Presentation Information
[T5-O-4]Lithological Characteristics of Chert and Basalt subducting the Japan Trench sampled during the IODP Expedition 405
*Asuka YAMAGUCHI1, Piero Bellanova2, Morgane Brunet3, Yu-Chun Chang4, Charlotte Pizer5, Rina Fukuchi6, Amy Gough7, Uisdean Nicholson7, Hanaya Okuda4, Marianne Conin8, Jamie Kirkpatrick9, Shuichi Kodaira4, Patrick Fulton10, Christine Regalla11, Kohtaro Ujiie12, Lena Maeda4, Natsumi Okutsu4, Scientists IODP Expedition 405 (1. Atmosphere and Ocean Research Institute, the University of Tokyo, 2. RWTH Aachen Univ., 3. IFREMER, 4. JAMSTEC, 5. Univ. Innsbruck, 6. Naruto University of Education, 7. Heriot-Watt Univ., 8. Univ. Lorraine, 9. Univ. Nevada, Reno, 10. Cornell Univ., 11. Northern Arizona Univ., 12. University of Tsukuba)
Keywords:
Japan Trench,drilling,IODP Expedition 405,chert,basalt
沈み込む海洋プレートの最上部は、海洋地殻を構成する玄武岩の上にチャートなどの遠洋性物質が堆積し、その上に海溝充填堆積物が重なる。このような層序は陸上付加体の研究からもよく知られており、海洋プレート層序、または海洋底層序と呼ばれている(Matsuda and Isozaki, 1991, Tectonicsなど)。しかし、海溝軸付近において海洋プレートを玄武岩基盤に達するまで掘削した例は少なく、海溝において実際に沈み込んでいる海洋プレートの岩相や続成作用の実態については不明な点が多い。2024年9月-12月に実施されたIODP第405次航海では、宮城沖日本海溝において、海溝海側斜面のC0026地点およびその西側に位置する海溝陸側斜面先端のC0019地点で掘削が行われた。本講演では、これらの地点から得られた太平洋プレート上のチャートおよび玄武岩の岩相的特徴について報告する。
海溝海側斜面の掘削孔C0026Bでは海底下290 mまで掘削が行われた。この地点の岩相は、上位から順に、オリーブ黒色の珪質ガラス質泥、オリーブ灰色の珪質ガラス質泥、灰黄褐色の珪質泥、黒褐色の粘土、色調縞をもつ粘土およびチャートから構成される。244 mbsf(海底下深度)以深からは黒褐色粘土が産出し、278.6 mbsf 以深では、黒褐色粘土は黒色・暗褐色・褐色・橙色・薄黄色などの色調縞をもつ粘土へと漸移する。さらに深部では、この縞状粘土中に薄黄色のポーセラナイトや、薄黄色から暗赤色の塊状チャートが産出する。船上XRD分析の結果、ポーセラナイトはクリストバライトに富み、チャートは石英に富むことが判明した。粘土とポーセラナイト、ポーセラナイトとチャートはそれぞれcmスケール以下の縞模様を呈しながら漸移しており、色調縞粘土がシリカ続成に伴ってポーセラナイトやチャートへと変化しつつあることを示唆している。同様の岩相は、海溝陸側斜面の掘削孔C0019J (826 mbsf 以深)、および掘削孔C0019K (870.6 m 以深) でも、デコルマ直下から回収されたコアにおいて観察された。
海溝陸側斜面の掘削孔C0019Pでは、玄武岩の最表層にあたる930-946.6 mbsfからコアが回収された。玄武岩類は枕状溶岩、塊状溶岩、ドレライトからなり、枕状溶岩の枕の間には、褐色の結晶質インターピロー石灰岩が産出する。玄武岩類の斑晶は斜長石および単斜輝石からなり、緑色の粘土鉱物、沸石、橙色の鉄水酸化物による変質が認められる。さらに939.1-940.5 mbsfでは、赤褐色から暗赤色を呈する層状の石灰岩、チャート、珪質泥岩からなる堆積岩が玄武岩中に挟在する。玄武岩と石灰岩の境界 (939.1 mbsf) では、上位の玄武岩側に急冷縁が認められ、下位の石灰岩も接触変成を受けていることから、両者の貫入関係が示唆される。堆積岩における石灰岩とチャートの共存は、これらの堆積物が炭酸塩補償深度 (CCD) 以浅の遠洋環境で堆積したことを示しており、そこに玄武岩が貫入していることは、中央海嶺近傍での石灰岩・チャート・珪質泥岩の堆積と玄武岩質マグマの噴出が繰り返された可能性を示唆する。
JTRACKの成果は、これまで不明な点が多かった海溝軸付近における太平洋プレートの実態を明らかにする重要な知見を提供する。今後、チャートおよび玄武岩の鉱物学的・地球化学的解析、物理検層データとの比較、反射断面との対比などを進めていく予定である。
文献:Matsuda, T. and Isozaki, Y. (1991) Tectonics, 10, 475-499.
海溝海側斜面の掘削孔C0026Bでは海底下290 mまで掘削が行われた。この地点の岩相は、上位から順に、オリーブ黒色の珪質ガラス質泥、オリーブ灰色の珪質ガラス質泥、灰黄褐色の珪質泥、黒褐色の粘土、色調縞をもつ粘土およびチャートから構成される。244 mbsf(海底下深度)以深からは黒褐色粘土が産出し、278.6 mbsf 以深では、黒褐色粘土は黒色・暗褐色・褐色・橙色・薄黄色などの色調縞をもつ粘土へと漸移する。さらに深部では、この縞状粘土中に薄黄色のポーセラナイトや、薄黄色から暗赤色の塊状チャートが産出する。船上XRD分析の結果、ポーセラナイトはクリストバライトに富み、チャートは石英に富むことが判明した。粘土とポーセラナイト、ポーセラナイトとチャートはそれぞれcmスケール以下の縞模様を呈しながら漸移しており、色調縞粘土がシリカ続成に伴ってポーセラナイトやチャートへと変化しつつあることを示唆している。同様の岩相は、海溝陸側斜面の掘削孔C0019J (826 mbsf 以深)、および掘削孔C0019K (870.6 m 以深) でも、デコルマ直下から回収されたコアにおいて観察された。
海溝陸側斜面の掘削孔C0019Pでは、玄武岩の最表層にあたる930-946.6 mbsfからコアが回収された。玄武岩類は枕状溶岩、塊状溶岩、ドレライトからなり、枕状溶岩の枕の間には、褐色の結晶質インターピロー石灰岩が産出する。玄武岩類の斑晶は斜長石および単斜輝石からなり、緑色の粘土鉱物、沸石、橙色の鉄水酸化物による変質が認められる。さらに939.1-940.5 mbsfでは、赤褐色から暗赤色を呈する層状の石灰岩、チャート、珪質泥岩からなる堆積岩が玄武岩中に挟在する。玄武岩と石灰岩の境界 (939.1 mbsf) では、上位の玄武岩側に急冷縁が認められ、下位の石灰岩も接触変成を受けていることから、両者の貫入関係が示唆される。堆積岩における石灰岩とチャートの共存は、これらの堆積物が炭酸塩補償深度 (CCD) 以浅の遠洋環境で堆積したことを示しており、そこに玄武岩が貫入していることは、中央海嶺近傍での石灰岩・チャート・珪質泥岩の堆積と玄武岩質マグマの噴出が繰り返された可能性を示唆する。
JTRACKの成果は、これまで不明な点が多かった海溝軸付近における太平洋プレートの実態を明らかにする重要な知見を提供する。今後、チャートおよび玄武岩の鉱物学的・地球化学的解析、物理検層データとの比較、反射断面との対比などを進めていく予定である。
文献:Matsuda, T. and Isozaki, Y. (1991) Tectonics, 10, 475-499.
