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[T4-P-11]Microstructural analysis in the Nadagawa Fault (subsidiary fault) slipped during the 1995 Hyogoken-Nanbu earthquake

*Kotaro Aiyama1, Masaki Suehiro2, Kazunari Kimura3 (1. Central Research Institute of Electric Power Industry, 2. Hanshin consultants Co., Ltd., 3. K-geo)
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Keywords:

subsidiary fault,fault gouge,Microstructural analysis,Nadagawa Fault,layered structure,gouge fragment

 主断層の活動に伴い,副次断層が活動する場合は多々存在する.例えば,2014年長野県北部の地震では,主断層である神城断層だけでなく,副次断層も地表地震断層として出現した.相山・上田(2023)は,この地震で出現した副次断層の断層ガウジで微細構造解析を実施し,国内外の主要な活断層に見られる層状構造やガウジ破片を確認している.なお,第四紀以降に活動した活動的な副次断層を調査した既往文献のうち,微細構造解析に焦点を当てたものは,私の知る限り相山・上田(2023)のみである.しかし,もし第四紀以降に活動した複数の副次断層に共通の微細構造を発見できれば,活動的な副次断層を探索・認定する際の一助になるかもしれない.
1995年兵庫県南部地震では,主断層である野島断層に沿うNE-SW走向・長さ約10 kmの地表地震断層に加え,野島断層から約4 km東に離れた淡路島東岸でNE-SW走向・長さ約1.6 kmの地表地震断層(灘川断層)が出現した.灘川断層は,東側隆起成分と右横ずれ変位成分からなる運動センスを示し,野島断層沿いの地表地震断層に比べ,その変位量が非常に小さかったことなどから,副次断層であるとされている(岡田,1996;岡田ほか,1998).
本研究では,活動的な副次断層に共通の微細構造を発見するために,灘川断層北東端で掘削したトレンチの壁面を観察した後,偏光顕微鏡観察やSTEM観察等からなる微細構造解析を実施した.なお,以下ではトレンチ壁面観察と偏光顕微鏡観察についてのみ記述するが,発表当日はその他の実施項目についても報告する.
トレンチ壁面観察:盛土等の人工物の直下に,花崗岩と花崗閃緑岩からなる基盤岩が分布し,花崗岩中に幅約1 mの破砕帯が発達していた.この破砕帯を構成する断層ガウジは2枚のガウジゾーン(ガウジ1および2)からなる層状構造を有する.ガウジ1は非常に軟質である.幅は1~15 cmであり,後述の最新滑り面に沿って連続する.主に淡緑色がかった灰色と灰白色の部分からなり,最新滑り面に接する幅数mmのゾーンでは灰白色主体となる.ガウジ2は軟質であるが,ガウジ1より締まっている.幅は4~10 cmであり,最新滑り面に沿って分布するが,連続性に乏しく,壁面途中で途切れる.灰白色を呈し,健岩(花崗岩)やカタクレーサイトを多く取り込む.ガウジ1とガウジ2との境界は,非常に直線性・剥離性が良い断層面であり,水をかけただけで両ガウジゾーンが断層面を境にペラペラと剥がれる.この断層面は,N42~56°E・76S~85° Nの走向・傾斜を示し,灘川断層と同走向であることから,1995年に活動した最新滑り面(灘川断層)であると判断される.面上にはレイク角が18~24° NEの条線が発達する.
偏光顕微鏡観察:最新滑り面を含む試料を採取し,最新滑り面に直交で,条線(レイク角20° NE)に平行な面を持つ薄片を作成した.薄片内にはガウジ1および2と,2条の断層面が認められた(図1a).トレンチ調査で確認された最新滑り面はガウジ1とガウジ2を分けているため,2条の断層面のうち北西側の断層面がトレンチ調査で認めた最新滑り面に対応する.また,南東側の断層面は,最新滑り面より湾曲し,ガウジ1をガウジ1αとガウジ1βに分ける.ガウジ1αは粘土鉱物に富み,東側隆起成分を伴う右横ずれセンスを示すP面やR1面などの複合面構造が顕著に発達する(図1b).この運動センスは兵庫県南部地震時のそれと整合する.ガウジ1βは,ガウジ1αより粘土鉱物が少なく,東側隆起成分を伴う右横ずれセンスを示す複合面構造が軽微に発達する.また,ガウジ1αと異なり,ガウジ破片を含む(図1c).
トレンチ壁面観察と偏光顕微鏡観察の結果,国内外の主要な活断層や神城断層の副次断層と同様に,断層ガウジの層状構造とガウジ破片が認められた.これらの構造は地殻浅部での繰り返し剪断運動を示すため(例えば,相山ほか,2017),断層ガウジの層状構造やガウジ破片を持たないものは地殻浅部で繰り返し活動していない非活動的な断層であると考えられる(相山・金折,2024).つまり,地殻浅部での繰り返し剪断運動を示す構造は,第四紀以降活動した活動的な主断層や副次断層が持つべき構造であると考えられる.しかし,地殻浅部で繰り返し活動していたものの,第四紀以降に活動を停止した断層もこれらの構造を持つ可能性があるので,注意が必要である.
引用文献 1) 相山・金折,2024,地質雑,130,119–138.2) 相山ほか,2017,応用地質,58,2‒18.3) 相山・上田,2023,応用地質,64,15–27.4) 岡田,1996,兵庫県南部地震と地形災害,28–63.5) 岡田ほか,1998,人と自然,9,33–5.