Presentation Information
[T13-O-13]Reappraisal of stratigraphy of the Tanzawa and the Misaka Mountains, and its collision and accretion (a subsequent report -Zircon age in tuff beds-)
*Tadashi Nishikawa1, Kanae Shirai1, Kazutoshi Horiuchi1, Junko Toyoda1, Tatsuro Chiba1 (1. Tanzawa T Reseach Group)
Keywords:
Tanzawa Formation,Misaka Formation,Tuff,Zircon,U-Pb age
南部フォッサマグナ地域は本州弧と伊豆-小笠原弧の衝突帯であり,フィリピン海プレートの北上に伴い,同プレート上の伊豆-小笠原弧を構成していた巨摩,御坂,丹沢,伊豆地塊が本州弧に衝突・付加した過程を陸上で観察される貴重な場と考えられている.その衝突・付加過程にはいくつかのモデルが提唱されており,そのうち代表的なものとして,天野(1986),Amano(1991)における各地塊の多重衝突説やそれに懐疑的な松田(1989)などがある.
筆者らは長年,主に丹沢山地の層序や構造解析を目的として,丹沢層群中に含まれる凝灰岩層を鍵層に調査を行ってきた.(水上ほか,1991;西川ほか,2016)
今回,丹沢層群中の珪長質凝灰岩層のほか,隣接する御坂層群中の珪長質凝灰岩層についても露頭調査や記載のほか,内部に含まれるジルコン結晶のU-Pb年代測定を行ったので,その報告と既知の年代測定結果や地質報告と比較し,同地域の地質史の一部の考察を行う.
本要旨では,現在測定を進めている凝灰岩層中のジルコン結晶のU-Pb年代について判明している内容を取りまとめる.
凝灰岩層および溶岩でジルコンを検出し,U-Pb年代の結果を得た.今回,調査した御坂層群中のうち,大石凝灰岩層で約14Ma,白滝粗粒凝灰岩層で約13Maの値を得た.従来の研究においても,約15-11Maにおいて御坂地域の背弧拡大活動によりバイモーダルな火山活動が生じた(和平凝灰岩等)とされ,その値と調和的である.
丹沢層群については,丹沢地塊がプレート境界に接近時に形成されたと考えるトラフ充填堆積物に,地質層序的に近接すると推測される猿橋凝灰岩層で7.33±0.24Ma(西川ほか, 2016;白井, 2017),東部寺家層中の凝灰岩ではジルコンのフィッショントラック年代から7.46±0.51Ma(水上ほか, 1991)が認められており,丹沢地域北部においては8-7Ma頃には本州弧近隣に存在したと考えられる.
なお,丹沢地域には,本州弧への衝突に伴う引張場に複数のハーフグラーベンが発達したことが認められ,その一つの堆積物である長者舎累層は,従来から周囲の地層より若い層準とされてきた.今回,同累層中に堆積構造から水中火砕流と考えられる凝灰岩溶岩層が発見され,ジルコンが認められたことからU-Pb年代を測定したところ,年代決定粒子数は少ないものの約5Maの値が認められた.この値は同地域に分布するトーナル岩の年代の範囲でもあり,従来,丹沢地域におけるトーナル岩に近い火山岩年代は地蔵平併入岩体など限られていたが,地表に噴出した火山岩からも認められた.
一方で,ジルコンによるU-Pb年代は30-2000Maの外来性ジルコンが含まれる.今回の結果では,①凝灰岩の噴出年代のピークとより幅広い年代の古いジルコンが散在する,②噴出中心に近いほど,分析結果が噴出年代に集中し,遠方に行くほど①に近似する,③噴出年代と古い年代二つにピークが集中する,④噴出年代と古い年代がそれほど散在しない,の4タイプに分かれた.これらのことから、衝突前後の堆積場・後背地および火山活動についての過程を検討した。
本講演では,これらの結果や地質調査の情報をまとめて発表を行う.
[参考文献]
天野一男,1986. 多重衝突帯としての南部フォッサマグナ,月刊地球,8(10),581-585.
Amano.K, 1991. Multiple collision tectonics of the South Fossa Magna in Central Japan. Modern Geol., 15, 315-329.
西川正・堀内一利・千葉達朗・豊田淳子・水上香奈江・下村庸三・水谷のぞみ,2016. 丹沢山地全体の層序および衝突・付加の再検討,日本地質学会第123年学術大会, R5-P13.
松田時彦,1989. 南部フォッサマグナ多重衝突説の吟味. 月刊地球,11(9), 522-525.水上香奈江・木沢庸三・水谷のぞみ,1991. 丹沢山地東部の中新世凝灰岩のK-Ar及びFT年代. 地質雑, 97, 931-934.
白井(水上)香奈江, 2017. 鍵層酸性凝灰岩年代による丹沢衝突史の考察. フィッショントラックニュースレター, 28, 14-16.
筆者らは長年,主に丹沢山地の層序や構造解析を目的として,丹沢層群中に含まれる凝灰岩層を鍵層に調査を行ってきた.(水上ほか,1991;西川ほか,2016)
今回,丹沢層群中の珪長質凝灰岩層のほか,隣接する御坂層群中の珪長質凝灰岩層についても露頭調査や記載のほか,内部に含まれるジルコン結晶のU-Pb年代測定を行ったので,その報告と既知の年代測定結果や地質報告と比較し,同地域の地質史の一部の考察を行う.
本要旨では,現在測定を進めている凝灰岩層中のジルコン結晶のU-Pb年代について判明している内容を取りまとめる.
凝灰岩層および溶岩でジルコンを検出し,U-Pb年代の結果を得た.今回,調査した御坂層群中のうち,大石凝灰岩層で約14Ma,白滝粗粒凝灰岩層で約13Maの値を得た.従来の研究においても,約15-11Maにおいて御坂地域の背弧拡大活動によりバイモーダルな火山活動が生じた(和平凝灰岩等)とされ,その値と調和的である.
丹沢層群については,丹沢地塊がプレート境界に接近時に形成されたと考えるトラフ充填堆積物に,地質層序的に近接すると推測される猿橋凝灰岩層で7.33±0.24Ma(西川ほか, 2016;白井, 2017),東部寺家層中の凝灰岩ではジルコンのフィッショントラック年代から7.46±0.51Ma(水上ほか, 1991)が認められており,丹沢地域北部においては8-7Ma頃には本州弧近隣に存在したと考えられる.
なお,丹沢地域には,本州弧への衝突に伴う引張場に複数のハーフグラーベンが発達したことが認められ,その一つの堆積物である長者舎累層は,従来から周囲の地層より若い層準とされてきた.今回,同累層中に堆積構造から水中火砕流と考えられる凝灰岩溶岩層が発見され,ジルコンが認められたことからU-Pb年代を測定したところ,年代決定粒子数は少ないものの約5Maの値が認められた.この値は同地域に分布するトーナル岩の年代の範囲でもあり,従来,丹沢地域におけるトーナル岩に近い火山岩年代は地蔵平併入岩体など限られていたが,地表に噴出した火山岩からも認められた.
一方で,ジルコンによるU-Pb年代は30-2000Maの外来性ジルコンが含まれる.今回の結果では,①凝灰岩の噴出年代のピークとより幅広い年代の古いジルコンが散在する,②噴出中心に近いほど,分析結果が噴出年代に集中し,遠方に行くほど①に近似する,③噴出年代と古い年代二つにピークが集中する,④噴出年代と古い年代がそれほど散在しない,の4タイプに分かれた.これらのことから、衝突前後の堆積場・後背地および火山活動についての過程を検討した。
本講演では,これらの結果や地質調査の情報をまとめて発表を行う.
[参考文献]
天野一男,1986. 多重衝突帯としての南部フォッサマグナ,月刊地球,8(10),581-585.
Amano.K, 1991. Multiple collision tectonics of the South Fossa Magna in Central Japan. Modern Geol., 15, 315-329.
西川正・堀内一利・千葉達朗・豊田淳子・水上香奈江・下村庸三・水谷のぞみ,2016. 丹沢山地全体の層序および衝突・付加の再検討,日本地質学会第123年学術大会, R5-P13.
松田時彦,1989. 南部フォッサマグナ多重衝突説の吟味. 月刊地球,11(9), 522-525.水上香奈江・木沢庸三・水谷のぞみ,1991. 丹沢山地東部の中新世凝灰岩のK-Ar及びFT年代. 地質雑, 97, 931-934.
白井(水上)香奈江, 2017. 鍵層酸性凝灰岩年代による丹沢衝突史の考察. フィッショントラックニュースレター, 28, 14-16.
