Presentation Information
[T7-O-19]Reconstruction of depositional environment by biomarker analysis during the Coniacian-Santonian in the Haborogawa Formation, Yezo Group, Hokkaido
*Atsushi TAKAHASHI1, Hideto Nakamura2, Masashi A. Ikeda3, Takuto Ando4, Ken Sawada3, Reishi Takashima5, Hiroshi Nishi2 (1. Graduate school of science, Hokkaido University, 2. Faculty of Dinosaur Paleontology, Fukui Prefectural University, 3. Faculty of Science, Hokkaido University, 4. Graduate School of International Resource Sciences Faculty of International Resource Sciences, Akita University, 5. The Tohoku University Museum)
Keywords:
Cretaceous,Yezo Group,Biomarker,Paleoenvironment
北海道中軸部を南北に貫くように分布する蝦夷層群は、前期白亜紀から古第三紀にかけてアジア大陸東縁部の前弧海盆で堆積した地層で、陸源砕屑物に富み、非常に早い堆積速度を誇ることから当時の北西太平洋の海洋環境だけでなくアジア大陸東部の陸域古環境の復元も行われてきた(Takashima et al., 2024)。蝦夷層群の大部分は大陸斜面で形成された半遠洋性堆積物である一方、一部は外側陸棚から河川にかけた、より浅海域での堆積物で構成されており、岩相の変化が激しい(Takashima et al., 2019)。本研究では、コニアシアンからサントニアン期に大陸斜面から外側陸棚にかけて堆積したとされる羽幌川層堆積岩試料を対象にバイオマーカー分析を行い、堆積環境の復元と堆積場の変化が有機物組成に与える影響を評価した。
試料には北海道苫前地域の古丹別川沿いに分布する蝦夷層群羽幌川層の堆積岩試料を用いた。有機溶媒抽出によりバイオマーカーを抽出し、シリカゲルカラムで分画した後、ガスクロマトグラフ質量分析計で測定し、脂肪族・芳香族炭化水素の成分を分析した。
検出されたステラン、ホパンの異性体比から本試料に含まれる有機物は熱による影響の小さい未熟成な試料(ビトリナイト反射率で約0.4%;褐炭~亜瀝青炭)であることを確認した。また堆積環境の酸化還元指標であるPr/Ph比、有機物の陸/海洋起源比を示すC27/C29ステラン比を用いた堆積環境の指標からは、Takashima et al. (2019)における岩相のサブユニットHa-1からHa-4にかけての岩相の違いとバイオマーカー指標における堆積環境の変化との関連性は見いだされず、概して酸化的で陸源有機物の寄与が高い堆積場であったことが示された。この結果は、セノマニアンからチューロニアン期における大陸斜面で堆積したとされる蝦夷層群佐久層における先行研究(Ando et al., 2017)の大曲沢セクションでの結果と似た傾向を示しており、蝦夷海盆における堆積場が中期白亜紀から後期白亜紀にかけて変化が少なかったことが推察される。一方で、砂質シルト~中粒砂岩で構成されるサブユニットHa-5においては下層と比較してバイオマーカー指標は還元的な値を示し、Ando et al. (2017)における厚いチャネル礫岩、粗粒砂岩が卓越する朱鞠内川セクションの結果と似た値を示した。この結果は堆積場が大陸斜面から外側陸棚へと遷移していく中で堆積場の酸化還元環境が変化したか、または堆積場に運搬される砕屑物の供給源が変化した可能性が考えられる。
[引用文献]
Ando et al., 2017. Island Arc, 26, e12178.
Takashima et al., 2019. Newsletters on Stratigraphy, 52(3), 341-376.
Takashima et al., 2024. Communnications Earth and Environment, 5, 85.
試料には北海道苫前地域の古丹別川沿いに分布する蝦夷層群羽幌川層の堆積岩試料を用いた。有機溶媒抽出によりバイオマーカーを抽出し、シリカゲルカラムで分画した後、ガスクロマトグラフ質量分析計で測定し、脂肪族・芳香族炭化水素の成分を分析した。
検出されたステラン、ホパンの異性体比から本試料に含まれる有機物は熱による影響の小さい未熟成な試料(ビトリナイト反射率で約0.4%;褐炭~亜瀝青炭)であることを確認した。また堆積環境の酸化還元指標であるPr/Ph比、有機物の陸/海洋起源比を示すC27/C29ステラン比を用いた堆積環境の指標からは、Takashima et al. (2019)における岩相のサブユニットHa-1からHa-4にかけての岩相の違いとバイオマーカー指標における堆積環境の変化との関連性は見いだされず、概して酸化的で陸源有機物の寄与が高い堆積場であったことが示された。この結果は、セノマニアンからチューロニアン期における大陸斜面で堆積したとされる蝦夷層群佐久層における先行研究(Ando et al., 2017)の大曲沢セクションでの結果と似た傾向を示しており、蝦夷海盆における堆積場が中期白亜紀から後期白亜紀にかけて変化が少なかったことが推察される。一方で、砂質シルト~中粒砂岩で構成されるサブユニットHa-5においては下層と比較してバイオマーカー指標は還元的な値を示し、Ando et al. (2017)における厚いチャネル礫岩、粗粒砂岩が卓越する朱鞠内川セクションの結果と似た値を示した。この結果は堆積場が大陸斜面から外側陸棚へと遷移していく中で堆積場の酸化還元環境が変化したか、または堆積場に運搬される砕屑物の供給源が変化した可能性が考えられる。
[引用文献]
Ando et al., 2017. Island Arc, 26, e12178.
Takashima et al., 2019. Newsletters on Stratigraphy, 52(3), 341-376.
Takashima et al., 2024. Communnications Earth and Environment, 5, 85.
