Presentation Information
[T13-O-12]Stratigraphy, geological age and depositional process of the Upper Jurassic-Lower Cretaceous Birafu Formation in the Monobe area, Kochi Prefecture, Japan
*Yoshihiro MORINO1 (1. Pacific Consultants Co.,Ltd.)
Keywords:
Birafu Formation,Torinosu-type limestone,Jurassic −Cretaceous boundary
1.はじめに
高知県物部地域(香美市土佐山田~香北町にかけての物部川南方)に分布する美良布層(森野ほか,1989;香西ほか,2004:再定義)は,おもに砂岩,泥岩からなり礫岩や鳥巣式石灰岩を含んでいる.香西ほか(2004)では,砕屑岩(一部凝灰質)から産出した放散虫化石や二枚貝化石などをもとに,この地層の年代をOxfordian~Berriasianとしたことから,ジュラ紀白亜紀境界の地層として注目されている.一方この地層に含まれる石灰岩について,森野(1993)は,当該地域の西の川左岸側斜面上において厚さ約20mの鳥巣式石灰岩を含む砕屑岩-石灰岩層序を記載し,下位の砕屑岩層からの産出化石(植物根,汽水生・浅海生二枚貝類,巻貝類)や石灰岩の岩相やサンゴ・海綿化石などの産出から,この層序は陸域から汽水域を経て浅海域への堆積環境の変化が読み取れ,当時の海進を反映して形成されたものとした.その後近年までの調査で,この西の川流域(河床,左岸側支沢斜面)及び西側に隣接する十字谷流域より,同様の層序をもつ,あるいは同一層準と推定される石灰岩体がいくつか確認されたことから,改めて美良布層の層序を確立し、その年代と形成過程について考察する.
2.美良布層の層序
美良布層の模式地は,香美市香北町小川の西の川沿いの河床で,層厚は約600mである.岩相より下部,中部,上部,最上部に区分し,層序と香西ほか(2004)で区分された6部層との関係を示す.
下部層:塊状泥岩主体で砂岩,礫岩を含む.礫岩は横方向に層厚が変化することからチャネル性堆積物と考えられる.香西ほか(2004)のA1,A2,A3部層に相当する.
中部層:塊状泥岩,砂岩泥岩互層が主体であるが,石灰岩を2層準挟むことが特徴である.香西ほか(2004)のB1部層に相当する.
上部層:泥岩主体(特に葉理の発達した泥岩,生物擾乱泥岩)で上位に向かって厚層のタービダイト性砂岩が重なり,その上位に砂岩,石灰岩の異地性岩体を含む.香西ほか(2004)のB2部層に相当する.
最上部層:泥岩主体で,香西ほか(2004)のC部層に相当する.
3.美良布層の堆積環境および形成過程
美良布層はおもに泥岩,砂岩で構成される.泥岩はその堆積構造から,塊状泥岩,葉理の発達した層状泥岩,生物擾乱の発達した泥岩からなる.砂岩はタービダイト性砂岩が主体で,底面には流痕(フルートキャスト)や水平方向の生痕が認められ,平行葉理の発達する部分もある.構成岩類や堆積構造などから陸棚(外側陸棚)あるいはそれ以深の堆積環境と推定される.
一方で西の川流域の美良布層中には石灰岩を含む地層が3層準認められる.上部層のそれは,産状から異地性岩体とみなされる.これに対し中部層では石灰岩体が2層準認められ,いずれの岩体も下位の砕屑岩と漸移関係にあり,植物片に富む砕屑岩からは,汽水生および浅海生の二枚貝,巻貝を多産する(香西ほか,2004).森野(1993)の砕屑岩-石灰岩層序における,砕屑岩の岩相変化は,下位より礫岩層,粘土層や炭層,植物根化石を含む砂岩層,汽水生・浅海生二枚貝・巻貝化石を含む砂質泥岩層,そして石灰岩が重なる.さらにこれまでの調査により,この層序の最下部の礫岩は塊状泥岩の上に直接重なることが観察されたことから,その堆積環境の変化は,陸棚域からの急激な海退とそれに続く海進期の陸域(河川),汽水域そして浅海成石灰岩の形成であると推定される.このことは美良布層形成期間内に大規模な海退-海進が少なくとも2回あったものと位置づけられる.
4.美良布層の年代
香西ほか(2004)では,本層中の泥岩や酸性凝灰岩などから産出する放散虫化石から,Kilinora spiralis 群集帯,Loopus primitivus 群集帯,Pseudodictyomitra carpatica 群集帯の存在が確認され,下部層をOxfordian~Tithonian,中部層~上部層をBerriasianとし,その上限については最上部層の年代はValanginian後期には及ばないとしている.また,近年砕屑性ジルコンのU-Pb年代測定が行われており(Ikeda et al,2016, 長谷川ほか,2020),得られた年代についても新たに確立した層序をもとに整理する.
参考文献
長谷川遼ほか,2020,地学雑誌,129,397-421.
Ikeda,T.,et al,2016, Mem. Fukui Prefectural Dinosaur Museum 15,33-84.
香西武ほか,2004,大阪微化石研究会誌,no.13,149-165.
森野善広,1993,地質雑,99,173-183.
森野善広ほか,1989,高知大学学術研究報告,38,73-83.
高知県物部地域(香美市土佐山田~香北町にかけての物部川南方)に分布する美良布層(森野ほか,1989;香西ほか,2004:再定義)は,おもに砂岩,泥岩からなり礫岩や鳥巣式石灰岩を含んでいる.香西ほか(2004)では,砕屑岩(一部凝灰質)から産出した放散虫化石や二枚貝化石などをもとに,この地層の年代をOxfordian~Berriasianとしたことから,ジュラ紀白亜紀境界の地層として注目されている.一方この地層に含まれる石灰岩について,森野(1993)は,当該地域の西の川左岸側斜面上において厚さ約20mの鳥巣式石灰岩を含む砕屑岩-石灰岩層序を記載し,下位の砕屑岩層からの産出化石(植物根,汽水生・浅海生二枚貝類,巻貝類)や石灰岩の岩相やサンゴ・海綿化石などの産出から,この層序は陸域から汽水域を経て浅海域への堆積環境の変化が読み取れ,当時の海進を反映して形成されたものとした.その後近年までの調査で,この西の川流域(河床,左岸側支沢斜面)及び西側に隣接する十字谷流域より,同様の層序をもつ,あるいは同一層準と推定される石灰岩体がいくつか確認されたことから,改めて美良布層の層序を確立し、その年代と形成過程について考察する.
2.美良布層の層序
美良布層の模式地は,香美市香北町小川の西の川沿いの河床で,層厚は約600mである.岩相より下部,中部,上部,最上部に区分し,層序と香西ほか(2004)で区分された6部層との関係を示す.
下部層:塊状泥岩主体で砂岩,礫岩を含む.礫岩は横方向に層厚が変化することからチャネル性堆積物と考えられる.香西ほか(2004)のA1,A2,A3部層に相当する.
中部層:塊状泥岩,砂岩泥岩互層が主体であるが,石灰岩を2層準挟むことが特徴である.香西ほか(2004)のB1部層に相当する.
上部層:泥岩主体(特に葉理の発達した泥岩,生物擾乱泥岩)で上位に向かって厚層のタービダイト性砂岩が重なり,その上位に砂岩,石灰岩の異地性岩体を含む.香西ほか(2004)のB2部層に相当する.
最上部層:泥岩主体で,香西ほか(2004)のC部層に相当する.
3.美良布層の堆積環境および形成過程
美良布層はおもに泥岩,砂岩で構成される.泥岩はその堆積構造から,塊状泥岩,葉理の発達した層状泥岩,生物擾乱の発達した泥岩からなる.砂岩はタービダイト性砂岩が主体で,底面には流痕(フルートキャスト)や水平方向の生痕が認められ,平行葉理の発達する部分もある.構成岩類や堆積構造などから陸棚(外側陸棚)あるいはそれ以深の堆積環境と推定される.
一方で西の川流域の美良布層中には石灰岩を含む地層が3層準認められる.上部層のそれは,産状から異地性岩体とみなされる.これに対し中部層では石灰岩体が2層準認められ,いずれの岩体も下位の砕屑岩と漸移関係にあり,植物片に富む砕屑岩からは,汽水生および浅海生の二枚貝,巻貝を多産する(香西ほか,2004).森野(1993)の砕屑岩-石灰岩層序における,砕屑岩の岩相変化は,下位より礫岩層,粘土層や炭層,植物根化石を含む砂岩層,汽水生・浅海生二枚貝・巻貝化石を含む砂質泥岩層,そして石灰岩が重なる.さらにこれまでの調査により,この層序の最下部の礫岩は塊状泥岩の上に直接重なることが観察されたことから,その堆積環境の変化は,陸棚域からの急激な海退とそれに続く海進期の陸域(河川),汽水域そして浅海成石灰岩の形成であると推定される.このことは美良布層形成期間内に大規模な海退-海進が少なくとも2回あったものと位置づけられる.
4.美良布層の年代
香西ほか(2004)では,本層中の泥岩や酸性凝灰岩などから産出する放散虫化石から,Kilinora spiralis 群集帯,Loopus primitivus 群集帯,Pseudodictyomitra carpatica 群集帯の存在が確認され,下部層をOxfordian~Tithonian,中部層~上部層をBerriasianとし,その上限については最上部層の年代はValanginian後期には及ばないとしている.また,近年砕屑性ジルコンのU-Pb年代測定が行われており(Ikeda et al,2016, 長谷川ほか,2020),得られた年代についても新たに確立した層序をもとに整理する.
参考文献
長谷川遼ほか,2020,地学雑誌,129,397-421.
Ikeda,T.,et al,2016, Mem. Fukui Prefectural Dinosaur Museum 15,33-84.
香西武ほか,2004,大阪微化石研究会誌,no.13,149-165.
森野善広,1993,地質雑,99,173-183.
森野善広ほか,1989,高知大学学術研究報告,38,73-83.
