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[T5-P-4]Rock magnetic properites of the fault rocks in an exhumed accretionary complex using Scanning SQUID Microscopy and comparison with deformation textures

*Taizo UCHIDA1, Hirokuni ODA2, Hiroshi KAWABATA1, Naoto FUKUYO3, Yoshitaka HASHIMOTO1 (1. Kochi University, 2. Institute of Geology and Geoinformation, Geological Survey of Japan, AIST, 3. Hosei University)
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Keywords:

paleomagnetism,rock mangetism,magnetic microscopy,cataclasite,fault rock

 断層運動に伴う断層近傍への動的な物理的・化学的作用は、地震ダイナミクスを理解する上で重要である。岩石磁気特性は、これらの作用に対して鋭敏に応答してその痕跡を残すため、これまでに断層温度計や岩石–流体間反応の指標となる物理特性として適用されてきた(Mishima et al., 2006; Chou et al., 2012)。一方、断層運動に応じた空間スケールでの検出や、それを変形組織と比較することには未だ課題が残されている。走査型超伝導量子干渉素子(SQUID)で得られる磁気マッピング画像は、光学画像と組み合わせることで、変形組織に関連した岩石磁気特性の解析を可能にする。本研究では、陸上付加体に発達するカタクレーサイトの岩石磁気特性をサブmmスケールで解析し、変形組織との比較を行った。
対象としたカタクレーサイトは、四国南西部の白亜系四万十帯に位置し、過去の地震発生帯で形成されたとされており(e.g., Hashimoto et al., 2012)、この母岩である横浪メランジュの最大埋没温度は 220–280 °Cと推定されている。先行研究のバルク試料を用いた古地磁気・岩石磁気測定の結果、自然残留磁化はマグネタイトまたは単斜ピロータイトによって担われる 3 つの残留磁化成分から構成されることが明らかになっている(Uchida et al., 2024)。このうち 1 成分は、母岩の最高被熱温度を超える 300–360 °C の消磁温度を示しており、発熱イベントがカタクレーサイト内で局所的に発生した可能性を示唆している。
本研究では、変形組織と磁気特性の関係を明らかにするため、段階交流消磁(AFD)、岩石磁気実験、FE-SEM/EDS および光学顕微鏡による分析を行った。AFD の結果、SQUID 顕微鏡で可視化された残留磁化ベクトル成分(以下、双極子)は多様な消磁挙動を示し、80mT までに消磁するものがある一方で、消磁されにくいものも認められた。それぞれの双極子の消磁結果を主成分解析すると方位は大きく散乱していた。岩石磁気実験では、異なる保磁力の強磁性鉱物の存在が明らかとなった。等温残留磁化(IRM)のマッピングでは、強磁性鉱物の種類によって明瞭に異なる空間分布が示され、低保磁力成分は広範囲にパッチ状に分布する一方で、高保磁力成分は局所的に脈状に分布していた。また、低保磁力成分と高保磁力成分のIRM の強度比から、低保磁力のパッチは複数の強磁性鉱物が相互作用している可能性が示唆された。バルク測定による強磁性鉱物の同定では、マグネタイト(低保磁力)、グレイガイト(中保磁力)、およびヘマタイト(高保磁力)が、それぞれの保磁力帯における主要な残留磁化キャリアであることが確認された。FE-SEM/EDS 観察では、サブミクロンサイズの続成マグネタイトを直接解像することはできなかったが、フランボイダルな鉄硫化物が広く分布し、高保磁力領域付近に鉄に富む脈が存在することが確認された。
これらの結果から、低保磁力成分はマグネタイト、高保磁力成分はヘマタイトによって担われている可能性が示唆された。以上のことから、双極子の方位が大きく散乱しているのは、マグネタイトと他の強磁性鉱物の相互作用が一因だと考えられる。この点は、FE-SEM 観察で確認されたグレイガイトを含むと考えられる鉄硫化物のフランボイドが SQUID 顕微鏡の測定範囲内に複数存在することからも支持される。一方で、変形組織との対比では、局所化している高保磁力領域が小断層により変位しており、その周辺には鉄に富む鉱物脈が存在した。このことから、流体に伴う岩石磁気特性の変化と断層運動の時間的前後関係が示唆される。また、その周辺のフランボイドは特に強く変質していたのに対し、高保磁力領域から離れた場所にあるフランボイドは未変質のままであった。これにより、カタクレーサイト内での流体との反応による磁気特性の変化が局所的であることが明らかになった。

引用文献:
Chou, Y., et al., 2012, Geology, 40(6).
Hashimoto, Y., et al., 2012, Island Arc, 2(1).
Mishima, T., et al., 2006, Geophysical Research Letters, 33(23).
Uchida, T., et al., 2024, Tectonophysics, 871, 230177.