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[G-P-21]Overview of Pliocene to Early Pleistocene sedimentary rocks and siliceous microfossil assemblages obtained from the northern Ryukyu Arc

*Saki ISHINO1, Takuya ITAKI1, Jun ARIMOTO1, Osamu ISHIZUKA1, Yumiko HARIGANE1, Yuichiro TANAKA1 (1. Geological Survey of Japan, AIST)
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Keywords:

Ryukyu Arc,Tokara Islands,Okinawa Trough,Diaotm,Radiolaria,Pleistocene,Multichannel seismic survey,Dredge

 前期更新世は,琉球弧の構造発達史において堆積環境の重要な変遷期である.この変遷期には,背弧海盆である沖縄トラフの発達に伴い,琉球弧周辺において,陸域の島尻層群に代表される陸源性砕屑物が厚く堆積する環境から,琉球層群に代表される珊瑚礁複合体や石灰質堆積岩が形成される環境へ変化した(Ujiié, 1994).それぞれの環境を示す地層は陸上で広域的に認められる(Kizaki, 1986).一方で,前期更新世の変遷過程を直接観察できる地層の分布は局所的であり,陸上では琉球弧中部の沖縄島や喜界島でのみ知られている(松田ほか,2023).特に,琉球弧北部のトカラ列島周辺海域は堆積岩の陸上露頭が乏しいことから,前期更新世の構造運動や堆積環境の時空間変化は依然として不明な点が多い.そこで,本研究では,この重要な変遷期における沖縄トラフ発達過程および琉球弧の堆積環境変遷を理解するため,海域に分布する地層から鮮新統―下部更新統の層序を明らかにすることを目的とした.
 地質調査総合センターでは,トカラ列島周辺海域における20万分の1海底地質図作成を目的として,2021-2022年にかけて地質調査航海を実施してきた.マルチチャンネル反射法地震探査データから音響層序を解釈するとともに(石野ほか,2024),ドレッジで採取した堆積岩試料の年代を石灰質微化石生層序により制約した(有元・田中, 2024).
 これらの調査結果を用いて,各音響ユニットの形成年代を推定し,海底下における分布をマッピングした結果,琉球弧北部の海底表層から海底下数百 mの深度に鮮新世―前期更新世の地層が広く分布していることが明らかになった.鮮新統―下部更新統が露出している急崖から,年代が古い順に,固結した赤褐色凝灰質泥岩(石灰質ナンノ化石帯CN12帯),半固結の灰色泥岩(CN13a帯),固結した赤褐色軽石質砂岩・白色凝灰岩(CN14a帯)などが採取された.さらに,これらの岩石からは放散虫化石が確認されたほか,半固結の灰色泥岩(CN13a帯)からは珪藻化石も産出した.琉球弧ではこれらの珪質微化石の報告は極めて少なく,本研究海域における下部更新統は,今まで報告されてきた琉球弧中部のものと異なる堆積環境であることが示唆された.本研究では,これらの堆積岩の詳細および珪質微化石の群集解析結果を報告し,前期更新世における堆積環境の変化について考察する.

引用文献:
Kizaki (1986) Tectonophysics,125, 193–207.
Ujiié (1994) Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology, 108, 457–474.
松田ほか(2023)地質学雑誌,129,153–164.
石野ほか(2024)地質調査研究報告,75,167–196.
有元・田中(2024)地質調査研究報告,75,209–222.