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[T4-O-19]Euhedral calcite, barite and frictional heating in shallow depth of the Neodani Fault Zone

*Tomoyuki OHTANI1, Tsuyoshi Maeda2, Takumi Yoshida2 (1. Gifu University, 2. Graduate School, Gifu University)
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Keywords:

the Neodani Fautl,shallow depth,frictional heating

 断層の極浅部における地震時の摩擦発熱を明らかにするために、1891年に濃尾地震を引き起こした根尾谷断層の地表から深度400 mまでを対象として、最新すべり面とその周囲における特徴を主にSEM-BSE像観察、EPMA分析により明らかにした。その結果、自形方解石とバライトが認められ、これらは摩擦発熱に起因して生じたと考えられる。根尾谷断層では、近年、岐阜県本巣市根尾水鳥と根尾長嶺においてボーリング掘削が原子力規制庁により行われた。各地点で複数のボーリング掘削が行われ、これらは根尾水鳥では深度85 mと382 m、根尾長嶺では深度17 mと68 mで分布の連続性と直線性から認定した最新すべり面を貫いている。他に最新すべり面の候補となる断層ガウジ帯が見あたらないことから、濃尾地震を含めて最近の地震ではここですべりを生じた可能性が高い。加えて根尾長嶺では地表露頭でも最新すべり面が認められる。いずれの地点でも原岩は美濃帯付加コンプレックスの泥岩基質メランジュであり、根尾水鳥ではチャートと玄武岩がブロックとして含まれている。最新すべり面及びその近傍の断層ガウジをSEMやEPMAにより詳細に観察・分析し、鉱物の分布と形状を確認した。その結果、根尾水鳥の深度382 mでは最新すべり面の近傍にCaの濃集が生じていることが明らかとなった。最新すべり面ではCaの分布は局所的であり、亜円形を示す。最新すべり面に隣接する断層ガウジでは、Caを含む鉱物脈が認められ、ここでは主として粒径数μmの多数の方解石とフラグメント化した石英等やガウジの基質を含んでいる。また、この方解石の一部は弱い自形性を示している。加えて、細粒方解石とフラグメント化した石英が最新すべり面から離れた側から最新すべり面近傍の断層ガウジに貫入するような産状を示す。根尾長嶺では最新すべり面の分布が不明瞭であるものの、最新すべり面かその近傍のいずれかでバライト(硫酸バリウム)が見いだされた。バライトの産状は亀裂内に分布、放射状、鉱物脈のいずれかである。これらの形成過程として、細粒の自形方解石、バライトともに溶解度の急激な変化に伴う形成が示唆される。この原因として、地震性すべりに伴ってthermal pressurizationによる温度と間隙水圧の上昇、その後の急激な低下が生じたと考えられる。観察対象の最新すべり面のうちもっとも深い深度382 mに分布する自形方解石は最新すべり面の西側に分布しており、根尾谷断層でこれまでに生じた変位が濃尾地震のときと常に同様であると仮定をすると相対的に沈降することとなり、断層変位に伴う深部からの上昇は生じない。また、現状の谷地形の形成を考えると、最大の浸食量として約1 kmが見積もられるため、ここで考えられる現象は1.4 kmより浅い深度で生じたと推定される。よって、これらの自形方解石とバライトが濃尾地震以前の地震に伴って生じた場合であっても、その形成深度は現在と大きく変わらないと推測され、根尾谷断層の極浅部においてthermal pressurization による温度と間隙水圧の上昇、さらには摩擦係数の低下が生じたと考えられる。