問視されている(宮島,1996).Shido (1958)は,曹長石→ひすい輝石+SiO2の反応は石英に飽和した場合より不飽和な場合のほうが低圧でおこることを指摘すると同時に,シリカがかんらん石の蛇紋石化や蛇紋石の滑石化に消費される間は曹長石の脱シリカが進行する可能性を論じている.しかしこれらの指摘は近年のひすい形成論では十分顧みられていない.以上を踏まえ,糸魚川産の曹長岩とひすい輝石岩の成因関係を改めて検討することとした.  
 今回採取した曹長岩やフォッサマグナミュージアム所蔵のひすい輝石岩について偏光顕微鏡やSEM-EDSを用いて組織観察を行ったところ,以下のような産状が観察された.産状1: ひすい輝石の結晶内に,曹長石の微細包有物が観察された.この産状は,曹長石がひすい輝石に置き換わったことを示唆する.産状2: 曹長岩中の粗粒曹長石中に,ひすい輝石の微細包有物が散在する様子が観察された.同一曹長石結晶内のひすい輝石包有物の消光位が揃っていることから,元来粗粒なひすい輝石が曹長石に置換されたと推定される.曹長岩1試料についてジルコンU-Pb年代を測定したところ, 494±3 Maの年代を得た.またジルコンの微量元素組成は,熱水性よりは火成岩由来を示唆する.
 この曹長岩について,内部に少量のひすい輝石を含んでいた. 産状1から,ひすい輝石岩が曹長岩から生じている可能性が考えられる.この時,NaAlSi3O8 → NaAlSi2O6 + SiO2 という反応が起きていると考えられる.また,産状2からは,曹長岩の一部はひすい輝石岩から変化したものと推定できる.この場合は,NaAlSi2O6 + SiO2 → NaAlSi3O8という反応が起きていると考えられる.シリカが出入りする方法については,流体を介してやりとりする,蛇紋岩との間で拡散が起きる,などが考えられる.さらに,曹長岩のジルコン微量元素組成から,曹長岩の原岩が火成岩であると考えられる.まとめると,火成岩が曹長岩に変化し,さらにひすい輝石岩に変化したり,曹長岩に戻ったりしている,と考えられる.

引用文献
F.Shido, 地質学雑誌,1958
H.Miyajima, S.Matsubara, R.Miyawaki, K, Ito, Mineralogical Magazine, 1999
宮島,日本地質学会第103年学術大会講演要旨,1996