Presentation Information
[T7-P-20]Changes in biodiversity and marine environments recorded in Furongian microbialites from Shandong Province, North China
*Natsuko ADACHI1, Yoichi EZAKI1, Munetaka Maeda1, Miku Shimatani1, Jianbo LIU2, Yan Zhen3 (1. Osaka Metropolitan University, 2. Peking University, 3. Chinese Academy of Geological Sciences)
Keywords:
Cambrian,Furongian,Microbialite,North China,SPICE Event
北中国山東省済南市には,カンブリア系第二統からフロンギアン統が広範囲に分布する.フロンギアン統最下部のペイビアン階には,ステプト階炭素同位体正偏位 (SPICE) が記録されており,SPICE事変前後で,「Epiphytonで代表される石灰質微生物類が豊富な微生物岩 (朱砂洞層や張夏層のスロンボライト) 」から「石灰質微生物類が乏しい微生物岩(炒米店層のストロマトライト) 」へと特性が変化している (Lee et al., 2015).しかし,その変化や海洋環境との関係には未だ議論がある (Xin et al., 2023).本発表では,済南市鋼城区九龍山セクションに分布する炒米店層下部の微生物岩を対象に,当時の生物多様性の変化や海洋環境との関連を検討する.
九龍山セクションの炒米店層下部 (約70 m) では,少なくとも3層準で微生物岩が認められる.下段から中段では,分岐,癒合を繰り返す直径0.5 cmから2 cmの細コラムからなる分岐状ストロマトライトがドーム状構造を形成する.ドーム側方では,薄層石灰岩や扁平礫岩が堆積する.中段最上部では,直径10 cmから30 cmの太コラムからなるストロマトライトも発達する.分岐状ストロマトライトでは,暗いミクライト層の発達によるラミナが顕著である.フィラメント状石灰質微生物類Girvanellaがまれに認められ,keratose海綿状組織 (幅1 mmから5 mm) がストロマトライトのコラム中にパッチ状に,あるいはコラム間の充填部に分布する.充填部ではそのほか三葉虫やウミユリの破片が散在する.一方,上段では,ドーム状構造を示すスロンボライトが発達する.スロンボライトは,扁平礫岩上に発達し,上部が扁平礫岩で侵食される場合も観察される.スロンボライト側方では,扁平礫やウーイドが堆積する.石灰質微生物類Girvanella,Renalcis,Epiphytonがスロンボライトを特徴づける斑点状組織を形成している.keratose海綿状組織はまれである.スロンボライト中の充填部には,三葉虫,ウミユリなどの破片やまれに海綿骨針も含まれる.
大規模な海洋の無酸素水塊の発達や有機質黒色頁岩の堆積が生じたSPICE事変 (Salzman et al., 2011) によって,山東省では石灰質微生物類が衰退し,環境に耐性のあるkeratose海綿が発達したと考えられていた (Lee and Riding, 2021).しかし,九龍山セクションでは,下位の張夏層と類似の石灰質微生物類EpiphytonやRenalcisがスロンボライトを形成していた.同様の石灰質微生物類からなる微生物岩は,河北省や山西省の浅海環境からも報告されており (Latif et al., 2019),SPICE事変後の海洋環境の影響は堆積場や地域によって異なっていた可能性がある.また,炒米店層上部からは,オルドビス紀に繁栄した頭足類が先駆的に出現している.フロンギアン世は,カンブリア紀とオルドビス紀に生じた生物放散の間で生物多様性が著しく低いギャップの期間と捉えられていた (Harper et al., 2019).しかし,炒米店層の生物の多様性は,従来考えられていたほど低くなかった可能性がある.今後,微生物岩周囲で生息していた骨格生物の層序的変化にも注目し,生物相や海洋環境の変化の詳細を検討する予定である.
(引用文献) Harper et al. (2019) Palaeoworld 28, 4–12. Latif et al. (2019) Carbonate Evap. 34, 825–843. Lee et al. (2015) Earth-Sci. Rev. 145, 66–84. Lee and Riding (2021) Palaeogeogr. Palaeoclimatol. Palaeoecol. 571, 110288. Salzman et al. (2011) PNAS 108, 3876–3881. Xin et al. (2023) Palaeogeogr. Palaeoclimatol. Palaeoecol. 614, 111429.
九龍山セクションの炒米店層下部 (約70 m) では,少なくとも3層準で微生物岩が認められる.下段から中段では,分岐,癒合を繰り返す直径0.5 cmから2 cmの細コラムからなる分岐状ストロマトライトがドーム状構造を形成する.ドーム側方では,薄層石灰岩や扁平礫岩が堆積する.中段最上部では,直径10 cmから30 cmの太コラムからなるストロマトライトも発達する.分岐状ストロマトライトでは,暗いミクライト層の発達によるラミナが顕著である.フィラメント状石灰質微生物類Girvanellaがまれに認められ,keratose海綿状組織 (幅1 mmから5 mm) がストロマトライトのコラム中にパッチ状に,あるいはコラム間の充填部に分布する.充填部ではそのほか三葉虫やウミユリの破片が散在する.一方,上段では,ドーム状構造を示すスロンボライトが発達する.スロンボライトは,扁平礫岩上に発達し,上部が扁平礫岩で侵食される場合も観察される.スロンボライト側方では,扁平礫やウーイドが堆積する.石灰質微生物類Girvanella,Renalcis,Epiphytonがスロンボライトを特徴づける斑点状組織を形成している.keratose海綿状組織はまれである.スロンボライト中の充填部には,三葉虫,ウミユリなどの破片やまれに海綿骨針も含まれる.
大規模な海洋の無酸素水塊の発達や有機質黒色頁岩の堆積が生じたSPICE事変 (Salzman et al., 2011) によって,山東省では石灰質微生物類が衰退し,環境に耐性のあるkeratose海綿が発達したと考えられていた (Lee and Riding, 2021).しかし,九龍山セクションでは,下位の張夏層と類似の石灰質微生物類EpiphytonやRenalcisがスロンボライトを形成していた.同様の石灰質微生物類からなる微生物岩は,河北省や山西省の浅海環境からも報告されており (Latif et al., 2019),SPICE事変後の海洋環境の影響は堆積場や地域によって異なっていた可能性がある.また,炒米店層上部からは,オルドビス紀に繁栄した頭足類が先駆的に出現している.フロンギアン世は,カンブリア紀とオルドビス紀に生じた生物放散の間で生物多様性が著しく低いギャップの期間と捉えられていた (Harper et al., 2019).しかし,炒米店層の生物の多様性は,従来考えられていたほど低くなかった可能性がある.今後,微生物岩周囲で生息していた骨格生物の層序的変化にも注目し,生物相や海洋環境の変化の詳細を検討する予定である.
(引用文献) Harper et al. (2019) Palaeoworld 28, 4–12. Latif et al. (2019) Carbonate Evap. 34, 825–843. Lee et al. (2015) Earth-Sci. Rev. 145, 66–84. Lee and Riding (2021) Palaeogeogr. Palaeoclimatol. Palaeoecol. 571, 110288. Salzman et al. (2011) PNAS 108, 3876–3881. Xin et al. (2023) Palaeogeogr. Palaeoclimatol. Palaeoecol. 614, 111429.
