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[G-P-23]Spatial distribution of modern ostracode assemblages in the East China Sea

*Sota NAKATO1, Hokuto IWATANI1, Keita SAITO2, Yuuka TATERA2, Takuya ITAKI3 (1. Yamaguchi Univ., 2. JCG, 3. AIST)
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Keywords:

ostracode,the East China Sea,the Kuroshio Current

 東シナ海は、南西諸島とユーラシア大陸の間に位置する太平洋西部の縁海であり,北西側で黄海に、北東側で日本海に、南西側で南シナ海に、南東側でフィリピン海に接続する。その面積のおよそ70%を水深200 m以浅の陸棚が占めており(Kiyomoto et al.,2001)、大気中の二酸化炭素のシンクとしても機能している(柳,1997)。また、陸棚斜面沿いには、世界最大級の暖流の一つである黒潮が台湾と石垣島の間から流入し北上している。東シナ海では、中国沿岸水および黒潮がもたらす豊富な栄養塩により、生物生産および生物多様性が高く、豊かな漁場が形成されている(水谷ほか,2005)。東シナ海は海洋地理のみならず生物資源の観点からも重要であり、同海域における包括的かつ詳細な生物学的研究は不可欠である。
本研究は、多様な海洋環境をもつ東シナ海における現生底生生物の分布実態と、その制御要因を明らかにすることを目的とする。モデル生物としては、水域のさまざまな環境に生息し、海洋環境の良い指標とされる貝形虫を用いた。本研究は、海上保安庁海洋情報部によって採取された表層堆積物を試料として使用した。
その結果、表層堆積物からは、計4256個体、65属135種の貝形虫が確認された。これらはいずれも亜熱帯地域や東シナ海に広く分布する分類群であった。得られた貝形虫のうち、主要な16属22種についてR-modeクラスター分析を行ったところ、4つの貝形虫種群(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ)に分類された。そのうち、種群ⅡおよびⅣは水温、水深、含泥率と明瞭な相関を示し、種群Ⅱは深海泥底種、種群Ⅳは黒潮の影響を受ける種によって特徴づけられた。また、Q-modeクラスター分析の結果、4つの生物相(KL・NL・CM・NC)に分類された。いずれの生物相においても種群Ⅳの割合が高かったことから、本研究海域の生物相は黒潮の影響を強く受けていることが示唆された。さらに、深海泥底種により特徴づけられる種群Ⅱの産出割合が水深と同調して変化していることから、本研究海域の生物相分布は、水深に伴う底質環境の変化によって形成されていることが明らかとなった。

【引用文献】Kiyomoto et al., 2001. Journal of Oceanography, 57, 37–45; 柳,1997.海の研究, 6,163–171. 水谷ほか,2005. 日本水産学会誌,71, 44–53.