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[T10-P-4]Rupture distribution of the 2018 Palu-Koro fault earthquake and the formation of the Palu sedimentary basin in Central Sulawesi, Indonesia

*Osamu NISHIKAWA1, Riska PUSPITA2 (1. Mineral Industry Museum, Akita University, 2. Geological Engineering Department, Tadulako University)
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Keywords:

Indonesia,Active fault,Pull-apart basin

 インドネシア・スラウェシ島は、オーストラリアプレートとユーラシアプレート南部(スンダランド)の会合部に位置し、地殻変動が激しく起伏にとんだ地形と複雑な地質構造を有する地域である。中部スラウェシのパル=コロ断層は、反時計回りにブロック回転しながら西進するバンガイ=スラ地塊と西スラウェシ火山弧との衝突フロントに位置し、南西スラウェシのマタノ断層とともに、長大な左横ずれ断層系を形成している。中部スラウェシの中心都市パル付近には、幅10 km~7 km、 NNW-SSE方向に直線的に延びる北に開いた狭長なパル堆積盆が発達している。この堆積盆の両側には2000 m(西側)および1000 m(東側)級の急峻な山地があり、堆積盆に大量の砕屑物を供給している。2018年9月28日に中部スラウェシで発生したM7.5の大地震では、破壊域が震央から150 km南方まで及んだ。地震断層は、パル市からパル=コロ断層の地形トレースに沿って南方に約65 kmにわたって現れた。本研究では、既報の地震直後の2018年11月の調査結果(西川ほか, 2019)に加えて、2014年および2025年に実施した地震断層の地表踏査の結果と断層付近で地震を経験した住民の証言をもとに、断層の詳細な変位分布を明らかにし、パル堆積盆の成因について考察する。地震断層は、パル市街地から30 km 南方までは盆地西縁部を通過し、東落ち数十cmを伴う左横ずれ4.3 m~3 mの変位を示す。断層はおおむね直線的であるが、盆地南端のシギベント(Asri, et al, 2019)で反時計回りに約20度屈曲して盆地を横切り、盆地東側にシフトして再びSSEに方向を戻し、さらに南方へ約30 km延長する。地震断層が確認された最南部のパンガナ地区では、水平および鉛直方向の変位が水平距離1 kmあたり0.4 mおよび0.2 mそれぞれ急減している。シギベント区間での地震断層は北東落ちの正断層となる。鉛直方向の変位の最大値は、盆地西縁に近い屈曲部付近で約8 mを示す。一方、盆地東縁付近では、断層に平行な変位成分は比較的小さい。ベント区間の地震断層や関連した地割れの多くは、地震直後には割れ目に垂直な方向に最大2 m開口し、深い溝を形成した。これらのことから、パル堆積盆は、パル=コロ断層の活動に伴いシギベントにおける変位が累積して形成されたプルアパートベーズンであると解釈される。ベント北東部の沈降部では、地震直後に背丈を超える水深の泥水に覆われ、洪水が3日間継続したという証言が得られている。当日は晴天で、周囲の河川から通常の水量を上回る水が流入したとは考えられないため、地震発生時に地盤が液状化し、割れ目から大量の泥水が噴出したことに加えて、沈降によって排水能力が大幅に低下したことが原因と考えられる。
文献:
Asri, J., Nishikawa, O., Sahabuddin, J. (2019) EPS, 71:144.
西川 治・アスリ J.・サハブディン J. (2019) 日本地質学会第126年学術大会講演要旨.