Presentation Information
[G-O-37]Submarine topography and geological features of Fuji River to Offshore Tagonoura area, Northen part of Suruga Bay, Japan
*Nina ARAI1, Yusuke SATO2, Sosi SHIBAO1, Genju YAMAMOTO5, Osamu ISHIDUKA3, Satoshi OKAMURA4, Yuka YOKOYAMA5, Asahiko TAIRA5, Izumi SAKAMOTO5 (1. Graduate School of Oceanography, Tokai University, 2. Marine Works Japan Ltd., 3. National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 4. Hokkaido Soil Research Cooperative Association, 5. School of Marine Science and Technology,Tokai University)
Keywords:
lava,spur,Suruga Bay
駿河湾は静岡県に位置する日本一深い湾である.石廊崎と御前崎を結ぶ湾口は約56 km,奥行き約60 km,表面積は約2,300 ㎢におよび,最深部の水深は約2,500 mに達する.また,駿河湾奥部に流入する富士川は大量の土砂を供給し,沖合に広大な海底扇状地を形成している.
本研究では,富士川沖―田子の浦沖海底に存在する海脚状リッジ地形の成因を明らかにすることを目的に海洋地質調査(海底地形・海底観察および採泥)を実施した.海底地形調査にはマルチビーム音響測深器(KONGSBERG社製EM2040P MKⅡ)を用い,水深約10 m~300 m,東西方向約7.25 kmの範囲で測量を行った.海底観察は海脚状リッジ地形を対象に水中カメラを用い,計9回撮影を行った.
海底地形調査の結果,南北方向に軸を持つ海脚状リッジ地形を16本確認した.その海脚の形状特徴は,1)西部より東部の方が海脚の分布密度が高くなる,2)東部に向かい海岸から海脚の始点までの距離が短くなる,3)西部の海脚の表面には,樹枝状に発達したガリー状微細地形が確認できる,4)調査海域の東部で水深約110 m~150 m地点から始まる比高約10 m~50 mの崖状地形が発達することが明らかになった.また,海底観察調査で得られた映像では崖地形部に表面が凹凸に富む黒い岩盤が露出し,その表面に海綿などの生物が付着している様子が確認された.先行研究の反射法音波探査の結果,調査海域の海脚は富士川沖層群(中部―上部更新統)を基盤とし,その上を完新統が覆っている(佐藤・荒井,2016).今回の海底地形データや海底映像,先行研究の地形データや反射法音波探査結果から,調査海域西部における海脚基盤の形成要因は明確ではないが,海脚上部の形状には富士川扇状地内での度重なる流路変遷が寄与したと考えられる.また,東海大学の望星丸で取得された反射強度マップからも堆積物移動の痕跡が認められる.
さらに,崖地形の成因を把握するため,小型ドレッジャーを用いた採泥調査を調査海域東側の崖斜面(水深約50 m~170 m)を対象に計14回(D1~D14)実施した.得られた試料は,肉眼観察および岩石薄片試料の鏡下観察を行った.その結果,採取された岩石は赤色~暗灰色を示し,その大きさは1 cmに満たないスコリア質小片から10 cmを超える大きな岩片まで多様であった.また,その多くは表面に数mmの凹凸を伴う玄武岩質の角礫で,斜長石の斑晶(最大約7 mm,平均約5 mm)が顕著に発達しており,磁性を帯びているものも確認された.特にD14では,シャープな面が発達した大きさ約12 cmの淡赤色塊状岩片と多量の高発泡スコリア片が採取された.岩石薄片の鏡下観察では,斜長石の斑晶に加え,カンラン石,輝石も確認できた.多くの試料では,斜長石斑晶の周囲をガラス質が充填する石基組織を示したが,D14で得られた塊状岩片のみは斜長石斑晶間を輝石の微細結晶が埋める完晶質石基を呈した.また,一部の試料では異質岩類がアメーバ状に混入する様子が認められ,ペペライト状の特徴を示したことから,得られた試料は高温を保持しながら移動したことが示唆される.なお,得られた岩片の年代は現在測定中である.
撮影した地点の崖地形(水深約130 m~165 m)は,黒色の岩盤から構成されており,採取された岩石試料の性質からそれらは溶岩であることが確認された.また,先行研究で得られている富士川河口東側における陸上ボーリング調査では,深度110 m付近まで14C年代測定が行われ,完新世/更新世(約1.2万年前)の境界はおおよそ100 m~110 m付近に対応すると推定されている.このため,同コアの深度145 m~150.7 m地点に分布する富士火山噴出物の安山岩~玄武岩溶岩層は約1.2万年以上前の堆積物である可能性が高いと考えられる (尾崎ほか,2016).さらに,本研究で作成した崖地形の断面図と先行研究の陸上ボーリング調査の結果から,崖地形が形成されている水深は溶岩が分布する深度と一致していた.以上を踏まえ,調査海域の東側に存在する崖地形の形成要因について検討した結果,調査海域の東部に存在する崖地形の形に沿って富士火山起源の溶岩が分布していると考えられる.
今回の調査により,富士川沖―田子の浦沖海底の海脚状リッジ地形および崖地形の詳細な分布と特徴を把握した.特に東部における崖地形は富士火山溶岩の分布が形成要因として示唆される.今後は,採取した岩石試料の年代測定結果を含め,崖地形に分布する溶岩のさらなる解析を進めていく.
参考文献:佐藤・荒井(2016)海陸シームレス地質情報集,駿河湾北部沿岸域,海陸シームレス地質図S-5.尾崎ほか(2016)海陸シームレス地質情報集,駿河湾北部沿岸域,海陸シームレス地質図S-5.
本研究では,富士川沖―田子の浦沖海底に存在する海脚状リッジ地形の成因を明らかにすることを目的に海洋地質調査(海底地形・海底観察および採泥)を実施した.海底地形調査にはマルチビーム音響測深器(KONGSBERG社製EM2040P MKⅡ)を用い,水深約10 m~300 m,東西方向約7.25 kmの範囲で測量を行った.海底観察は海脚状リッジ地形を対象に水中カメラを用い,計9回撮影を行った.
海底地形調査の結果,南北方向に軸を持つ海脚状リッジ地形を16本確認した.その海脚の形状特徴は,1)西部より東部の方が海脚の分布密度が高くなる,2)東部に向かい海岸から海脚の始点までの距離が短くなる,3)西部の海脚の表面には,樹枝状に発達したガリー状微細地形が確認できる,4)調査海域の東部で水深約110 m~150 m地点から始まる比高約10 m~50 mの崖状地形が発達することが明らかになった.また,海底観察調査で得られた映像では崖地形部に表面が凹凸に富む黒い岩盤が露出し,その表面に海綿などの生物が付着している様子が確認された.先行研究の反射法音波探査の結果,調査海域の海脚は富士川沖層群(中部―上部更新統)を基盤とし,その上を完新統が覆っている(佐藤・荒井,2016).今回の海底地形データや海底映像,先行研究の地形データや反射法音波探査結果から,調査海域西部における海脚基盤の形成要因は明確ではないが,海脚上部の形状には富士川扇状地内での度重なる流路変遷が寄与したと考えられる.また,東海大学の望星丸で取得された反射強度マップからも堆積物移動の痕跡が認められる.
さらに,崖地形の成因を把握するため,小型ドレッジャーを用いた採泥調査を調査海域東側の崖斜面(水深約50 m~170 m)を対象に計14回(D1~D14)実施した.得られた試料は,肉眼観察および岩石薄片試料の鏡下観察を行った.その結果,採取された岩石は赤色~暗灰色を示し,その大きさは1 cmに満たないスコリア質小片から10 cmを超える大きな岩片まで多様であった.また,その多くは表面に数mmの凹凸を伴う玄武岩質の角礫で,斜長石の斑晶(最大約7 mm,平均約5 mm)が顕著に発達しており,磁性を帯びているものも確認された.特にD14では,シャープな面が発達した大きさ約12 cmの淡赤色塊状岩片と多量の高発泡スコリア片が採取された.岩石薄片の鏡下観察では,斜長石の斑晶に加え,カンラン石,輝石も確認できた.多くの試料では,斜長石斑晶の周囲をガラス質が充填する石基組織を示したが,D14で得られた塊状岩片のみは斜長石斑晶間を輝石の微細結晶が埋める完晶質石基を呈した.また,一部の試料では異質岩類がアメーバ状に混入する様子が認められ,ペペライト状の特徴を示したことから,得られた試料は高温を保持しながら移動したことが示唆される.なお,得られた岩片の年代は現在測定中である.
撮影した地点の崖地形(水深約130 m~165 m)は,黒色の岩盤から構成されており,採取された岩石試料の性質からそれらは溶岩であることが確認された.また,先行研究で得られている富士川河口東側における陸上ボーリング調査では,深度110 m付近まで14C年代測定が行われ,完新世/更新世(約1.2万年前)の境界はおおよそ100 m~110 m付近に対応すると推定されている.このため,同コアの深度145 m~150.7 m地点に分布する富士火山噴出物の安山岩~玄武岩溶岩層は約1.2万年以上前の堆積物である可能性が高いと考えられる (尾崎ほか,2016).さらに,本研究で作成した崖地形の断面図と先行研究の陸上ボーリング調査の結果から,崖地形が形成されている水深は溶岩が分布する深度と一致していた.以上を踏まえ,調査海域の東側に存在する崖地形の形成要因について検討した結果,調査海域の東部に存在する崖地形の形に沿って富士火山起源の溶岩が分布していると考えられる.
今回の調査により,富士川沖―田子の浦沖海底の海脚状リッジ地形および崖地形の詳細な分布と特徴を把握した.特に東部における崖地形は富士火山溶岩の分布が形成要因として示唆される.今後は,採取した岩石試料の年代測定結果を含め,崖地形に分布する溶岩のさらなる解析を進めていく.
参考文献:佐藤・荒井(2016)海陸シームレス地質情報集,駿河湾北部沿岸域,海陸シームレス地質図S-5.尾崎ほか(2016)海陸シームレス地質情報集,駿河湾北部沿岸域,海陸シームレス地質図S-5.
