Presentation Information
[T5-P-10]Reconstruction of oceanic plate stratigraphyin the Paleogene accretionary complex (Nakanogawa Group)around Hiroo area of the Hidaka Belt, Hokkaido, Japan
*Reo HATAYAMA1, Daiki IWAI, Hayato UEDA1 (1. Niigata University)
Keywords:
Paleocene,Accretionary Complex,Nakanogawa Group,Radiolaria,Zircon U-Pb age
はじめに: 最近のプレート復元モデルによれば,古第三紀のおよそ50 Maには,イザナギ-太平洋海嶺が日本付近のユーラシア東縁に沈み込んだと考えられる(たとえばSeton et al., 2015).北海道では,日高帯の付加体中に産する現地性緑色岩(陸源砕屑岩に対して貫入・噴出した中央海嶺玄武岩)が海嶺沈み込みを示すと考えられてきた.しかし日高帯には,現地性緑色岩を伴わない付加体も存在する.日高山脈東麓の中の川層群は砕屑岩類を主とする古第三紀暁新世~前期始新世の付加体であるが,白亜紀の赤色泥岩やチャート,アルカリ玄武岩,石灰岩などの海洋性岩石を含む.もしこれらの岩石が海洋プレートから付加したなら,50 Ma頃に海嶺が沈み込んだとするモデルとは矛盾する.一方,これらの岩石が従来言われてきたように陸側から供給された異地性の岩塊と考えるのなら,給源の地質体が特定される必要がある.そこで本研究では,中の川層群の海洋性岩石の産状や層序を検討した.
岩相区分:著者らは広尾町周辺地域にてマッピングを行い,玄武岩層,チャート層およびチャートに挟まる石灰岩層,赤色泥岩層,緑色珪質泥岩緑色砂岩互層,黒色泥岩灰色砂岩層,塊状砂岩層に区分した.
海洋性岩石をはじめとする各岩相の分布:チャート層に含まれる放散虫により,前期白亜紀~白亜紀中頃,赤色泥岩層の放散虫から白亜紀中頃の年代を得た.加えて,赤色泥岩から64.2±0.8Maの年代が得られた.また,赤色泥岩およびチャートから前期白亜紀~白亜紀中頃,黒色泥岩,緑色珪質泥岩から古第三紀暁新世の放散虫年代が報告されており,砂岩,砂岩泥岩互層より暁新世~始新世のジルコン年代が報告されている(七山, 1992, Nanayama, 2017).
海洋プレート層序の復元:野外での岩石の随伴関係や層序・年代,鏡下観察の結果から,本地域の中の川層群の層序は以下のように復元されることが推測できる.下位から順に,玄武岩と白亜紀のチャートおよび挟在する石灰岩からなる層,白亜紀中頃から暁新世の赤色泥岩,暁新世の緑色珪質泥岩および緑色砂岩,暁新世~始新世の黒色泥岩灰色砂岩層および塊状砂岩層,である.
考察:現世の太平洋プレート上の深海底では,赤道周辺でチャートや石灰岩,亜熱帯高圧帯下で赤色泥岩,偏西風帯下で珪質ならびに凝灰質な泥岩と,緯度別に帯状に堆積物が分布する.その結果,北西太平洋で掘削されたコアでは,チャート→赤色泥岩→凝灰質な珪質泥岩の層序が広くみられる.本調査地域の層序においても,海洋地殻である玄武岩層の上に赤道周辺の低緯度域で白亜紀のチャートが堆積し,遠洋域で白亜紀~暁新世の赤色泥岩が堆積し,偏西風による火山灰の運搬が起こるような堆積場で火山ガラスを含む暁新世の緑色珪質泥岩層を経て,暁新世~始新世の砂泥互層,砂岩の堆積場に遷移した海洋プレート層序であったと考えられる.もし暁新世から始新世に白亜紀の海洋地殻が沈み込んだなら,イザナギー太平洋海嶺はこの時代に北海道下に沈み込まなかった可能性がある.一方,中央海嶺の沈み込み年代が異なっていた場合はその限りではない.したがって本研究の成果は中央海嶺の沈み込みの年代について,再検討の余地を与えるものであることが示唆される.
引用文献
七山太,北海道中軸部南部,“中の川層群”の層序と岩相.地質学雑誌第98 巻第 11 号, p.1041-1059 1992 年 11 月
Nanayama, F., Takahashi, Y., Yamasaki, T., Nakagawa, M., Iwano, H., Danhara, T., & Hirata, T. (2017). U–Pb zircon ages of the Nakanogawa Group in the Hidaka Belt, northern Japan: Implications for its provenance and the protolith of the Hidaka metamorphic rocks. Island Arc, 27(2), e12234
Seton, M., Flament, N., Whittaker, J., Müller, R. D., Gurnis, M., & Bower, D. J. (2015). Ridge subduction sparked reorganization of the Pacific plate mantle system 60 50 million years ago. Geophysical Research Letters, 42(6), 1732-1740.
岩相区分:著者らは広尾町周辺地域にてマッピングを行い,玄武岩層,チャート層およびチャートに挟まる石灰岩層,赤色泥岩層,緑色珪質泥岩緑色砂岩互層,黒色泥岩灰色砂岩層,塊状砂岩層に区分した.
海洋性岩石をはじめとする各岩相の分布:チャート層に含まれる放散虫により,前期白亜紀~白亜紀中頃,赤色泥岩層の放散虫から白亜紀中頃の年代を得た.加えて,赤色泥岩から64.2±0.8Maの年代が得られた.また,赤色泥岩およびチャートから前期白亜紀~白亜紀中頃,黒色泥岩,緑色珪質泥岩から古第三紀暁新世の放散虫年代が報告されており,砂岩,砂岩泥岩互層より暁新世~始新世のジルコン年代が報告されている(七山, 1992, Nanayama, 2017).
海洋プレート層序の復元:野外での岩石の随伴関係や層序・年代,鏡下観察の結果から,本地域の中の川層群の層序は以下のように復元されることが推測できる.下位から順に,玄武岩と白亜紀のチャートおよび挟在する石灰岩からなる層,白亜紀中頃から暁新世の赤色泥岩,暁新世の緑色珪質泥岩および緑色砂岩,暁新世~始新世の黒色泥岩灰色砂岩層および塊状砂岩層,である.
考察:現世の太平洋プレート上の深海底では,赤道周辺でチャートや石灰岩,亜熱帯高圧帯下で赤色泥岩,偏西風帯下で珪質ならびに凝灰質な泥岩と,緯度別に帯状に堆積物が分布する.その結果,北西太平洋で掘削されたコアでは,チャート→赤色泥岩→凝灰質な珪質泥岩の層序が広くみられる.本調査地域の層序においても,海洋地殻である玄武岩層の上に赤道周辺の低緯度域で白亜紀のチャートが堆積し,遠洋域で白亜紀~暁新世の赤色泥岩が堆積し,偏西風による火山灰の運搬が起こるような堆積場で火山ガラスを含む暁新世の緑色珪質泥岩層を経て,暁新世~始新世の砂泥互層,砂岩の堆積場に遷移した海洋プレート層序であったと考えられる.もし暁新世から始新世に白亜紀の海洋地殻が沈み込んだなら,イザナギー太平洋海嶺はこの時代に北海道下に沈み込まなかった可能性がある.一方,中央海嶺の沈み込み年代が異なっていた場合はその限りではない.したがって本研究の成果は中央海嶺の沈み込みの年代について,再検討の余地を与えるものであることが示唆される.
引用文献
七山太,北海道中軸部南部,“中の川層群”の層序と岩相.地質学雑誌第98 巻第 11 号, p.1041-1059 1992 年 11 月
Nanayama, F., Takahashi, Y., Yamasaki, T., Nakagawa, M., Iwano, H., Danhara, T., & Hirata, T. (2017). U–Pb zircon ages of the Nakanogawa Group in the Hidaka Belt, northern Japan: Implications for its provenance and the protolith of the Hidaka metamorphic rocks. Island Arc, 27(2), e12234
Seton, M., Flament, N., Whittaker, J., Müller, R. D., Gurnis, M., & Bower, D. J. (2015). Ridge subduction sparked reorganization of the Pacific plate mantle system 60 50 million years ago. Geophysical Research Letters, 42(6), 1732-1740.
