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[T13-P-18]Distribution and stratigraphy of the forearc basin fills on the Otaki district (1:50,000 quadrangle series), Boso Penincula, central Japan

*Masayuki UTSUNOMIYA1, Taku Komatsubara1, Terumasa Nakajima2, Shuichi Tokuhashi2 (1. Geological Survey of Japan, AIST, 2. Former Researcher of Geological Survey of Japan, AIST)
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Keywords:

forearc basin,Neogene,Quaternary,Geologic map quadrangle series

 房総半島には前弧海盆堆積物である安房層群(中部中新統~鮮新統)と上総層群(鮮新統~更新統)が露出し,古くから本邦上部新生界の模式地の一つとして多くの年代層序学的な研究がなされてきた.また,多くのテフラ鍵層を利用することで堆積システムや地質構造の発達過程など,前弧海盆の発達とその後の隆起・陸化に至る過程が詳細に研究されてきた.5万分の1大多喜地域は房総半島の中央部を占め,これら前弧海盆堆積物の層序や地質構造を理解する上で重要な位置にある.発表者らは既存の地質図である5万分の1油田ガス田図「富津―大多喜」(三梨ほか,1962)や1万5千分の1特殊地質図「清和県民の森」(徳橋・石原,2008)などを参照し,テフラ鍵層の網羅的な記載と側方追跡を行なって,安房層群と上総層群の層序と分布を明らかにして5万分の1地質図を作成した.
大多喜地域の安房層群中部~上部は下位より天津層,清澄層,安野層により構成され,清澄向斜と清澄背斜に規制された分布様式を示す.天津層は主に暗灰色~白色泥岩から成り砂岩層や凝灰岩層が挟在する.天津層には砂勝ち砂岩泥岩互層,砂質泥岩あるいは泥質砂岩が卓越する層準,泥岩中にテフラ層を数多く挟在する層準が認められる.清澄層は主に砂勝ち砂岩泥岩互層から構成されている.砂岩層は一般にタービダイトの一部もしくは全体を構成し,その厚さと挟在頻度は側方に変化し,大多喜地域西部の高宕山周辺より西方では泥岩優勢となる.安野層は下部が泥勝ち砂岩泥岩互層と砂勝ち砂岩泥岩互層から成り,上部は凝灰質砂岩,凝灰質泥質砂岩及び凝灰質砂質泥岩から成る.
上総層群下部は,大多喜地域内を東西に横断するいわゆる黒滝不整合を境に下位の安房層群にアバットし,房総半島西部と東部では中部よりも上総層群下部の地層が厚い.大多喜地域には下位から黒滝層,大原層,黄和田層,大田代層,東日笠層,梅ヶ瀬層,国本層,市宿層,柿ノ木台層,長南層,万田野層,笠森層及び金剛地層が露出し,いずれも整合関係にある.黒滝層は凝灰質で粗粒な岩相から主に成る.安野層と黒滝層の境界には海底地すべり堆積物が広く認められ,その上位を粗粒砂岩層や礫岩層が覆う.地質図では当該海底地すべり堆積物を安野層に帰属させ,露頭で識別が容易な粗粒相の基底を黒滝層の基底すなわち層群境界とした.大原層,大田代層及び梅ヶ瀬層はタービダイト砂岩層の厚さと挟在頻度が変化する砂岩泥岩互層から主に成り,砂岩層の厚さと頻度で岩相区分した.黄和田層は主に泥岩から成り海底地すべり堆積物が挟在する.東日笠層は主に礫岩層から成り梅ヶ瀬層と指交する.国本層は厚い砂岩層を挟む砂勝ち砂岩泥岩互層と砂質泥岩層から成る.市宿層と万田野層は主に斜交層理の発達した砂礫岩層から成る.長南層は主に泥岩層から成るが砂岩層が様々な割合で挟まれる.笠森層は主に砂質泥層と泥質砂層から成り,長南層の砂岩泥岩互層ないし万田野層の砂礫層を覆う.

文献
三梨 昂・矢崎清貫・影山邦夫・島田忠夫・小野 暎・安国 昇・牧野登喜男・品田芳二郎・藤原清丸・鎌田清吉(1962)日本油田・ガス田図4 富津–大多喜(1:50,000).地質調査所.
徳橋秀一・石原与四郎(2008)1万5千分の1千葉県清和県民の森周辺の地質図及び同説明書.特殊地質図 No. 39, 産業技術総合研究所地質調査総合センター, 95p.