Presentation Information
[T5-O-7]Deformation of Plate Boundary Associated with Seamount Subduction and Accretion: A Case Study at Funafuseyama Unit, Mino Belt
*Fuka Takuwa1, Asuka Yamaguchi1, Makoto Otsubo2, Yusuke Shimura2, Hanaya Okuda3 (1. Atmosphere and Ocean Research Institute, The University of Tokyo, 2. Geological Survey of Japan, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 3. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)
Keywords:
Subduction Zone,Seamount,Mino belt
海山の沈み込みは沈み込み型プレート境界における地震発生プロセスに大きな影響を与える。これまでの測地学・地震学的観測では、沈み込むプレートの表面形状が平滑な領域ではプレート間のカップリングが強くなり大地震が発生しやすい一方で、凹凸のある領域では、プレート間のカップリングが弱くなりクリープやスロー地震が促進されることが示されている(Wang & Bilek, 2014)。数値モデル研究では、沈み込む海山が上盤プレートの塑性変形を引き起こし、複雑な亀裂ネットワークを形成して流体の動きを促進するモデルが提案されている(Sun et al., 2020; Chesley et al., 2021)。しかし、地球物理学的観測や数値モデリングに比べ地質学的な研究はまだ限られており、海山沈み込み・付加に伴う変成・変形プロセスや応力分布、それらが地震に与える影響については未解明の部分が多い。
そこで本研究は、岐阜県根尾地域に分布する美濃帯舟伏山ユニット(脇田, 1991)に着目した。本ユニットは海洋プレート内火成活動で形成された玄武岩とそれに伴う石灰岩を含んでおり(Ichiyama et al., 2008; Sano, 1988)、沈み込んだ海山の付加によって形成されたとみなされる。我々は、特に、玄武岩が卓越し、付加した海山本体に相当すると考えられる根尾川流域水鳥谷支流のヌクミ谷に着目し、ルートマップやスケッチを作成した。カタクレーサイトの試料から研磨片・薄片を作成し、μXRFで化学組成マッピングを行った。また、小断層(Yamaji, 2000; Yamaji et al., 2006)および鉱物脈の方位データ(Yamaji and Sato, 2011; Yamaji, 2016)を用いて応力逆解析を実施した。
ヌクミ谷では、厚さ約1.3 kmの玄武岩が川沿いや林道沿いに連続して露出していた。泥岩基質中の炭質物に対するラマン分光分析の結果、最高被熱温度は約270℃と推定された。連続した玄武岩の基底部には、チャート、石灰岩、玄武岩、泥岩が複雑に変形した厚さ48 mの剪断帯が存在した。この剪断帯では、チャートと石灰岩のブロックは比較的変形が弱い一方、玄武岩は顕著な変形を受け、泥岩と互層する面状カタクレーサイトを形成していた。玄武岩ブロック内部も強く破砕されている部分が確認された。研磨片および薄片のμXRF観察の結果、変形機構は圧力溶解と脆性破壊がともに起こっていると考えられる。これらの結果から、海山付加時の変形は巨視的には玄武岩と泥岩の境界に局所化するものの、その内部では変形は分散すること、メートル以下のスケールでは玄武岩および泥岩内部で剪断歪が大きく、チャートおよび石灰岩では比較的小さいことが明らかとなった。
また、応力逆解析の結果、予察的には、小断層は応力比が大きい、すなわち最大主応力(σ1)と中間主応力(σ2)が近い応力場のもとで形成された一方、鉱物脈は応力比が小さい、すなわち中間主応力(σ2)と最小主応力(σ3)が近い応力場のもとで形成された可能性が高いことが判明した。今後、小断層・鉱物脈の測定数を増やすとともに、切断関係から応力場とその変遷についても検討する予定である。
文献
Chesley et al. (2021) Nature, 595, 255–260.
Ichiyama et al. (2008) Lithos, 100, 127–146.
Sano (1988) J. Geol. Soc. Japan, 94, 963–976.
Sun et al. (2020) Nat. Geosci., 13, 249–255.
脇⽥(1991) 1/5万地質図幅「谷汲」
Wang & Bilek (2014) Tectonophysics, 610, 1–24.
Yamaji (2000) J. Struct. Geol., 22, 441–452.
Yamaji (2016) Island Arc, 25, 72–83.
Yamaji et al. (2006) J. Struct. Geol., 28, 980–990.
Yamaji & Sato (2011) J. Struct. Geol., 33, 1148–1157.
そこで本研究は、岐阜県根尾地域に分布する美濃帯舟伏山ユニット(脇田, 1991)に着目した。本ユニットは海洋プレート内火成活動で形成された玄武岩とそれに伴う石灰岩を含んでおり(Ichiyama et al., 2008; Sano, 1988)、沈み込んだ海山の付加によって形成されたとみなされる。我々は、特に、玄武岩が卓越し、付加した海山本体に相当すると考えられる根尾川流域水鳥谷支流のヌクミ谷に着目し、ルートマップやスケッチを作成した。カタクレーサイトの試料から研磨片・薄片を作成し、μXRFで化学組成マッピングを行った。また、小断層(Yamaji, 2000; Yamaji et al., 2006)および鉱物脈の方位データ(Yamaji and Sato, 2011; Yamaji, 2016)を用いて応力逆解析を実施した。
ヌクミ谷では、厚さ約1.3 kmの玄武岩が川沿いや林道沿いに連続して露出していた。泥岩基質中の炭質物に対するラマン分光分析の結果、最高被熱温度は約270℃と推定された。連続した玄武岩の基底部には、チャート、石灰岩、玄武岩、泥岩が複雑に変形した厚さ48 mの剪断帯が存在した。この剪断帯では、チャートと石灰岩のブロックは比較的変形が弱い一方、玄武岩は顕著な変形を受け、泥岩と互層する面状カタクレーサイトを形成していた。玄武岩ブロック内部も強く破砕されている部分が確認された。研磨片および薄片のμXRF観察の結果、変形機構は圧力溶解と脆性破壊がともに起こっていると考えられる。これらの結果から、海山付加時の変形は巨視的には玄武岩と泥岩の境界に局所化するものの、その内部では変形は分散すること、メートル以下のスケールでは玄武岩および泥岩内部で剪断歪が大きく、チャートおよび石灰岩では比較的小さいことが明らかとなった。
また、応力逆解析の結果、予察的には、小断層は応力比が大きい、すなわち最大主応力(σ1)と中間主応力(σ2)が近い応力場のもとで形成された一方、鉱物脈は応力比が小さい、すなわち中間主応力(σ2)と最小主応力(σ3)が近い応力場のもとで形成された可能性が高いことが判明した。今後、小断層・鉱物脈の測定数を増やすとともに、切断関係から応力場とその変遷についても検討する予定である。
文献
Chesley et al. (2021) Nature, 595, 255–260.
Ichiyama et al. (2008) Lithos, 100, 127–146.
Sano (1988) J. Geol. Soc. Japan, 94, 963–976.
Sun et al. (2020) Nat. Geosci., 13, 249–255.
脇⽥(1991) 1/5万地質図幅「谷汲」
Wang & Bilek (2014) Tectonophysics, 610, 1–24.
Yamaji (2000) J. Struct. Geol., 22, 441–452.
Yamaji (2016) Island Arc, 25, 72–83.
Yamaji et al. (2006) J. Struct. Geol., 28, 980–990.
Yamaji & Sato (2011) J. Struct. Geol., 33, 1148–1157.
