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[T10-P-2]Zircon U-Pb ages of Cretaceous granitoids distributed in the south-western part of the Ashio Belt

*Takuma DEGUCHI1, Tetsuya TOKIWA1, Hiroshi MORI1 (1. Shinshu-University)
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Keywords:

Cretaceous granitoids,zircon U-Pb age,Ashio Belt

 日本列島には,カンブリア紀から第四紀までの幅広い年代の花崗岩類が広く分布している.このうち,白亜紀から古第三紀初期に形成された白亜紀花崗岩類が最も多く,全体の80%以上を占める(中島,2018).そのため,白亜紀花崗岩類は日本列島の形成史を考える上で非常に重要である.近年,白亜紀花崗岩類の形成年代については,ジルコンU-Pb年代測定により活発な議論が行われている.しかし,同年代測定が行われていない地域も多く存在し,その1つに足尾帯南西部がある.
足尾帯南西部の白亜紀花崗岩類は,越後山地南部や足尾山地北部に分布し,29岩体に分けられる(高橋ほか, 2004;矢内, 1972など).このうち,水上花崗閃緑岩,檜枝岐川花崗岩,沢入花崗閃緑岩,および只見川古期花崗岩類から3岩体の計6岩体については,ジルコンU-Pb年代として,それぞれ109.4 Ma,101.1 Ma,93.9 Ma,および106.7~62.2 Maが報告されている(Minami et al., 2021;Ogasawara et al., 2013;Wakasugi et al., 2020).本研究では残り23岩体のうち,比較的露出面積の大きい9岩体を対象にジルコンU-Pb年代測定を行った.
年代測定の結果,須田貝花崗岩では64.2 ± 0.5 Ma,大源太花崗岩では66.3 ± 1.1 Ma,田子倉花崗岩では85.0 ± 1.2 Ma,土倉岩体では89.3 ± 2.1 Ma,大湯花崗岩では99.2 ± 1.0,黒又川花崗岩では100.7 ± 1.0 Ma,只見川新期花崗岩では100.8 ± 4.4 Ma,巻機山花崗閃緑岩では104.0 ± 1.1 Ma,および大倉花崗岩では108.3 ± 6.1 Maが得られた.調査対象全体で見ると114~61 Maと広い年代幅を示し,形成ステージとしては,114~93 Ma(第1ステージ),91~84 Ma(第2ステージ),および67~61 Ma(第3ステージ)の3ステージに区分できる.
次に,これら3回の火成活動の度合いを比較するために,各岩体の面積を算出し,ジルコンU-Pb年代と照らし合わせた.その結果,第3ステージ(67~61 Ma)が最も活発で,足尾帯南西部の主要な活動であり,次に第1ステージ(114~93 Ma)が活発的で,第2ステージ(91~84 Ma)の活動は小規模であることが明らになった.
足尾帯の本調査対象地域(南西部)以外の白亜紀花崗岩類からもジルコンU-Pb年代が得られており,朝日山地では99~87 Maと,68~64 Ma,八溝山地では109~107 Ma,つくば山塊では67~64 Ma,および日本国地域では69~62 Maが報告されている(Ejima et al., 2017;小笠原ほか,2018;Takahashi et al., 2012など) .これらの形成年代は本調査地域と概ね整合的であり,足尾帯の白亜紀花崗岩類は3つのステージで形成された可能性が高い.
足尾帯の東側に隣接する阿武隈花崗岩類は,120~95 MaのジルコンU-Pb年代を示し第1ステージに概ね対応する.一方,西南日本の領家花崗岩類は100~70 Maに主に形成されたとされているが,地域によって年代が異なることが多く,足尾帯南西部の西側に隣接する伊那花崗岩類は,72~65 Maに主に形成されたことが報告されている(常盤・北川, 2023).この時期は足尾帯南西部の白亜紀花崗岩類の最も活発な形成時期である第3ステージに近い.
今後,足尾帯白亜紀花崗岩類について,ジルコンU–Pb年代測定が行われていない多くの岩体に対しても同様な解析を進め,より広域かつ詳細な形成年代特性を明らかにしていきたと考えている.
引用文献:Ejima et al., 2017, Island Arc, 27, e12222; Minami et al., 2021, Earth, Planets and Space, 73(1), 231; 中島, 2018, 地質雑, 124, 603-625; Ogasawara et al., 2013, Island Arc, 22, 306-317; 小笠原ほか, 2018, 日本地質学会第131年学術大会講演要旨; Takahashi et al., 2012, Asian Earth Science, 47 265-280;高橋ほか, 2004, 5万分の1地質図幅, 新潟(7), 51; 常盤・北川, 2023, 日本地質学会第130年学術大会講演要旨, T5-O-7;Wakasugi et al., 2020, Geochemical Journal, 54, 203-220;矢内, 1972, 岩石鉱物鉱床学会誌, 67, 193‒202.