Presentation Information
[T8-P-1]Data Collection and Predictive Analysis of River Denudation (follow-up report)
*Makoto KAWAMURA1, Nariaki NISHIYAMA1, Hua JIA2, Taiki ISHIKAWA2, Yukiko KOIZUMI2 (1. Japan Atomic Energy Agency, 2. Mitsubishi Materials Techno Corp.)
Keywords:
Geological Disposal,Uplift and Denudation,River Denudation,Topographic Change Simulation,Topographical Analysis
【背景・目的】
隆起・侵食に伴う河川下刻は、将来の地表地形に変化を与え、地下水流動など地下地質環境に影響を与える。高レベル放射性廃棄物等の地層処分の安全評価のためには、その影響について定量的な調査・評価技術を開発する必要がある。特に、地表付近では河川下刻による地表地形の変化により表層や地下水の流動場の変化を与え、それらを介して生活圏にも影響を及ぼす。そのため、地形変化を考慮した性能評価モデルの考慮が必要である。地形変化を考慮した性能評価モデルとしては、過去にはMiyahara et al. (2011)、近年においては山口ほか(2020)による検討がなされている。
このような検討には、両河岸の尾根間の距離、河川幅、下刻深さ、河岸法面の傾斜角など河川の横断面形状の情報が必要になるが、隆起速度に関する研究対象となることが多い河川縦断形に比べ参考になる情報が少ない。そこで我々は我が国の河川と地形・処分場深度変遷解析ツール(山口ほか, 2020)で作成した仮想地形上の仮想河川を対象にGISによる地形解析を実施し、河川を中心とした横断面形状データを収集してきた。本検討は令和4年度より着手しており、定性的ではあるが概ね横断面上の比高とその地域の隆起速度の間に相関性があることを見出している(西山ほか, 2024)。
一方で、地形・処分場深度変遷解析ツール(山口ほか, 2020)で作成した地形は、実地形よりも比高が小さくなる傾向が認められている。しかしながら、インプットデータである隆起速度に応じて比高が増大する傾向は認められ、実地形で認められた隆起速度と比高との間の相関関係があることと矛盾しない結果を得ている(西山ほか, 2024)。
ここではこれまでに引き続き実河川及び仮想河川のデータの拡充状況と比較検討結果について報告する。
【実施内容】
実河川としては、天塩川(北海道;幹川流路長256 km)、荒川(山形県~新潟県;同73 km)、黒部川(富山県;同85 km)、安倍川(静岡県;同51 km)、大井川(静岡県;168 km)、庄内川(岐阜県~愛知県;同96 km)、熊野川(奈良県~和歌山県・三重県;同183 km)、吉井川(岡山県;同133 km)、黒瀬川(広島県;同51 km)、四万十川(高知県;同196 km)、小丸川(宮崎県;同75 km)、一ツ瀬川(宮崎県;同88 km)、及び住用川(鹿児島県、奄美大島;同15.5 km)の13河川である。また、仮想地形の作成には、山口ほか(2020)によるツールを用い、隆起速度が0~0.6 mm/yの傾動と0.3 mm/yの全体隆起の2ケースからそれぞれ最長の河川を抽出し2河川とした。なお、実河川は10 mDEM、仮想地形は100 mDEMと解像度に差異がある。
上述した実河川13+仮想河川2の15河川に対し、河川の直交方向に断面線を設定し、横断線の長さを処分場のサイズを考慮し片側2ないし5 km(全長4ないし10 km)に設定し、DEMの解像度に合わせ実河川は10 m、仮想河川は100 m間隔で横断線上の標高データを取得した。横断線間隔は流路長を考慮し、河口を基点として河川沿いに1.5、3、5 km間隔に設定した。また、実河川については横断線沿いの地質データ(シームレス地質図V2)も収集した。
【結果】
実河川の比較では、河床の主な地質、例えば堆積岩(天塩川)、付加体(大井川など)、花崗岩(庄内川など)の違いによる比高差に大きな差異はなく、隆起速度に依存する傾向がみられ、西山ほか(2024)の検討を補強する結果となった。
仮想河川と実河川の比較では、仮想河川と実河川の解像度に差があるものの、ピーク比高に関するデータは隆起速度に応じて高くなる傾向が認められ、また、0.3 mm/yの全体隆起ケースにおける河川縦断形においても実河川同様に河床勾配の急変点が見いだされ、実河川の傾向と矛盾しない。但し、比高が実際の地形と比較して小さくなる傾向が認められ、仮想地形と実際の地形との間のギャップも確認された。
【今後の展開】
今後は、定性的な検討に止まっている実際の地形および仮想地形の横断面形状と隆起速度との相関性についてデータ解析を実施し、定量的な評価をできるよう検討する。
【参考文献】
Miyahara et al., (2011): Journal of NUCLEAR SCIENCE and TECHNOLOGY.
山口ほか(2020): 原子力バックエンド研究, Vol. 27, pp.72-82.西山ほか(2024): 日本地質学会第131年学術大会, T5-P-2.
【謝辞】
本報告には経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和6年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)(地質環境長期安定性総合評価技術開発)」の成果の一部を使用している。
隆起・侵食に伴う河川下刻は、将来の地表地形に変化を与え、地下水流動など地下地質環境に影響を与える。高レベル放射性廃棄物等の地層処分の安全評価のためには、その影響について定量的な調査・評価技術を開発する必要がある。特に、地表付近では河川下刻による地表地形の変化により表層や地下水の流動場の変化を与え、それらを介して生活圏にも影響を及ぼす。そのため、地形変化を考慮した性能評価モデルの考慮が必要である。地形変化を考慮した性能評価モデルとしては、過去にはMiyahara et al. (2011)、近年においては山口ほか(2020)による検討がなされている。
このような検討には、両河岸の尾根間の距離、河川幅、下刻深さ、河岸法面の傾斜角など河川の横断面形状の情報が必要になるが、隆起速度に関する研究対象となることが多い河川縦断形に比べ参考になる情報が少ない。そこで我々は我が国の河川と地形・処分場深度変遷解析ツール(山口ほか, 2020)で作成した仮想地形上の仮想河川を対象にGISによる地形解析を実施し、河川を中心とした横断面形状データを収集してきた。本検討は令和4年度より着手しており、定性的ではあるが概ね横断面上の比高とその地域の隆起速度の間に相関性があることを見出している(西山ほか, 2024)。
一方で、地形・処分場深度変遷解析ツール(山口ほか, 2020)で作成した地形は、実地形よりも比高が小さくなる傾向が認められている。しかしながら、インプットデータである隆起速度に応じて比高が増大する傾向は認められ、実地形で認められた隆起速度と比高との間の相関関係があることと矛盾しない結果を得ている(西山ほか, 2024)。
ここではこれまでに引き続き実河川及び仮想河川のデータの拡充状況と比較検討結果について報告する。
【実施内容】
実河川としては、天塩川(北海道;幹川流路長256 km)、荒川(山形県~新潟県;同73 km)、黒部川(富山県;同85 km)、安倍川(静岡県;同51 km)、大井川(静岡県;168 km)、庄内川(岐阜県~愛知県;同96 km)、熊野川(奈良県~和歌山県・三重県;同183 km)、吉井川(岡山県;同133 km)、黒瀬川(広島県;同51 km)、四万十川(高知県;同196 km)、小丸川(宮崎県;同75 km)、一ツ瀬川(宮崎県;同88 km)、及び住用川(鹿児島県、奄美大島;同15.5 km)の13河川である。また、仮想地形の作成には、山口ほか(2020)によるツールを用い、隆起速度が0~0.6 mm/yの傾動と0.3 mm/yの全体隆起の2ケースからそれぞれ最長の河川を抽出し2河川とした。なお、実河川は10 mDEM、仮想地形は100 mDEMと解像度に差異がある。
上述した実河川13+仮想河川2の15河川に対し、河川の直交方向に断面線を設定し、横断線の長さを処分場のサイズを考慮し片側2ないし5 km(全長4ないし10 km)に設定し、DEMの解像度に合わせ実河川は10 m、仮想河川は100 m間隔で横断線上の標高データを取得した。横断線間隔は流路長を考慮し、河口を基点として河川沿いに1.5、3、5 km間隔に設定した。また、実河川については横断線沿いの地質データ(シームレス地質図V2)も収集した。
【結果】
実河川の比較では、河床の主な地質、例えば堆積岩(天塩川)、付加体(大井川など)、花崗岩(庄内川など)の違いによる比高差に大きな差異はなく、隆起速度に依存する傾向がみられ、西山ほか(2024)の検討を補強する結果となった。
仮想河川と実河川の比較では、仮想河川と実河川の解像度に差があるものの、ピーク比高に関するデータは隆起速度に応じて高くなる傾向が認められ、また、0.3 mm/yの全体隆起ケースにおける河川縦断形においても実河川同様に河床勾配の急変点が見いだされ、実河川の傾向と矛盾しない。但し、比高が実際の地形と比較して小さくなる傾向が認められ、仮想地形と実際の地形との間のギャップも確認された。
【今後の展開】
今後は、定性的な検討に止まっている実際の地形および仮想地形の横断面形状と隆起速度との相関性についてデータ解析を実施し、定量的な評価をできるよう検討する。
【参考文献】
Miyahara et al., (2011): Journal of NUCLEAR SCIENCE and TECHNOLOGY.
山口ほか(2020): 原子力バックエンド研究, Vol. 27, pp.72-82.西山ほか(2024): 日本地質学会第131年学術大会, T5-P-2.
【謝辞】
本報告には経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和6年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)(地質環境長期安定性総合評価技術開発)」の成果の一部を使用している。
