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[T4-P-10]Effect of water injection on effective normal stress on friction behavior

*Riku IWATA1,2, Manami KITAMURA2, Michiyo SAWAI3, Shinichi UEHARA1 (1. Toho University , 2. GSJ,AIST, 3. Chiba University)
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Keywords:

Injection-induced earthquake,friction behavior,Laboratory experiment

 地熱開発などに伴う地下深部への流体圧入による間隙水圧の増加は既存断層の地震性すべりを引き起こすリスクをはらむと考えられている(Ellsworth, 2013)。断層面の間隙水圧が増加すると有効法線応力が低下し、せん断強度が減少するため、断層面はすべりやすくなる。したがって、断層面の有効法線応力の分布はせん断強度の分布に直接的に関係するため、注水誘発地震の発生に影響を及ぼすと考えられる。断層面上の有効法線応力の分布は、流体注入速度や流体注入時の流体圧の加圧速度(間隙水圧加圧速度, )、断層面沿いや断層周辺の透水性に依存することが予想される。そのため、有効法線応力の分布に大きく寄与するパラメータを特定し、注水による有効法線応力の変化が断層すべり特性に与える影響を解明することは、注水誘発地震のリスク評価に役立つと期待できる。そこで本研究では、室内注水実験を行い、摩擦面粗さ、 、および熱クラックの有無に着目し、注水時の有効法線応力の変化が摩擦挙動に与える影響を明らかにすることを目的とする。 本研究では、油圧式三軸圧縮試験機(東邦大学設置と産業技術総合研究所設置)を用いて、2通りの室内注水実験を行った。1つ目(シリーズA)では主に摩擦面粗さとに着目し、2つ目(シリーズB)では主に熱クラックの有無による断層運動の違いに着目した。共通して、実験ではまず封圧・初期間隙水圧一定で軸変位載荷を行い、スティック-スリップが生じた後に軸載荷を止めて上流側から間隙水圧を上昇させた。有効法線応力を算出する際の間隙水圧は、試料の上流側間隙水圧と下流側間隙水圧の平均を用いた。 シリーズAでは、実験試料には直径 40 mm、長さ 80 mmの円柱形庵治花崗岩について、軸方向に30°摩擦面を有する試料を用いた。摩擦面に間隙水を直接供給するために、直径 2.5 mmの穴を設けた。また、摩擦面を#80(平均粒径約200 µm)、#3000(平均粒径約4 µm)の2つの異なる粗さの耐水研磨紙及びカーボン・アランダムで研磨した。主な実験条件は封圧 60 MPa(一定)、初期間隙水圧 0.1 MPa、軸載荷速度 1.7 µm/sec とした。また、軸変位一定制御条件下にて、一定(0.1 MPa/min または 1.0 MPa/min)で試料上流側から間隙水圧を連続的に上昇させた。下流側はバルブを閉じて、下流側間隙水圧計で間隙水圧を測定した。シリーズBでは、実験試料には直径 50 mm、長さ 120 mmの円柱形稲田花崗岩について、軸方向に30°の摩擦面を有する試料を用いた。シリーズBでは試料上面から摩擦面に通ずる穴は設けず、インタクト試料、150℃熱処理試料、300℃熱処理試料、450℃熱処理試料について、#80(平均粒径約 200 µm)の耐水研磨紙で摩擦面を研磨した。主な実験条件は封圧約 33 MPa(一定)、下流側間隙水圧 2.0 MPa(一定)、軸変位速度 3 µm/secとした。また、変位一定制御と応力一定制御条件下にて、注水速度 0.05 ml/minで上流側間隙水圧を約 2.0 MPa から 30.0 MPaまで段階的に上昇させた。 注水前の軸変位によるスティック-スリップの最大せん断応力から求めた各実験の摩擦係数は、庵治花崗岩(シリーズA)では0.39~0.48であり、稲田花崗岩(シリーズB)では0.43~0.50となった。応力降下直前の有効法線応力とせん断応力の関係は、摩擦面粗さ、、母岩の透水性に依存せず、正の相関が見られた。シリーズAでは、応力降下直前の有効法線応力が 54.0 MPa から 76.6 MPa まで増加し、せん断応力が 22.3 MPa から 38.3 MPaまで増加した。またシリーズBでは、応力降下直前の有効法線応力が 22.6 MPa から 46.0 MPaまで増加し、せん断応力が 9.0 MPa から 29.3 MPa まで増加した。次に、応力降下直前の有効法線応力とせん断応力降下量の関係は、摩擦面粗さにより異なる傾向が見られた。#80試料では有効法線応力が増加するにつれて、せん断応力降下量が増加する傾向が見られた。一方、#3000試料では明瞭な傾向は見られなかった。最後に、注水時のせん断応力降下量を応力降下にかかった時間で割ったパラメータである応力降下速度では、39 MPa/s 以上の急激な応力降下と 1 MPa/s 以下の緩やかな応力降下の2パターンが見られた。急激な応力降下では有効法線応力の増加に伴って速くなる傾向が見られた。一方、緩やかな応力降下は有効法線応力との明瞭な関係は見られなかった。 参考文献 Ellsworth (2013) Science, 341(6142).