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[T7-P-19]Microstructures of the white and colored layers that constitute the banded structure of silica hot spring sediments.

*Chizuru TAKASHIMA1, Hinata WATANABE2, Kazutoshi TAKAHASHI1, Kotaro IDETA1 (1. Saga Univ., 2. Saga city Shinei Elementary School)
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Keywords:

silica deposit,hot spring,banded structure

 活動的な火山地域で熱水が湧出した際に堆積するシリカ温泉堆積物は,微生物により鉱物沈殿が引き起こされ,堆積物の断面に縞状組織を示すことがある.この特徴からストロマトライトのモダンアナログの可能性が指摘され(Konhauser et al., 2001),また,シリカ堆積物を堆積させる温泉の湧出孔付近は沸点に近い環境のため,地球初期の極限環境のアナログとしても期待されている(Campbell et al., 2015). 
 鹿児島県指宿市にあるたまて箱温泉には,上流から下流に向かってシリカ温泉堆積物がテラスを形成している.たまて箱温泉のシリカ堆積物には,厚さ数ミリの白色層と有色層からなる縞状組織を示す.これまでの観察により,白色層はシリカに被覆された微生物が多く孔隙質であり,有色層は微生物が少なく緻密で,さらに細かいラミナが発達していることがわかっている.本発表では,これまで不明だった有色層の色の原因を明らかにし,有色層のラミナの形成時期を検討する. 
 有色層の色の原因は白色層との成分の違いや孔隙率が考えられる.XRFによる元素分析を行ったところ,各層とも90 mass%程度が二酸化ケイ素であるが,有色層にはマンガンや鉄がやや多く含まれることが判明した.マイクロX線CT画像から孔隙率を求めたところ,予察的ではあるが白色層の孔隙率は有色層の約2倍であった.
 これまで行ってきた堆積速度見積もり実験において,有色層は夏に,白色層はそれ以外の季節に堆積することがわかっている.過去に採集したものを含めた7サンプルについて,有色層中のミクロンオーダーの縞状組織の観察を行なった.その結果,縞の本数や間隔にばらつきがある事から,定期的な周期ではないことが判明した.そこで,有色層にフィラメント状微生物が確認できることとテラスの下流域ではシアノバクテリアが存在することから,微生物代謝が関係しているのではないかと推測した.縞の間隔と堆積速度実験から見積もった1日の堆積厚さ(1日に約25μm:堆積速度は一定と仮定)から縞の形成された日を割り出し,各年の日ごとの日照量と比較した.明瞭な関係性は得られなかったが,ミクロンオーダーの縞状組織は,夏の日照量の比較的に少ない期間の生成している傾向が見られた.

 Konhauser et al. (2001) Microbial-silica interactions in Icelandic hot spring sinter: possible analogues for some Precambrian siliceous stromatolites. Sedimentology, 48, 415-433.
 Campbell et al. (2015) Geyserite in hot spring siliceous sinter: window on Earth’s hottest terrestrial (paleo) environment and its extreme life. Earth-Science Reviews, 148, 44-64.