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[T13-P-29]Structural Geological Investigation of the Area West of Mount Wakura, Eastern Matsue City, Shimane Prefecture, Japan

*Kenshiro IZUMI1, Hideki MUKOYOSHI1 (1. Shimane University)
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Keywords:

Wakurayama-Fault,igneous rock,Inferred active fault

 はじめに
 島根県松江市東部の和久羅山と嵩山とよばれる2つの山の山あいにおいて,谷の右屈曲を示す東北東走向のリニアメントが認められており(今泉ほか編,2018),リニアメント上において,断層露頭が1地点報告されている(向吉ほか,2024).断層は,噴出年代が約0.8Maの和久羅山デイサイトを切り,活動開始時期は中期更新世ないしそれ以降であると推定されている(向吉ほか,2024).変位センスは,わずかな北落ち正断層成分をもつ右横ずれ変位を示し,変位センス・変位量ともにリニアメントと調和的である(向吉ほか,2024).しかし,和久羅山断層の正確な断層長については,未だ明らかとなっていない.本研究では,和久羅山断層西端の西方において,地形判読と地質調査を行い,和久羅山西方における地質構造の把握と和久羅山断層がどの程度延びているのかを明らかにすることを目的とする.

結果
地形判読・地質調査は,松江市西尾町から西川津町楽山にかけての南北約 1km,東西約 2km四方について行った.地形判読により,谷の右屈曲地形が4か所,北東走向のリニアメントが2本認められた.地質は,砂岩,アルカリ玄武岩,デイサイトが認められる(図1).デイサイトは,暗灰色デイサイト,灰色デイサイト,赤褐色デイサイトの3種類に分けられる.このうち,灰色デイサイトと赤褐色デイサイトについては,薄片を作製したところ,主に斜長石や普通角閃石が認められたため,和久羅山や嵩山周辺の基盤岩の和久羅山デイサイトと判断される(佐藤ほか,2011).リニアメント上の地点Aにおいて,暗灰色デイサイトの貫入を示す露頭が認められた.さらに,同リニアメント上の地点Bにおいて,角礫化した暗灰色デイサイトと赤褐色デイサイトが接する断層露頭の可能性がある露頭が認められた.角礫化している礫には,北落ちを示す定向配列および引きずりの構造が認められた.剪断節理や断層条線,ガウジなどは認められていない.岩相境界の走向はリニアメントの走向と調和的なN70°Eである.この露頭の赤褐色デイサイトの位置は,周囲の赤褐色デイサイトの位置よりも約20m低い.

考察
調査地域では,鹿野ほか(1994)では示されていない暗灰色デイサイト,灰色デイサイト,赤褐色デイサイトが認められたことから,調査地域において,デイサイトマグマの影響を受けていた可能性がある.地点Bの露頭でみられる角礫や礫の定向配列,北落ちを示す引きずり構造は,和久羅山断層の断層露頭と同様の特徴を示す.赤褐色デイサイトの位置が周囲よりも約20m低いことから,約20m変位した可能性があり,変位量についても和久羅山断層と一致する.以上より,地点Bの露頭は和久羅山断層の断層露頭の可能性があり,地点Bが位置するリニアメントは,和久羅山断層により形成されたと推測される.同リニアメント上の地点Aで認められた暗灰色デイサイトは,断層活動により貫入した可能性があり,地点A付近に断層露頭が伏在すると推測される.以上の考察から,和久羅山断層は本研究の調査地域まで延びている可能性がある.

まとめ
本研究では,和久羅山断層西端より西側において,地形判読と地質調査を行った.調査地域では,谷の右屈曲地形が4か所,北東走向のリニアメントが2本認められた.地質については,砂岩,アルカリ玄武岩,暗灰色デイサイト,灰色デイサイト,赤褐色デイサイトが認められる.リニアメント上の地点Bにおいて,和久羅山断層の可能性がある露頭が確認された.同リニアメント上の地点Aでは暗灰色デイサイトが認められ,和久羅山断層の活動により貫入した可能性があり,断層露頭が伏在すると推測される.よって,和久羅山断層は和久羅山西方にまで延びている可能性がある.

引用文献
今泉俊文・宮内崇裕・堤 浩之・中田 高編,2018,「活断層詳細デジタルマップ[新編]」,東京大学出版会,USB メモリ1本,解説書154p.
鹿野和彦・山内靖喜・高安克乙・松浦浩久・豊 遙秋,1994,5 万分の1地質図幅「松江」,地質調査所.
佐藤大介,松本一郎,亀井淳志,2011,島根県松江市,和久羅山デイサイトの岩石記載と全岩化学組成,地質学雑誌,117,439-450.
向吉秀樹・伊藤久敏・太田尚吾・Lakshmanan Sreehari・大平寛人, 2024, 島根県松江市東部,和久羅山山麓に認められる推定活断層沿いの断層露頭,活断層研究,60,1~10.