Presentation Information
[G-O-32]Magnetofossil as a paleoenvironmental proxy
*Toshitsugu Yamazaki1,2 (1. AORI, The University of Tokyo, 2. Marine Core Research Institute, Kochi University)
Keywords:
magnetofossil,marine sediments,rock magnetism
海底堆積物中に磁性細菌起源のマグネタイト(magnetofossil)が存在することは、1980年代から知られていたが、2000年代以降の岩石磁気学の進歩により、海底堆積物中のmagnetofossilを(半)定量することが可能となり、主要な磁性鉱物成分の一つであることが明らかとなった。Magnetofossilは特徴的な粒径と形態を持つ。粒径は岩石磁気学上の単磁区サイズ(~100 nm)であり、形態としては正八面体状、六角柱状、涙滴状が知られている。磁性細菌の生態学的研究からは、堆積物中の鉄還元境界付近が好適な生息環境であるとされ、鉄還元境界付近に留まるために地磁気伏角を利用しているのではないかと推定されている。古環境研究への応用としては、まず、magnetofossilの量が生物生産性の指標となる可能性が指摘された。また、magnetofossilの形態に関する研究からは、涙滴状形態のマグネタイトを形成する磁性細菌は鉄還元境界付近に多く生息しているであろうことが結論された。これは、微生物生態学的な考え方と調和的である。一方、正八面体状のmagnetofossilは、酸化的環境、例えば鉄還元境界の存在しない赤色粘土や堆積物最表層の酸化層にも大量に含まれている。このことは、生態学的な考え方を必ずしも支持しない一方、海底堆積物中のmagnetofossilの形態が、堆積物の過去の酸化還元状態を知る手がかりとなる可能性を示していて、そのような応用研究が報告されるようになった。さらに、PETMのmagnetofossil記録から、同じ形態のmagnetofossilであっても酸化還元状態の微妙な違いにより粒径がわずかに変化していることが報告されている。これが正しければ、magnetofossilが底層水溶存酸素量の指標となり得ることになる。本講演では、このようなmagnetofossilの古環境指標に関する研究の最近の進歩を紹介する。
