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[T7-O-13]Carbonate and iron deposits in sedimentary sequence during Sturtian glaciation

Shun Noda1, Shiori Yabe1, *Akihiro Kano1 (1. The University of Tokyo)
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Keywords:

Neoproterozoic,carbonate,iron deposits,Snowball Earth

 1960年代に提示された1次元エネルギーバランスモデルによると,1)氷が緯度40度程度に張り出すと,アイスアルベドフィードバックにより急速に寒冷化が進行し,地表全体が雪氷に覆われるようになる。2)地表が白い雪氷に覆われるため,太陽光の大半が宇宙空間へと反射され,3) 厚さ1000m程度に発達した長期間(数100〜1000万年間)安定する。その間,4)火成活動により放出されたCO2が風化作用と光合成が停止したため,大気−海洋系に蓄積する。5) 大気のCO2濃度が閾値(0.1気圧程度)に達すると氷が低緯度から一気に(2000年間程度で)融解する。そのため,6)第四紀のように太陽放射強制力の変動で氷期/間氷期を繰り返すことはない。この1次元モデルにより予測される全球凍結の過程は「氷期中の生命の存続」に関する大問題を含むが,60年後の現在も変更されていない。ところが,2010年代後半から,上記過程では説明できない地質学的証拠が新原生代のスターチアン氷期(717~660Ma)とマリノアン氷期(645?~635Ma)の堆積物から提示されてきた。それらは藻類化石(Ye et al., 2015),黒色頁岩,鉄質堆積物(Johnson et al., 2017; Song et al., 2023),炭酸塩岩(Hood et al., 2022; Zhu et al., 2024)などであり,氷期に光合成があり,酸素とアルカリ度を海洋に供給するプロセスが働いていたことになる。そこで,単純な1次元モデルの見直しに加え,接氷面沿いに起こる酸化的淡水の流入や,赤道域における氷の部分的融解が検討されている。本研究ではスターチアン氷期の堆積物を紹介し,その中に含まれる炭酸塩岩と鉄質堆積物について報告する。研究対象である南オーストラリアの地層が発達するアデレード地向斜は新原生代のリフト帯であり,クライオジェニア紀の短い間氷期(1500万年間)に約3000mの堆積シークエンスが発達した。その前のスターチアン氷期に発達した氷礫岩・砂岩・頁岩を主体とした氷期のシークエンスも総厚数100mに達する。氷期シークエンスに見られる鉄質堆積物は頁岩と共在することが多く,鉄に富む部分が葉理状に発達することが多く,炭酸塩に富む部分と数10cmのスケールで互層することもあり,ミランコビッチサイクルに関連した第四紀型の氷期/間氷期変動である可能性も指摘されている(Hood et al., 2022)。また,鉄質堆積物は氷礫岩中にも認められ,氷砕屑物のとともに酸素が海洋に供給したと考えられる。これを説明できるのは接氷面沿いに起こる淡水流入であり,氷床に含まれる酸素が火成活動で蓄積した鉄イオンと結合した。炭酸塩岩はミクライト質であり,炭素同位体比は–1〜–4‰であり,下位の炭酸塩岩よりも明らかに低いので,氷砕屑物に含まれる炭酸塩岩の破片ではない。ただし,上位のキャップカーボネートよりは低く,海水の溶存炭酸がマントルの値により十分緩衝されていない。あるいは,部分的な開氷域でのガス交換や光合成の影響かもしれない。酸素同位体比は比較的高く,水温がまだ低い時に沈殿したものと思われる。

引用文献Johnson et al., 2017, Communications, 8(1), 131; Hood et al., 2021, Geobiology, 20(2), 175-193; Song et al., 2023, Nature Communications, 14(1), 1564; Ye et al., 2015, Geology, 43(6), 507-510; Zhu et al., 2024, Geological Society of America Bulletin, 136(9-10), 4050-4058.