Presentation Information
[T7-O-17]Sedimentological processes of organic matter in the Bengal Fan revealed by chemosedimentary sequence
*Yusuke KODAMA1, Takuto ANDO2, Ken SAWADA1,3 (1. Department of Natural History Sciences, Graduate school of Science, Hokkaido University, 2. Department of Earth Resource Science, Faculty of International Resource Sciences, Akita University, 3. Department of Earth and Planetary Sciences, Faculty of Science, Hokkaido University)
Keywords:
Bengal Fan,Terrestrial plant-derived terpenoid,Chemosedimentary sequence,Turbidite,IODP
インド洋北東部のベンガル湾には、主にヒマラヤ山脈やチベット高原の隆起に伴う多量の砕屑物がガンジス川・ブラマプトラ川水系によって流入しており、地球上で最大の海底扇状地であるベンガルファンが形成されている(Curray et al., 2002)。海底扇状地は洪水流や地震等に起因するタービダイトによって主に構成されており、陸源有機物が濃集する例が知られている(Baudin et al., 2010; Biscara et al., 2011)。そのため、ベンガルファンには陸域から輸送された多量の陸上植物由来の有機物が貯蔵されていると考えられており、炭素を貯蔵する場として重要な役割を担っていることが示唆されている(Galy et al., 2007)。本研究では、ベンガルファン堆積物に含まれるバイオマーカー(生物指標分子)の深度プロファイルデータを用いて化学堆積学シーケンス解析を行い、混濁流による有機物の輸送・堆積過程を評価した。
本研究では、ベンガル湾にて実施された国際深海科学掘削計画(IODP) Exp. 353で掘削されたSite U1444のコア試料を用いた。微化石層序から、コアの最下部は約6Maと推定される。U1444Aコアは、大きく分けて4つの堆積相からなる。Unit 1は多様な層厚のタービダイトが含まれるシルト質砂とシルト質粘土、Unit 2は薄いタービダイトが含まれる粘土、Unit 3はコア回収率が悪いがシルト質砂と粘土質シルト、Unit 4は薄いタービダイトを含むシルト質粘土から構成される。本研究では、U1444Aコアのタービダイト層(シーケンス)を粗粒層とその直下・直上の細粒層(直下:半遠洋性泥層(Hemipelagite)、直上:基本的にタービダイト性泥層(Tmud))に分けて採取して分析した。堆積物コア試料のスメアスライドを作成し、顕微鏡観察によって構成粒子の粒度や組成を求めた。また、凍結乾燥・粉砕した堆積物試料をバイオマーカー分析した。
スメアスライド観察の結果、堆積物には石英や長石といった鉱物に加え、石灰質ナノ化石や有孔虫化石、木片がおもに含まれていることがわかった。微化石はHemipelagiteで多く、粗粒層とTmudでは鉱物の割合が高い傾向を示した。また、鉱物の粒度は粗粒層とHemipelagiteとの差が堆積シーケンスごとに多様であった。バイオマーカー分析の結果、堆積物試料からはステロイドや陸上植物由来のテルペノイドが検出された。C27ステロイドは主に海生藻類由来であり、C29ステロイドは主に陸上植物に由来するため、C29/(C29+C27)ステロイド比は陸源流入指標として用いられる。植物テルペノイドは、マングローブに由来するタラキセロール(Taraxerol)が特徴的に高い割合で検出された。ベンガルファンを構成する砕屑物の主要な供給源であるガンジス川・ブラマプトラ川水系は河口部に大規模なマングローブ林が形成されており、タラキセロールの検出は後背地植生を反映していると考えられる。Unit 1のタービダイトシーケンスにおいて植物テルペノイドの濃度・組成はほとんど変動しなかったが、C29/(C29+C27)ステロイド比は粗粒層でのみ高い値を示した。Unit 2とUnit 4のシーケンスでは、直下のHemipelagiteよりも粗粒層や直上のTmudで植物テルペノイド濃度やC29/(C29+C27)ステロイド比が高い傾向が見られた。タービダイトシーケンスの粗粒層と直上のTmudにおける陸源流入指標の増加は、ベンガルファンにおいて混濁流により陸域や沿岸域から陸源物質が直接的・効率的に輸送されていたことを示唆するものである。一方、一部のシーケンスでは粗粒層の方が直下・直上の細粒層よりも低い植物テルペノイド濃度やC29/(C29+C27)ステロイド比を示した。加えて、粗粒層では被子植物の主に葉に由来するトリテルペノイドがかなり低い割合であったのに対し、針葉樹由来のジテルペノイドであるデヒドロアビエチン酸(DAA)が顕著に高い割合で検出された。この結果は、一度堆積した植物組織のうち、分解されにくい材(木片)に含まれるDAAが選択的に保存され、海底地すべり等によってU1444サイトに再堆積したことを示していると推察した。
参考文献
Baudin, F. et al. (2010) Marine and Petroleum Geology 27, 995–1010.
Biscara, L.et al. (2011) Marine and Petroleum Geology 28, 1061–1072.
Curray, J.R. et al. (2002) Marine and Petroleum Geology 19, 1191–1223.
Galy, V. et al. (2007) Nature 450, 407–410.
本研究では、ベンガル湾にて実施された国際深海科学掘削計画(IODP) Exp. 353で掘削されたSite U1444のコア試料を用いた。微化石層序から、コアの最下部は約6Maと推定される。U1444Aコアは、大きく分けて4つの堆積相からなる。Unit 1は多様な層厚のタービダイトが含まれるシルト質砂とシルト質粘土、Unit 2は薄いタービダイトが含まれる粘土、Unit 3はコア回収率が悪いがシルト質砂と粘土質シルト、Unit 4は薄いタービダイトを含むシルト質粘土から構成される。本研究では、U1444Aコアのタービダイト層(シーケンス)を粗粒層とその直下・直上の細粒層(直下:半遠洋性泥層(Hemipelagite)、直上:基本的にタービダイト性泥層(Tmud))に分けて採取して分析した。堆積物コア試料のスメアスライドを作成し、顕微鏡観察によって構成粒子の粒度や組成を求めた。また、凍結乾燥・粉砕した堆積物試料をバイオマーカー分析した。
スメアスライド観察の結果、堆積物には石英や長石といった鉱物に加え、石灰質ナノ化石や有孔虫化石、木片がおもに含まれていることがわかった。微化石はHemipelagiteで多く、粗粒層とTmudでは鉱物の割合が高い傾向を示した。また、鉱物の粒度は粗粒層とHemipelagiteとの差が堆積シーケンスごとに多様であった。バイオマーカー分析の結果、堆積物試料からはステロイドや陸上植物由来のテルペノイドが検出された。C27ステロイドは主に海生藻類由来であり、C29ステロイドは主に陸上植物に由来するため、C29/(C29+C27)ステロイド比は陸源流入指標として用いられる。植物テルペノイドは、マングローブに由来するタラキセロール(Taraxerol)が特徴的に高い割合で検出された。ベンガルファンを構成する砕屑物の主要な供給源であるガンジス川・ブラマプトラ川水系は河口部に大規模なマングローブ林が形成されており、タラキセロールの検出は後背地植生を反映していると考えられる。Unit 1のタービダイトシーケンスにおいて植物テルペノイドの濃度・組成はほとんど変動しなかったが、C29/(C29+C27)ステロイド比は粗粒層でのみ高い値を示した。Unit 2とUnit 4のシーケンスでは、直下のHemipelagiteよりも粗粒層や直上のTmudで植物テルペノイド濃度やC29/(C29+C27)ステロイド比が高い傾向が見られた。タービダイトシーケンスの粗粒層と直上のTmudにおける陸源流入指標の増加は、ベンガルファンにおいて混濁流により陸域や沿岸域から陸源物質が直接的・効率的に輸送されていたことを示唆するものである。一方、一部のシーケンスでは粗粒層の方が直下・直上の細粒層よりも低い植物テルペノイド濃度やC29/(C29+C27)ステロイド比を示した。加えて、粗粒層では被子植物の主に葉に由来するトリテルペノイドがかなり低い割合であったのに対し、針葉樹由来のジテルペノイドであるデヒドロアビエチン酸(DAA)が顕著に高い割合で検出された。この結果は、一度堆積した植物組織のうち、分解されにくい材(木片)に含まれるDAAが選択的に保存され、海底地すべり等によってU1444サイトに再堆積したことを示していると推察した。
参考文献
Baudin, F. et al. (2010) Marine and Petroleum Geology 27, 995–1010.
Biscara, L.et al. (2011) Marine and Petroleum Geology 28, 1061–1072.
Curray, J.R. et al. (2002) Marine and Petroleum Geology 19, 1191–1223.
Galy, V. et al. (2007) Nature 450, 407–410.
