Presentation Information
[T10-P-10]Geotectonic evolution of the Median Tectonic Line in Shikoku, southwest Japan, revealed by the drilling and outcrop survey
*Masahiro MIYAWAKI1 (1. Nuclear Regulation Authority / NRA)
Keywords:
median tectonic line,Kawakami fault,fault zone,Paleostress analysis,active fault
1. はじめに
中央構造線(MTL: Median Tectonic Line)は、西南日本を東西に横断する延長約1000 kmの断層である。愛媛県西条市付近には、三波川変成帯と和泉層群を境する地質断層としての中~低角度の中央構造線(MTLTB: MTL inactive Terrane Boundary)と、この断層の北側に並走する活断層としての高角度の中央構造線(MTLAFZ: MTL Active Fault Zone)が分布する。調査地域周辺にはMTLTBの北側に白亜紀に形成された和泉層群、MTLTBの南側に白亜紀の変成作用を受けた三波川変成帯が分布する。更にこれらの基盤岩類を不整合に覆う新第三紀中新世に形成された石鎚層群及び久万層群、鮮新世後期から更新世前期に形成された岡村層群が分布する。調査地付近では、MTLTB及びMTLAFZに沿って最大幅40mの破砕帯を伴う。Miyawaki and Sakaguchi(2021)は、地表で傾斜約70度で北に傾斜するMTLAFZは傾斜約30度で北に傾斜するMTLTBに地下で収れんすることをボーリング調査及び断層露頭調査により明らかにした。本研究では、同地点において採取した断層破砕帯の内部構造を解析することにより中央構造線の地質構造発達史を解明した。
2. 実施内容
調査地点は、地表部で川上断層(MTLAFZの一部)とMTLTBが約100 mの間隔で並走する愛媛県西条市湯谷口である。これらの断層の地質構造を明らかにするため、中山川河床部に分布する断層露頭調査と両断層を貫く長さ80-330 mの6本のボーリング掘削(計980 m)を行った。ボーリングコアで確認された断層面の方向を把握するためにBHTV(ボアホールテレビ)観察による断層面の方位解析を実施した。断層の三次元のスリップ方向は、BHTVの方位解析結果と掘削方位に基づいて定方位化を行ったボーリングコアを用いて、断層条線の方向と変位センスから求めた。得られた複数の断層のスリップデータを用いて多重逆解法(Yamaji, 2000)による古応力場の解析を行った。
3. 結果及び考察
MTLTBとMTLAFZの幾何学的な特徴やそれぞれの断層と地層との接合関係、断層の変位センス、古応力場等の構造地質学的特徴に基づいて変形フェーズを古いほうからD1~D4の4つに定義した。一部の古応力場については中新世の日本海の拡大に伴う西南日本の回転についても補正を行った。D1フェーズはMTLTBの断層上盤が西方へ移動した左横ずれ型の変形であり、古応力場はNNE-SSW圧縮を示す。D2フェーズはMTLTBの断層上盤が北方へ移動した正断層型の変形であり、古応力場はE-W伸張を示す。中新統の安山岩破砕帯には正断層センスの複合面構造が認められる。D3フェーズは岡村層群堆積前にMTLAFZの断層上盤が南方へ変位した逆断層型の運動であり、古応力場はNNW-SSE圧縮を示す。MTLAFZが逆断層運動によりMTLTBの上位にのり上げている。D4フェーズはMTLAFZの断層上盤が東方へ変位した現在の正断層センスを伴う右横ずれ型の運動であり、古応力場はWNW-ESE圧縮を示す。岡村層群はMTLAFZの断層上盤の沈降に伴って堆積したと推定される。
これらの変形フェーズと新生代において想定されているプレートの運動方向との関連性を明らかにした。左横ずれ型でNNE-SSW圧縮のD1フェーズは、太平洋プレートがNNW方向に移動していた時期の運動と考えられ、Kubota et al.(2020)の先砥部時階(46-47Ma頃)に対比される。E-W伸張が卓越するD2フェーズは、中新世の安山岩の変形を伴うことから石鎚火成期(15-14Ma頃)の活動に関連した断層活動で、日本海の拡大時期の運動と考えられ、須鎗・阿子島(1973)の石鎚時階に対比される。逆断層型でNNW-SSE圧縮が卓越するD3フェーズは、フィリピン海プレートがNNW方向に移動していた時期(14-3Ma頃)の運動と考えられ、南海トラフに対する直交方向への沈み込みにより、中央構造線沿いで逆断層運動が卓越したと推定される。右横ずれ型でWNW-ESE圧縮のD4フェーズは岡村層群が堆積を開始した3Ma以降の断層運動であり、フィリピン海プレートが南海トラフに対してNW方向に移動することにより、中央構造線沿いで右横ずれ運動が卓越するようになったと考えられる。
引用文献 Miyawaki and Sakaguchi (2021), EPS, 73 (1); Yamaji (2000), JSG, 22, 429-440; Kubota et al. (2020), Tectonics, 39; 須鎗・阿子島(1973), 中央構造線, 149-189
中央構造線(MTL: Median Tectonic Line)は、西南日本を東西に横断する延長約1000 kmの断層である。愛媛県西条市付近には、三波川変成帯と和泉層群を境する地質断層としての中~低角度の中央構造線(MTLTB: MTL inactive Terrane Boundary)と、この断層の北側に並走する活断層としての高角度の中央構造線(MTLAFZ: MTL Active Fault Zone)が分布する。調査地域周辺にはMTLTBの北側に白亜紀に形成された和泉層群、MTLTBの南側に白亜紀の変成作用を受けた三波川変成帯が分布する。更にこれらの基盤岩類を不整合に覆う新第三紀中新世に形成された石鎚層群及び久万層群、鮮新世後期から更新世前期に形成された岡村層群が分布する。調査地付近では、MTLTB及びMTLAFZに沿って最大幅40mの破砕帯を伴う。Miyawaki and Sakaguchi(2021)は、地表で傾斜約70度で北に傾斜するMTLAFZは傾斜約30度で北に傾斜するMTLTBに地下で収れんすることをボーリング調査及び断層露頭調査により明らかにした。本研究では、同地点において採取した断層破砕帯の内部構造を解析することにより中央構造線の地質構造発達史を解明した。
2. 実施内容
調査地点は、地表部で川上断層(MTLAFZの一部)とMTLTBが約100 mの間隔で並走する愛媛県西条市湯谷口である。これらの断層の地質構造を明らかにするため、中山川河床部に分布する断層露頭調査と両断層を貫く長さ80-330 mの6本のボーリング掘削(計980 m)を行った。ボーリングコアで確認された断層面の方向を把握するためにBHTV(ボアホールテレビ)観察による断層面の方位解析を実施した。断層の三次元のスリップ方向は、BHTVの方位解析結果と掘削方位に基づいて定方位化を行ったボーリングコアを用いて、断層条線の方向と変位センスから求めた。得られた複数の断層のスリップデータを用いて多重逆解法(Yamaji, 2000)による古応力場の解析を行った。
3. 結果及び考察
MTLTBとMTLAFZの幾何学的な特徴やそれぞれの断層と地層との接合関係、断層の変位センス、古応力場等の構造地質学的特徴に基づいて変形フェーズを古いほうからD1~D4の4つに定義した。一部の古応力場については中新世の日本海の拡大に伴う西南日本の回転についても補正を行った。D1フェーズはMTLTBの断層上盤が西方へ移動した左横ずれ型の変形であり、古応力場はNNE-SSW圧縮を示す。D2フェーズはMTLTBの断層上盤が北方へ移動した正断層型の変形であり、古応力場はE-W伸張を示す。中新統の安山岩破砕帯には正断層センスの複合面構造が認められる。D3フェーズは岡村層群堆積前にMTLAFZの断層上盤が南方へ変位した逆断層型の運動であり、古応力場はNNW-SSE圧縮を示す。MTLAFZが逆断層運動によりMTLTBの上位にのり上げている。D4フェーズはMTLAFZの断層上盤が東方へ変位した現在の正断層センスを伴う右横ずれ型の運動であり、古応力場はWNW-ESE圧縮を示す。岡村層群はMTLAFZの断層上盤の沈降に伴って堆積したと推定される。
これらの変形フェーズと新生代において想定されているプレートの運動方向との関連性を明らかにした。左横ずれ型でNNE-SSW圧縮のD1フェーズは、太平洋プレートがNNW方向に移動していた時期の運動と考えられ、Kubota et al.(2020)の先砥部時階(46-47Ma頃)に対比される。E-W伸張が卓越するD2フェーズは、中新世の安山岩の変形を伴うことから石鎚火成期(15-14Ma頃)の活動に関連した断層活動で、日本海の拡大時期の運動と考えられ、須鎗・阿子島(1973)の石鎚時階に対比される。逆断層型でNNW-SSE圧縮が卓越するD3フェーズは、フィリピン海プレートがNNW方向に移動していた時期(14-3Ma頃)の運動と考えられ、南海トラフに対する直交方向への沈み込みにより、中央構造線沿いで逆断層運動が卓越したと推定される。右横ずれ型でWNW-ESE圧縮のD4フェーズは岡村層群が堆積を開始した3Ma以降の断層運動であり、フィリピン海プレートが南海トラフに対してNW方向に移動することにより、中央構造線沿いで右横ずれ運動が卓越するようになったと考えられる。
引用文献 Miyawaki and Sakaguchi (2021), EPS, 73 (1); Yamaji (2000), JSG, 22, 429-440; Kubota et al. (2020), Tectonics, 39; 須鎗・阿子島(1973), 中央構造線, 149-189
