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[T3-P-1]Fluorescence Andalusite-bearing Oiwasan Meta-rhyolites and Cultural Geology of Mt. Oiwasan

*Michio TAGIRI1, Yasumitsu SUZUKI, Sumio SHIMAZAKI2, Koichi MONMA3, Shohei SHIBATA4, Takeshi HASEGAWA5 (1. Hitachi City Museum, 2. Ibaraki Nature Museum, 3. National Museum of Nature and Science, 4. Niigata University, 5. Ibaraki University)
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Keywords:

Fluorescence,Andalusite,Per-aluminous rhyolites,Cambrian Hitachi volcano-plutonic complex,Oiwasan urban legend,Astronaut,Vent volcanics

 日立市の御岩山は常陸国風土記の「賀毘礼の高嶺」の遺称地とされ, 縄文土器などが発掘されることから, 古くから祭祀場所であったと考えられている. 現在は御岩神社の御神体として祠が多数祀られており, 御岩山上祭祀遺跡に指定されている (図 1). 御岩山変成流紋岩類はカンブリア系日立火山深成複合岩体に属し (田切ほか,2016), 御岩山岩峰を構成している. 粗粒紅柱石含有珪長質片岩 (CAF), 細粒紅柱石含有鉄鉱珪長質片岩 (FAIF), 紅柱石白雲母片岩と, 紅柱石を含まない白雲母片岩と珪長質片岩の5種の岩相で構成されている. CAF と FAIF が主岩相で, 互いに密接に共存して, 御岩山岩峰の中心部に広く分布する. CAFは緻密な乳白色の岩相で,FAIFは多孔質な赤褐色の岩相である (図 2A). FAIF は数cm幅の岩脈として CAF の流理に沿って貫入しており, しばしば流理を切ったり, 流動変形の頂部に濃集する. CAF と FAIF の境界部では FAIF の空孔が CAF に向かって細粒化しており, 急冷組織を示す. CAF と FAIF は同じ性格の化学組成であり, 構成鉱物も同じである. 主岩相のこのような産状は噴出流紋岩の火山組織を残していると判断される. その分布と産状から, 原岩は火山岩脈であり, 地表近い場所に貫入した火道火山岩と推定される. 白雲母片岩や珪長質片岩は流紋岩の砕屑物起源と思われる. 主岩相の主成分化学組成は過アルミナ質のもので, 原岩は紅柱石や珪線石をともなう過アルミナ質流紋岩 (Morgan, 1998; Belley & Broders, 2024) や S タイプ花崗岩 (Chappell and White, 2001) に相当する. 微量成分組成も同様の傾向を示す. 御岩山流紋岩類のマグマは, 大陸地殻が部分融解するような条件で生じたものと推定される.  御岩山変成流紋岩類は粗粒〜細粒の紅柱石を多量に含む岩相が大半を占める. 粗粒紅柱石は半自形や紡錘状の結晶としてCAF 中に, 細粒紅柱石は半自形の結晶として FAIF中に含まれる. 粗粒紅柱石の分布は極めて不均質で, 場合によっては研磨面の40 % が発光紅柱石で占められることから, 紅柱石またはその前駆結晶が火山岩の斑晶として晶出し, マグマの流動過程で不均質に分布するようになったことを示していると推察される. これらの紅柱石は強く紫外線発光する (図 2B). このような発光する岩石は本邦では他に報告がない. Webster, R., 砂川訳 (1980) によれば, 紅柱石の発光は一般に弱く, 宝石級の結晶のみよく発光するとある. また, X 線によっても発光することが知られている. CAF の同一の岩片中でも発光強度が異なる紅柱石があり, Fe 含量と発光強度が逆相関する.  御岩山には「エドガー宇宙飛行士が1971年2月の宇宙飛行の際, 宇宙船から御岩山が光るのを見た」という都市伝説がある. この都市伝説を調査すると, 1991 年 2 月にエドガー氏が御岩神社を訪問し, 当時の御岩神社宮司との懇談を発端に都市伝説が誕生発展した可能性があることが推察された. その背景には, エドガー氏のスピリチュアルな活動があり, 彼が日立市を訪問していたことが一層都市伝説に信憑性を持たせた. しかしながら, 発言に関わったと推定される 3 名の方々が既に亡くなっているため, どのような種類の光を見たのかは明らかにできなかった. 本報告した紫外線発光する紅柱石の光は, 都市伝説の光とは別のものである. しかし, 御岩山岩峰が紫外線発光する紅柱石を多量に含むことから, 都市伝説とは別に, 御岩山全体が発光する条件を科学的に検証するという新たな課題が生じた. 引用文献Belley, P.M. and J Broders. 2025. Mineralium Deposita, 1-19. Chappell, B. W., White, A. J. R. 2001. Australian Journal of Earth Sciences.48 : 489–499. Morgan, G.B., et al. 1998. Journal of Petrology, 39: 601-632. 田切ほか. 2016. 地質学雑誌, 122: 231-247. Webster, R.. 砂川訳. 1980. 「宝石学GEMS」.