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[T13-O-18][Invited]Basic studies on regional geology and stratigraphy of the Miocene Hokutan Group, Japan

*Toshiki HAJI1 (1. Geological Survey of Japan, AIST)
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【ハイライト講演】  山陰地域は前世紀後半以降,研究の進展が乏しい典型的な日本のフィールド事情を示す地域である.羽地氏は同地域において約10年間にわたり稠密な野外調査を実施し,小地域の研究成果を着実に積み重ねるとともに,それらの成果を基に前世紀末に提示された堆積盆発達史の精緻化を目指している.本講演では,今後のフィールド研究のモデルとなることを期待し,羽地氏の山陰地域における研究事例を紹介いただく. ※ハイライト講演とは...

Keywords:

basin development,geological mapping,Japan Sea opening,Tectonics,Tottori Group


 本発表では,山陰東部(鳥取県東部~兵庫県北部)に分布する中新統北但層群において,発表者がこれまで約10年間実施してきた地域地質・層序学的研究事例の紹介と残る課題の整理を行う.
 北但層群は,1960年頃に層序の全体像が提案され,1990年頃に日本海拡大時のグラーベン埋積層とみなされた地質体である.この層序と構造発達史は長らく踏襲されてきたが,いずれも広域概要を示したもので,岩相層序と地質構造の詳細は未解明であった.2000年頃以降,日本海周辺の中新統堆積盆では年代測定や構造解析,古地磁気測定などの研究が実施され,日本海拡大のテクトニクス論に一定の進展があった.しかし北但層群では,基礎的な地質情報の理解が遅れているために発展的研究はほとんど行われていなかった.
 北但層群の理解に向けて,発表者は地質図作成を主とした研究を展開してきた.研究地域は同層群の分布域南部及び西部である.これまでの主要な成果として,岩相層序の整理・堆積年代の制約・堆積盆縁辺部の構造把握・応力史の見直しが挙げられる.
 岩相層序の整理では,北但層群と区別されていた鳥取層群を北但層群の基本層序に組み込んだ.
 堆積年代の制約では,ジルコン年代測定により岩相層序に強い年代制約を与えた.既存研究の見解と比べ,各層の堆積年代が100万年程度古いことと,堆積盆北部と南部における海進時期に数10万年の差があることが明らかとなった.鮮新統と考えられていた陸成層が中部中新統と判明した例もある.
 堆積盆縁辺部の構造把握では,主要な砕屑岩分布域の縁辺に正断層が実在し,一部が堆積同時性断層であることを示した.断層の卓越方向や傾斜方向には地域的な傾向が認められ,一連のグラーベンを構成していた可能性が高い.一方で,既存研究で断層関係と想定された境界が不整合関係と判明した例もあり,従来の堆積盆発達史論の危うさが指摘された.
 応力史の見直しでは,詳細な露頭調査と3次元応力解析法の導入により応力史が改められた.北但層群の岩脈は日本海拡大に関連した引張応力場とその後の圧縮場を示すとされていたが,これが支持されないことを示した.
 残る課題のうち堆積盆発達史の鍵を握るのは,北但層群北部の層序と地質構造である.これもまた緻密な地域地質・層序学的研究を実施する他なく労力のかかる課題であるが,これがなされれば堆積盆の形成及び埋積過程の全容が明らかになり,発展的研究の礎となると期待される.