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[T4-P-16]How does stress condition and yield criterion affect permeability of shear zones induced in the Kazusa Group mudstones?

*Miyu Matsubara1, Shinichi Uehara1 (1. Toho Univ.)
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Keywords:

mudstones,Laboratory experiment,permeability

 研究の背景と目的
 近年、CO₂地中貯留技術が注目されている。中でも、帯水層にCO₂を注入し、貯留する帯水層貯留において、帯水層の上位に位置する泥岩などの不透水層は、CO₂の漏洩を防ぐシール層として重要な役割を担っていることが期待される。しかし、この不透水層中に断層が形成されると、それがCO₂の漏洩経路となる可能性がある。そのため、泥岩中のせん断帯の透水性を評価することは重要である。 一般に、せん断帯の透水性は、形成時の応力条件や岩石の破壊基準と関連していることが知られている。Ingram & Urai (1999) は、低応力条件下では泥岩は脆性的に破壊し、せん断帯の透水性が原岩よりも高くなる一方、高応力条件では延性的に変形し、せん断帯の透水性が原岩よりも大きく変化しないような挙動を示すということを報告している。しかしながら、日本の帯水貯留の主な対象として考えられている第三紀、第四紀泥岩についてせん断帯の透水性と破壊基準の関係はよくわかっていないのが現状である。本研究では、千葉県房総半島に分布する第三紀、第四紀上総層群黄和田層泥岩(シルト岩)を対象に、飽和状態の泥岩試料に対して封圧下での軸変形実験および透水性の評価を行うことで、泥岩の破壊基準と透水性の関係を明らかにすることを目的とする。特に、異なる応力条件下における破壊挙動とそれに伴う透水性の変化を定量的に捉え、せん断帯の透水性が、せん断時の応力条件と破壊基準にどのように関連するのかを評価する。
研究の方法
 実験試料として、千葉県房総半島の上総層群に属する黄和田層の泥岩(シルト岩)を用いた。三軸変形透水試験機を使用し、以下の実験を実施した 。まず、岩石の破壊基準に基づいて、等方圧下での岩石の降伏条件を、過圧密から正規圧密への移行封圧条件から評価した(実験1)。直径40 mm、長さ40 mmの円柱形試料を使用し、間隙水圧を0.1 MPaに一定に保ちながら封圧を1.0~25 MPaの範囲で増加させ、それに伴う空隙体積の変化を測定した。次に、封圧がせん断変形時の透水性に与える影響を調べるため、軸変形実験と透水実験を行った(実験2)。直径40 mm、長さ80 mmの円柱形試料を使用し、実験1の結果を参考に、1.5 , 2.5 , 10 MPaの封圧条件で軸変形実験を実施した。変形前後に透水実験も行い、透水性の変化を測定した。
結果と考察
 実験1の結果、黄和田層泥岩試料の空隙体積変化は、有効圧が約15~17 MPaで正規圧密に移行することが確認された。この結果に基づき、封圧1.5 , 2.5 , 10 MPaの条件で軸変形実験を実施した。軸変形実験の結果、封圧1.5 , 2.5 MPaの条件下では、ピーク応力後に応力が急激に低下する脆性的な挙動が顕著に見られ、試料には斜めの破断面が形成された。一方、封圧10 MPaの条件下では、試料は延性的に変形し、明瞭な破断面は観察されなかった。変形前後の透水性を比較したところ、封圧1.5 MPaの条件では透水性はわずかに増加する傾向が見られた。しかし、封圧2.5 MPaでは変形後の透水性が変形前と比較して顕著に減少した。一方、封圧10 MPaの条件では透水性の変化はほとんど見られなかった。 これらの結果から、1.5 MPa , 2.5 MPa下では脆性的な変形が生じ、試料スケールの破断面が形成されることが示唆された。高封圧(10 MPa)下では延性的な変形が生じ、明瞭な破断面が見られなかったことから、せん断帯の透水性は大きく変化しないことが示唆された。封圧2.5 MPaでは、脆性的な挙動が見られたにもかかわらず、透水性低下した。その要因として、亀裂形成時に生じた細かい粒子が間隙水圧の増加に伴い移動し、流路を閉塞させた可能性が考えられた。今後は、粉末X線回折法や走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により、泥岩の鉱物構成や内部構造を詳細に調べ、変形後の試料の構造と透水性の関係をさらに深く考察する予定である。
<参考文献>
・Ingram & Urai (1999) : Top-seal leakage through faults and fractures: the role of mudrock properties.