Presentation Information
[T13-P-13]Tectonostratigraphy and structural evolution of the Shimanto Accretionary Complex in the Kawaragou District, SW Japan
*Yusuke SHIMURA1 (1. Geological Survey of Japan, AIST)
Keywords:
Shimanto Belt,accretionary complex,Cretaceous,Paleogene,Kii Peninsula
はじめに:発表者は,地質調査総合センターが進める陸域地質図プロジェクトの一環として,紀伊半島中西部に位置する5万分の1地質図幅「川原河」の調査研究を行っている.「川原河」には,白亜紀~古第三紀の四万十付加体が広く分布するとともに,白亜紀付加体と古第三紀付加体を分ける御坊-十津川スラストを含んでいるため,四万十付加体の構造発達史を理解する上で重要な地域である.そのため,これまで多くの研究者や研究グループによって地質学的・構造地質学的・年代学的に検討されてきた(例えば,Awan and Kimura, 1996; Hashimoto and Kimura, 1999; 紀州四万十帯団体研究グループ, 2012).本発表では,地質調査によって作成した地質図を元に,本地域に分布する四万十付加体の構造層序区分を再検討したのでそれらを報告するとともに,四万十付加体の地質構造発達史を議論する.
構造層序:紀州四万十帯団体研究グループ(2006)は,「川原河」に分布する四万十付加体を,構造的上位から下位へ,美山層,竜神層,丹生ノ川層,および音無川層群に区分し,丹生ノ川層と音無川層群の境界に白亜紀-古第三紀境界の構造線(御坊-萩構造線)を設定した.その後,はてなし団体研究グループ(2012)や紀州四万十帯団体研究グループ(2012)による再検討では,丹生ノ川層を音無川層群に含めるとともに,竜神層と音無川層群の境界に白亜紀-古第三紀境界(御坊-十津川スラスト)を設定した.本研究の地質調査の結果,本地域の四万十付加体を美山層,竜神層,丹生ノ川層,および音無川層に区分するとともに,竜神層と丹生ノ川層の境界に白亜紀-古第三紀境界を設定することが最善であると判断した.
岩相,地質構造,および陸源砕屑岩の堆積年代:白亜紀四万十付加体の美山層と竜神層は,いずれも砂岩泥岩互層,破断した砂岩泥岩互層,および混在岩からなるが,美山層の混在岩がチャートを含むのに対し竜神層の混在岩がチャートを含まない点で両者の岩相は異なる.古第三紀四万十付加体の丹生ノ川層と音無川層は,いずれも砂岩泥岩互層を主体とするが,丹生ノ川層は巨礫を伴う特徴的な礫岩を含む.
各層には東西走向で北に高角で傾斜するスラストが発達しており,スラストにより岩相が繰り返している.竜神層,丹生ノ川層,および音無川層では数百m間隔でスラストが発達しているのに対し,美山層では数十m~数百m間隔とより細かいスケールでスラストが発達する.各層の境界は,すべてスラストで境されており,各層内部に発達するスラストを明瞭に切っているため,アウトオブシーケンススラスト的性質を持つ.
陸源砕屑岩の堆積年代に関しては,Shimura et al. (2025)がレビューしており,美山層ではコニアシアン期~カンパニアン期,竜神層ではカンパニアン期~ダニアン期,丹生ノ川層ではマーストリヒチアン期~ダニアン期,および音無川層ではイプレシアン期~ルテシアン期に制約でき,構造的上位から下位の地層へ堆積年代が徐々に若返る特徴を有している.
構造発達史:美山層,竜神層,丹生ノ川層,および音無川層は,後期白亜紀~前期始新世にかけての東アジア東縁部における海洋プレート沈み込みによって形成された付加体である.これら地層は,構造的下位の地層ほど陸源砕屑岩の堆積年代(すなわちおおむね付加年代)が若くなっていることから,付加体成長に伴う一般的な年代極性を保持していると判断できる.一方,白亜紀付加体(美山層と竜神層)はメランジュ相に特徴づけられるのに対し,古第三紀付加体(丹生ノ川層と音無川層)はコヒーレント相に特徴づけられ,両者の間では被熱温度がほとんど変わらないにもかかわらず(Awan and Kimura, 1996; Shimura et al., 2025),岩相や構造が大きく異なる.Shimura et al. (2025)は,丹生ノ川層に含まれる礫岩が海嶺の沈み込みによる前弧域の削剥および海溝方向へ巨礫の運搬と堆積によるものであると提案しており,白亜紀付加体と古第三紀付加体では,付加体形成時に沈み込んでいた海洋プレートが切り替わったことが示唆される.これら沈み込むプレートの違いが,四万十付加体の形成モードに影響を及ぼした可能性がある.
文献:Awan and Kimura (1996) Isl. Arc, 5, 69–88; Hashimoto and Kimura (1999) Tectonics, 18, 92–107; はてなし団体研究グループ (2012) 地団研専報, 56, 61–69; 紀州四万十帯団体研究グループ (2006) 地球科学, 60, 355–374; 紀州四万十帯団体研究グループ (2012) 地団研専報, 56, 付図; Shimura et al. (2025) Tectonics, 44, e2024TC008497.
構造層序:紀州四万十帯団体研究グループ(2006)は,「川原河」に分布する四万十付加体を,構造的上位から下位へ,美山層,竜神層,丹生ノ川層,および音無川層群に区分し,丹生ノ川層と音無川層群の境界に白亜紀-古第三紀境界の構造線(御坊-萩構造線)を設定した.その後,はてなし団体研究グループ(2012)や紀州四万十帯団体研究グループ(2012)による再検討では,丹生ノ川層を音無川層群に含めるとともに,竜神層と音無川層群の境界に白亜紀-古第三紀境界(御坊-十津川スラスト)を設定した.本研究の地質調査の結果,本地域の四万十付加体を美山層,竜神層,丹生ノ川層,および音無川層に区分するとともに,竜神層と丹生ノ川層の境界に白亜紀-古第三紀境界を設定することが最善であると判断した.
岩相,地質構造,および陸源砕屑岩の堆積年代:白亜紀四万十付加体の美山層と竜神層は,いずれも砂岩泥岩互層,破断した砂岩泥岩互層,および混在岩からなるが,美山層の混在岩がチャートを含むのに対し竜神層の混在岩がチャートを含まない点で両者の岩相は異なる.古第三紀四万十付加体の丹生ノ川層と音無川層は,いずれも砂岩泥岩互層を主体とするが,丹生ノ川層は巨礫を伴う特徴的な礫岩を含む.
各層には東西走向で北に高角で傾斜するスラストが発達しており,スラストにより岩相が繰り返している.竜神層,丹生ノ川層,および音無川層では数百m間隔でスラストが発達しているのに対し,美山層では数十m~数百m間隔とより細かいスケールでスラストが発達する.各層の境界は,すべてスラストで境されており,各層内部に発達するスラストを明瞭に切っているため,アウトオブシーケンススラスト的性質を持つ.
陸源砕屑岩の堆積年代に関しては,Shimura et al. (2025)がレビューしており,美山層ではコニアシアン期~カンパニアン期,竜神層ではカンパニアン期~ダニアン期,丹生ノ川層ではマーストリヒチアン期~ダニアン期,および音無川層ではイプレシアン期~ルテシアン期に制約でき,構造的上位から下位の地層へ堆積年代が徐々に若返る特徴を有している.
構造発達史:美山層,竜神層,丹生ノ川層,および音無川層は,後期白亜紀~前期始新世にかけての東アジア東縁部における海洋プレート沈み込みによって形成された付加体である.これら地層は,構造的下位の地層ほど陸源砕屑岩の堆積年代(すなわちおおむね付加年代)が若くなっていることから,付加体成長に伴う一般的な年代極性を保持していると判断できる.一方,白亜紀付加体(美山層と竜神層)はメランジュ相に特徴づけられるのに対し,古第三紀付加体(丹生ノ川層と音無川層)はコヒーレント相に特徴づけられ,両者の間では被熱温度がほとんど変わらないにもかかわらず(Awan and Kimura, 1996; Shimura et al., 2025),岩相や構造が大きく異なる.Shimura et al. (2025)は,丹生ノ川層に含まれる礫岩が海嶺の沈み込みによる前弧域の削剥および海溝方向へ巨礫の運搬と堆積によるものであると提案しており,白亜紀付加体と古第三紀付加体では,付加体形成時に沈み込んでいた海洋プレートが切り替わったことが示唆される.これら沈み込むプレートの違いが,四万十付加体の形成モードに影響を及ぼした可能性がある.
文献:Awan and Kimura (1996) Isl. Arc, 5, 69–88; Hashimoto and Kimura (1999) Tectonics, 18, 92–107; はてなし団体研究グループ (2012) 地団研専報, 56, 61–69; 紀州四万十帯団体研究グループ (2006) 地球科学, 60, 355–374; 紀州四万十帯団体研究グループ (2012) 地団研専報, 56, 付図; Shimura et al. (2025) Tectonics, 44, e2024TC008497.
