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[T10-P-14]Interval estimation of driving fluid pressure ratios from dilation directions of dikes

*Katsushi SATO1 (1. Kyoto University)
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Keywords:

dike,mineral vein,fluid pressure,stress tensor inversion

 岩脈や鉱物脈などの引張割れ目の方位分布を用いて,それらが形成された当時の地殻応力を推定する応力逆解析法が普及している(Jolly and Sanderson, 1997; Yamaji and Sato, 2011).この手法では,流体圧比(流体圧と上載荷重による岩石圧の比)の指標となる駆動流体圧比(流体圧と最小圧縮主応力の差を,差応力で規格化したもの)を決定することもできる.しかし,求まる駆動流体圧比は多数の岩脈に発生した流体圧の中で最大に近い値であるため,代表的な値とみなせるかどうか議論の余地がある.そこで本研究は,岩脈の貫入面の方位だけでなく,岩脈の開口方向を観測することで,個々の岩脈の駆動流体圧比を決定する手法の開発を試みた.
岩脈の壁面が平面である場合は,壁面に平行な変位の成分を特定できないため,開口方向の観測は難しい.壁面が多面体の形状である場合は,両側の壁面の折れ曲がりの位置を対比することで,開口方向を制約できる.開口方向は,貫入面にはたらく有効法線応力と剪断応力の比で与えられる.有効法線応力は法線応力から流体圧を減じたものなので,開口方向は駆動流体圧比を反映している.したがって,応力(主応力軸と応力比)が決定されていれば,観測された開口方向の制約条件に合致するように駆動流体圧比を決定できる.この手法では,壁面の折れ曲がりの形状と主応力軸の配置の関係次第で,駆動流体圧比の決定精度が大きく変わる.そこで,測定誤差を考慮して,駆動流体圧比の信頼区間を推定した.
以上の手法を,美濃-丹波帯の付加体に貫入した福井県敦賀湾周辺の中新世の火成岩脈群に適用した.同岩脈群の応力逆解析によって,北北西-南南東方向に引張軸を持つ正断層型応力が得られている(Sato et al., 2013).また駆動流体圧比の最大値は約0.8と見積もられている.解析の結果,法線応力が大きい(圧縮を正とする)岩脈ほど駆動流体圧比が大きい傾向があった.このことは,高い駆動流体圧比のもとで多数の岩脈が形成されたのではなく,流体圧が高まるにつれて開口可能な方位の岩脈が順次開口していったことを示唆する.また,駆動流体圧比が大きいほど,その信頼区間は大きい(精度が低い)ことがわかった.測定誤差として±5°程度を想定すると,駆動流体圧比が1を超えない範囲では,信頼区間の幅は±0.1程度に収まった.

引用文献
Jolly, R.J.H. and Sanderson, D.J., 1997, Journal of Structural Geology, 19, 887-892.
Sato, K., Yamaji, A. and Tonai, S., 2013, Tectonophysics, 588, 69-81.
Yamaji, A. and Sato, K., 2011, Journal of Structural Geology, 33, 1148-1157.