Presentation Information

[T5-P-9]Relationship between Mitaki Granite and conglomerates from Mt.Mitaki area in the Kurosegawa Belt

*ryo NAKAMURA1, Tomohiro TSUJI1 (1. Graduate School of Sciences and Technology for innovation, Yamaguchi University)
PDF DownloadDownload PDF

Keywords:

Kurosegawa Belt,accretionary geology,Paleozoic,sedimentary geology

 【はじめに】日本列島はジュラ紀~白亜紀に形成された付加体からなり,その後の日本海拡大で現在の形となった.日本列島の基盤岩となる付加体の研究は,日本および東アジアのテクトニクス理解に不可欠である.西南日本外帯に位置する黒瀬川帯は,秩父帯に挟まれ東西約1000kmにわたって分布する異質な地質体である.約4.4億年前の放射年代を持つ火成岩(市川ほか, 1956),ペルム紀付加体,中・古生代堆積岩から構成される.黒瀬川帯の定置プロセスには,「黒瀬川帯クリッペ説」(磯崎ほか, 1991)と「左横ずれ説」(平ほか, 1981)などの説が存在する.しかし,両説とも決定的証拠に欠け,現在も活発な議論が続いている.黒瀬川帯の模式地である愛媛県西予市には特徴的な礫岩が分布する.これら礫岩の地質構造や周辺の岩相との関係性および礫岩どうしの関係性を検討することで,黒瀬川帯の定置プロセス解明につながる可能性がある.そのため本論では主に三滝花崗岩類と礫岩の関係性を議論する目的で地表踏査と薄片観察を行った.【結果】本調査地域は, 泥岩,砂岩主体の堆積岩Ⅰ,泥質メランジュやチャートが分布する付加体Ⅰ,泥質片岩,泥岩および砂岩を主体とし,緑色岩が含まれる付加体Ⅱ,崩壊堆積物Ⅰ,そして三滝花崗岩類に分けられる.また堆積岩Ⅰと付加体Ⅰには含礫泥岩相が確認された.そのほかに付加体Ⅱ,三滝山西側および南側で礫岩層が露出していた.上記の岩相について以下に記載する.堆積岩Ⅰ中の含礫泥岩層は,円礫を主体とし,径10数 cm程度で淘汰が比較的良いがまれに径30 cm程度の巨礫を含む.礫種はほとんど砂岩だが,まれに凝灰岩も含まれる.付加体Ⅰ中の含礫泥岩層は,円礫主体とし,径2.0~10.0 cm程度で淘汰が普通からやや悪い.礫種は凝灰岩や花崗斑岩である.付加体Ⅱ中の礫岩層は円礫~亜円礫を主体とし,径0.5~3.0 cm程度で淘汰がやや悪く,礫支持である.礫種は凝灰岩,花崗岩および泥岩など多様である.基質は砂岩であった.三滝山西側の礫岩層は,円礫を主体とし,径2.0~10.0 cm 程度で淘汰がやや悪く,最大で径70.0 cm 程度に達する.礫支持で,基質は砂岩であった.礫岩の礫種は珪岩や花崗岩が主体である.三滝山南側の礫岩層は,円礫~亜円礫を主体とし,径5.0~10.0 cm程度で淘汰が悪く,最大で径70.0 cm程度に達する.これは三滝山西側の礫岩層と類似する.礫岩層は基質支持で,基質は泥岩であった.礫岩の礫種は珪岩や花崗岩が主体である.崩壊堆積物Ⅰは亜角礫および亜円礫~円礫を主体とし,径0.2~2.0 cm程度で淘汰が悪く,礫支持である.崩壊堆積物の礫種は玄武岩,酸性凝灰岩,砂岩など多様であるが深成岩礫は確認されなかった.三滝花崗岩類は中粒~粗粒の花崗岩~花崗閃緑岩であり,パンペリー石,細脈状の緑泥石および黒雲母の変形組織が観察され.【考察】本調査地域の三滝花崗岩類は東西延長し,堆積岩Ⅰと近接して産する.同様に三滝山に産する三滝花崗岩類は三滝山西部と南部の礫岩層と近接関係にある.しかし,薄片観察の結果,三滝花崗岩類に特徴づけられる組織が,いずれの礫岩層の花崗岩礫にはみられなかった.また,三滝花崗岩は中粒~粗粒なのに対し,礫には細粒な花崗岩や花崗斑岩および珪長岩が多く,三滝花崗岩類の特徴と一致しない.また崩壊堆積物には付加体構成岩石の礫が多く含まれることから,海溝陸側斜面の崩壊によって形成された可能性がある.つまり,本調査地域周辺の礫岩に三滝花崗岩類由来の礫は含まれないと考える.このように,三滝花崗岩とこれら礫,礫岩層および崩壊堆積物は現在,近接関係にあるにも関わらず,礫岩形成当時は三滝花崗岩類と近接関係になかったと考えられえる.また三滝花崗岩類はゴンドワナ大陸北東部の大陸地殻で形成されたといわれている(Aoki et al. 2015).つまりこれら礫岩,崩壊堆積物および礫岩層の形成時期および形成場は,三滝花崗岩類と異なっていたが,ある時期に別々の何らかの経路をたどって現在の近接関係になったと考えられる.このように黒瀬川帯の岩石は様々な時空間の岩石が一つになって形成された地質体といえる.その他礫岩の分布と礫種には統一性がなく礫岩どうしの関係はいまだ不明である.今後も野外調査を行い,礫岩どうしの関係性や礫の供給源について検討したい.
【引用文献】
Aoki et al. 2015, Journal of Asian Earth Sciences, 97, 125-135
磯崎ほか, 1991, 地質学雑誌, 10, 917-941
市川ほか, 1956, 地質学雑誌, 62, 82-103
平ほか, 1981, 科学, 51, 516-523