Presentation Information
[T13-P-30]Geology of the upper Quaternary distributed in Shirahama Town,Himeji City,Hyogo Prefecture,SW Japan
*Motoki MOURI1 (1. The Inspection for the Geological Committee in Okayama(IGCO) secretariat)
Keywords:
Late Quaternary,Holocene,Geology,Shirahama Town,Himeji City,Basal gravel
姫路市白浜町付近の平野部には,上部第四系(本論文中では約12.9万年前~現在までの範囲の地層を指す;兵庫県立人と自然の博物館私信,2023)が分布し,田中ら(1990)や後藤ら(1998)がその実態を記載し,長澤(1997)によって白浜平野の形成史が考察された.本稿では姫路市白浜町付近の上部第四系の層序について既存ボーリング資料のデータや柱状図などをまとめた姫路市史第一巻上(後藤ら,2001)及び第七巻上(後藤ら,1998),植村・加藤(2009)の内容を中心にレビューし,この地域における第四系の地質学的な研究の課題を指摘する.
西播磨地域臨海部の第四系は田中ら(1990)が未固結堆積物として地質学的な実態を記載した.その後,兵庫教育大学地理学研究室による大塩・白浜・広畑平野の地形発達に関する自然地理学的な研究(岡本ら,1997;長澤,1997)がおこなわれた.長澤(1997)では,市域南東部の地形分類図・地形断面図の検討に加え1982年に建設された姫路市立糸引小学校,屋内運動場増築敷地の地質調査によって得られた地質ボーリング結果を基にしたボーリング柱状断面図の作成,珪藻およびプラントオパールのボーリングコア分析がなされ,白浜平野の形成史が考察された.後藤ら(1998,2001)では市史の編纂に際して市域の広域にわたるボーリング資料のデータや柱状図など既存資料がまとめられ,市川低地(田中ら,1990)や上部更新統及び完新統の地形・地質学的な検討が進み,播磨沿海部の第四系層序の対比がなされた.西播磨地域では完新世中期~後期の海面変動に関する資料が蓄積されつつある(村田,2001;植村・加藤,2009).植村・加藤(2009)は市川下流域に形成された姫路平野には沖積層が分布し,その厚さは臨海部で20~30mとした.白浜町に発達する一条の砂州列(白浜砂州)は,白浜小学校で縄文前期海進期(約6000年前)に堆積した後藤ら(1998)の中部泥層(長澤,1997の中部粘土層に相当)が厚さ3mにわたって認められ,上部砂層からは貝化石が産出することから,約6000年前の縄文前期海進期以降の幾度かにわたる海進[縄文後期海進(約3800年前),弥生海進(約2000年前),中世海進(約1000年前)など;岡本ら,1997]によって形成されたものとみられる(長澤,1997).
今後の課題は白浜砂州の構成層と奥山の扇状地(姫路市立糸引小学校創立百周年記念事業実行委員会記念誌発行委員会,1993)をつくる砂礫層の形成時期を明らかにすること(テフラなど年代情報の集積;植村・加藤,2009)やMIS6(リス氷期末の約15万年前)に対比された長澤(1997)の第四系の礫層と後藤ら(1998,2001)の中-上部更新統の砂礫層(植村・加藤,2009の大阪層群相当層)との層序関係に関する検討,広域対比に向けた議論がある.
文献:岡本桂子・長澤祥子・新名祥弘(1997)兵庫教育大学地理学研究室研究報告,兵庫教育大学地理学研究室,第2巻,34-36.姫路市立糸引小学校創立百周年記念事業実行委員会記念誌発行委員会(1993)姫路市立糸引小学校創立百周年記念誌 いとひき,[中井保之ほか],姫路市立糸引小学校,創立百周年記念事業委員会,205-206.兵庫県立人と自然の博物館私信(2023)人と自然の博物館へのお問い合わせについて(回答),兵庫県電子申請共同運営システム(e-ひょうご),兵庫県立人と自然の博物館・生涯学習課.植村善博・加藤茂弘(2009)近畿地方,日本地方地質誌5, 日本地質学会「近畿地方」編集委員会,朝倉書店,9,232-236.後藤博弥・井上剛一・田中眞吾・成瀬敏郎(1998)姫路市史第7巻上自然資料編,姫路市史編集専門委員会,158-200.後藤博弥・井上剛一・田中眞吾・成瀬敏郎・南埜猛・田中智彦・久武哲也(2001)姫路市史第1巻上自然本編,姫路市史編集専門委員会,271-273,274-277,578-579.村田恵子(2001)教育諸学研究論文集,第15巻,117-133.長澤祥子(1997)兵庫教育大学地理学研究室研究報告,兵庫教育大学地理学研究室,第2巻,44-50.田中眞吾・野村亮太郎・井上茂・後藤博弥・井上剛一・東順三・田村憲司(1990)表層地質図および同説明書,土地分類基本調査「播州赤穂・姫路・坊瀬島・寒霞渓」,兵庫県,15-16, 20-21,27-31.
西播磨地域臨海部の第四系は田中ら(1990)が未固結堆積物として地質学的な実態を記載した.その後,兵庫教育大学地理学研究室による大塩・白浜・広畑平野の地形発達に関する自然地理学的な研究(岡本ら,1997;長澤,1997)がおこなわれた.長澤(1997)では,市域南東部の地形分類図・地形断面図の検討に加え1982年に建設された姫路市立糸引小学校,屋内運動場増築敷地の地質調査によって得られた地質ボーリング結果を基にしたボーリング柱状断面図の作成,珪藻およびプラントオパールのボーリングコア分析がなされ,白浜平野の形成史が考察された.後藤ら(1998,2001)では市史の編纂に際して市域の広域にわたるボーリング資料のデータや柱状図など既存資料がまとめられ,市川低地(田中ら,1990)や上部更新統及び完新統の地形・地質学的な検討が進み,播磨沿海部の第四系層序の対比がなされた.西播磨地域では完新世中期~後期の海面変動に関する資料が蓄積されつつある(村田,2001;植村・加藤,2009).植村・加藤(2009)は市川下流域に形成された姫路平野には沖積層が分布し,その厚さは臨海部で20~30mとした.白浜町に発達する一条の砂州列(白浜砂州)は,白浜小学校で縄文前期海進期(約6000年前)に堆積した後藤ら(1998)の中部泥層(長澤,1997の中部粘土層に相当)が厚さ3mにわたって認められ,上部砂層からは貝化石が産出することから,約6000年前の縄文前期海進期以降の幾度かにわたる海進[縄文後期海進(約3800年前),弥生海進(約2000年前),中世海進(約1000年前)など;岡本ら,1997]によって形成されたものとみられる(長澤,1997).
今後の課題は白浜砂州の構成層と奥山の扇状地(姫路市立糸引小学校創立百周年記念事業実行委員会記念誌発行委員会,1993)をつくる砂礫層の形成時期を明らかにすること(テフラなど年代情報の集積;植村・加藤,2009)やMIS6(リス氷期末の約15万年前)に対比された長澤(1997)の第四系の礫層と後藤ら(1998,2001)の中-上部更新統の砂礫層(植村・加藤,2009の大阪層群相当層)との層序関係に関する検討,広域対比に向けた議論がある.
文献:岡本桂子・長澤祥子・新名祥弘(1997)兵庫教育大学地理学研究室研究報告,兵庫教育大学地理学研究室,第2巻,34-36.姫路市立糸引小学校創立百周年記念事業実行委員会記念誌発行委員会(1993)姫路市立糸引小学校創立百周年記念誌 いとひき,[中井保之ほか],姫路市立糸引小学校,創立百周年記念事業委員会,205-206.兵庫県立人と自然の博物館私信(2023)人と自然の博物館へのお問い合わせについて(回答),兵庫県電子申請共同運営システム(e-ひょうご),兵庫県立人と自然の博物館・生涯学習課.植村善博・加藤茂弘(2009)近畿地方,日本地方地質誌5, 日本地質学会「近畿地方」編集委員会,朝倉書店,9,232-236.後藤博弥・井上剛一・田中眞吾・成瀬敏郎(1998)姫路市史第7巻上自然資料編,姫路市史編集専門委員会,158-200.後藤博弥・井上剛一・田中眞吾・成瀬敏郎・南埜猛・田中智彦・久武哲也(2001)姫路市史第1巻上自然本編,姫路市史編集専門委員会,271-273,274-277,578-579.村田恵子(2001)教育諸学研究論文集,第15巻,117-133.長澤祥子(1997)兵庫教育大学地理学研究室研究報告,兵庫教育大学地理学研究室,第2巻,44-50.田中眞吾・野村亮太郎・井上茂・後藤博弥・井上剛一・東順三・田村憲司(1990)表層地質図および同説明書,土地分類基本調査「播州赤穂・姫路・坊瀬島・寒霞渓」,兵庫県,15-16, 20-21,27-31.
