Presentation Information
[G-O-34]Geological survey results and its implication of the Kuroshima Knoll by a manned submersible Shinkai6500
*KIICHIRO KAWAMURA1, Koudai Kawaguchi1, Momoko Tsutsumi1, Ayanori Misawa2, Miho Asada2, Ken Takai3 (1. Yamaguchi University, 2. AIST, 3. JAMSTEC)
Keywords:
Chemosynthetic biocommunities,Seismic survey results,Gas expulsion
2024年7月23日から8月1日に実施された「よこすか」―「しんかい6500」によるYK24-12次Leg2研究航海は、初日から荒れ模様であった。天候不良のため、当初出港予定であった石垣港から急遽奄美大島の古仁屋港へ出港地が変更されたばかりでなく、乗船後3日間は古仁屋湾に荒天待機であった。その後、計画を大幅に変更し、下記の2潜航のみが実施された。1潜航目(潜航調査番号6K#1798)は、潜航研究者:高井研博士・Chong Chen博士(JAMSTEC)による黒島海丘の頂上付近での潜航調査であり、潜航調査された水深はおおよそ600-800m、2潜航目(6K#1799)は、長谷川万純博士(JAMSTEC)による黒島海丘の南麓斜面での潜航調査であり、潜航調査された水深はおおよそ2300-2500mであった(図1;Kawamura et al. (2022)を改変)。この研究航海の目的は、深海ナマコが持っている抗ウイルス作用を明らかにすることであり、深海ナマコの採取が潜航調査の主目的となっていた。これらの2潜航調査において、多くの地質学的に重要な映像資料や岩石・堆積物試料が採取された。特質すべきものについて、ここでは列挙する。 6K#1798では、化学合成生物群集や岩石露頭が観察された。潜航後半には、バブルも確認された。黒島海丘頂部には多数の亀裂が見られ、西北西―東南東方向が見られた。この方向は、黒島海丘周辺など広域な海底地形においても直線性の急崖として明瞭に観察される。 岩石試料としては、Takeuchi et al. (2007)で報告されているドロマイト・チムニーが採取された。内部に心棒のような固い部分とそれを覆うように外側が未固結の泥があり、全体的に細長い形状をしている。船上では、「ちくわ」とその内部に「シャウエッセン」などと呼んでおり、形状をうまく表現できている。これ以外にもコンクリーション砂岩が採取された。 2潜航で併せて、5本の堆積物試料が採取された。基本的に泥質であるが、有孔虫層が見られるものもある。現在、ドロマイト・チムニーについて、X-CTを終えており、その内部構造について詳しく報告するとともに、両潜航調査で得られた地質学的な知見について報告する予定である。この調査だけでは、黒島海丘の表面的な情報しか得られないが、生物の生息位置、海底面に見られる亀裂パタン、チムニーの成因などから、黒島海丘の形成プロセスを示すことがこの研究目的である。黒島海丘は、石垣島の南方沖おおよそ25kmの位置にあり、いわゆる大陸斜面に位置する。このような位置にメタン湧水やそれに伴う化学合成生物群集が存在している例はめずらしく、メタンハイドレート分解説(南、2011など)が示唆されているが、未解明な点が多い。このような海丘が形成されるためには、継続的な地下物質の供給が不可欠である。また、大規模崩壊も示唆されており(松本ほか、1998)、それらの現象がどのようにして生じていたかについて、地震探査記録などを交えて、議論する。寄港に向けてイルカの歓迎も受けたが、8月1日の下船は、当初の予定から大幅に変更され、佐世保港になった。「よこすか」の不具合のためであった。今後、海洋国家日本の継続的な発展のためにも、「しんかい6500」や母船と言った深海調査の「手立て」が維持されることが国益につながるだろう。
Kawamura, K., Oguri, K., Inoue, M, Hsiung, K.-H., Kudaka, T., Takai, K. (2022) Prog. Landslide Res. Tech., 1, 63-74.
松本剛、上地千春、木村政昭(1998)JAMSTEC深海研究, 13, 535-561.
南宏樹(2011)海洋情報部研究報告, 43, 66-71.
Takeuchi, R., Matsumoto, R., Ogihara, S., Machiyama, H. (2007) J.Geochem.Expl., 95, 16-28.
Kawamura, K., Oguri, K., Inoue, M, Hsiung, K.-H., Kudaka, T., Takai, K. (2022) Prog. Landslide Res. Tech., 1, 63-74.
松本剛、上地千春、木村政昭(1998)JAMSTEC深海研究, 13, 535-561.
南宏樹(2011)海洋情報部研究報告, 43, 66-71.
Takeuchi, R., Matsumoto, R., Ogihara, S., Machiyama, H. (2007) J.Geochem.Expl., 95, 16-28.

