Presentation Information
[T13-P-9]Zircon U–Pb geochronology of the Hida Belt, Japan: Continental growth history at the margin of East Asia
*Raiki YAMADA1, Mitsuhiro NAGATA2, Hikaru SAWADA3, Sota NIKI4, Yasuhiro OGITA5, Wataru OUCHI6, Shinnosuke AOYAMA6, Takafumi HIRATA7 (1. National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 2. Nihon University, 3. University of Toyama, 4. Nagoya University, 5. Japan Atomic Energy Agency, 6. Niigata University, 7. University of Tokyo)
Keywords:
Zircon U-Pb date,Hida Belt,Hida Granites,Hida Metamorphic Rocks
飛驒帯は西南日本弧の背弧側に位置する,古生代~中生代ジュラ紀変成岩類(飛驒変成岩類,宇奈月変成岩類)と花崗岩類(飛驒古期・新期花崗岩類)からなる地質帯である1.飛驒帯の起源は北中国地塊説2,南北中国地塊衝突帯説3,中央アジア造山帯説4などがあり,議論の収束を見ない.しかしこれらのいずれが起源であったとしても,飛驒帯は大陸起源であることには変わりはないため,先カンブリア時代~顕生代にかけての大陸成長の情報を保持していることが大いに期待される.近年,ジルコンHf同位体を用いた大陸地殻の成長に関する議論5が盛んになされているが,まずはU–Pb年代によって飛驒帯を形作った大陸地殻成長史の全容を把握することが重要である.これらを踏まえ,本研究では飛驒帯の変成岩類および花崗岩類に対してジルコンU–Pb年代測定を行った.本発表ではその結果を報告し,飛驒帯の形成史を議論する.
本研究では飛驒帯構成岩類のうち,飛驒変成岩類から4試料,飛驒花崗岩類から15試料を対象に,ジルコンU–Pb年代測定をおこなった.ジルコンU–Pb年代測定には,東京大学平田研究室設置の高速多点フェムト秒レーザーを接続した多重検出型誘導結合プラズマ質量分析装置(msfsLA-MC-ICP-MS)を使用した.
年代測定結果の要点は以下のようにまとめられる.(1)300 Maに形成された火成岩を源岩とする変成岩を発見した.(2)飛騨変成岩類に記録されている変成年代は約265–245 Maである.(3)伊西ミグマタイトからは,約190 Maの変成年代が得られた.(4)飛驒古期花崗岩類のマイロナイト化した花崗岩類は,いずれも約240 Maの火成年代を示す.(5)飛驒新期花崗岩類は200–180 Maの火成年代を示す.
これらの結果と先行研究によるジルコンU–Pb年代の情報1, 2, 6, 7, 8, 9, 10を併せると,以下のような飛驒帯の形成史を考察することができる.ジルコンのinherited coreの年代として,3800–3500 Maや2700–1800 Ma,1000 Maといった年代は見られるものの,飛驒帯に保存されている最も古い火成岩は330–300 Maの石炭紀に形成されたものである.265 Maになると変成作用が起き,同時に花崗岩体の形成・変成も起きた.この変成・深成作用は,約245 Maにはグラニュライト相に達し,約220 Maまで継続した.200–180 Maには花崗岩体を形成する深成作用が起きた。花崗岩質マグマが飛驒変成岩類中の石灰岩類と反応してできる伊西ミグマタイトは,これまでの研究で飛驒変成岩類とともに形成されたとされていたが,本研究によりジュラ紀にも伊西ミグマタイトを形成するような変成作用が起きたことが明らかになった.
以上のように,ジルコンU–Pb年代によって飛驒帯を形作った大陸地殻成長史が明らかになった.さらにジルコンHf同位体の情報を加えることによって,飛驒帯の起源やより詳細な地殻の成長を議論することができる.
引用文献
1Takahashi et al. (2010) Gondwana Res., 17, 102–115.
2Oh et al. (2024) Intern. Jour. Earth Sci., 113, 1241–1264.
3相馬・椚座(1993)地質学論集,42,1–20.
4Wilde et al. (2010) Geol. Soc, London, Spec. Publ., 338, 117–137.
5Iizuka et al. (2017) Lithos, 274–275, 304–327.
6Horie et al. (2010) Precam. Res., 183, 145–157.
7Horie et al. (2018) Chem. Geol., 484, 148–167.
8Takahashi et al. (2018) Island Arc, 27, e12220.
9Cho et al. (2021) Geosci. Front., 12, 101145.
10Harada et al. (2021) Island Arc, 30, e12389.
本研究では飛驒帯構成岩類のうち,飛驒変成岩類から4試料,飛驒花崗岩類から15試料を対象に,ジルコンU–Pb年代測定をおこなった.ジルコンU–Pb年代測定には,東京大学平田研究室設置の高速多点フェムト秒レーザーを接続した多重検出型誘導結合プラズマ質量分析装置(msfsLA-MC-ICP-MS)を使用した.
年代測定結果の要点は以下のようにまとめられる.(1)300 Maに形成された火成岩を源岩とする変成岩を発見した.(2)飛騨変成岩類に記録されている変成年代は約265–245 Maである.(3)伊西ミグマタイトからは,約190 Maの変成年代が得られた.(4)飛驒古期花崗岩類のマイロナイト化した花崗岩類は,いずれも約240 Maの火成年代を示す.(5)飛驒新期花崗岩類は200–180 Maの火成年代を示す.
これらの結果と先行研究によるジルコンU–Pb年代の情報1, 2, 6, 7, 8, 9, 10を併せると,以下のような飛驒帯の形成史を考察することができる.ジルコンのinherited coreの年代として,3800–3500 Maや2700–1800 Ma,1000 Maといった年代は見られるものの,飛驒帯に保存されている最も古い火成岩は330–300 Maの石炭紀に形成されたものである.265 Maになると変成作用が起き,同時に花崗岩体の形成・変成も起きた.この変成・深成作用は,約245 Maにはグラニュライト相に達し,約220 Maまで継続した.200–180 Maには花崗岩体を形成する深成作用が起きた。花崗岩質マグマが飛驒変成岩類中の石灰岩類と反応してできる伊西ミグマタイトは,これまでの研究で飛驒変成岩類とともに形成されたとされていたが,本研究によりジュラ紀にも伊西ミグマタイトを形成するような変成作用が起きたことが明らかになった.
以上のように,ジルコンU–Pb年代によって飛驒帯を形作った大陸地殻成長史が明らかになった.さらにジルコンHf同位体の情報を加えることによって,飛驒帯の起源やより詳細な地殻の成長を議論することができる.
引用文献
1Takahashi et al. (2010) Gondwana Res., 17, 102–115.
2Oh et al. (2024) Intern. Jour. Earth Sci., 113, 1241–1264.
3相馬・椚座(1993)地質学論集,42,1–20.
4Wilde et al. (2010) Geol. Soc, London, Spec. Publ., 338, 117–137.
5Iizuka et al. (2017) Lithos, 274–275, 304–327.
6Horie et al. (2010) Precam. Res., 183, 145–157.
7Horie et al. (2018) Chem. Geol., 484, 148–167.
8Takahashi et al. (2018) Island Arc, 27, e12220.
9Cho et al. (2021) Geosci. Front., 12, 101145.
10Harada et al. (2021) Island Arc, 30, e12389.
