Presentation Information
[G-P-34]Mapping of lithology and alteration zones during mountain tunnel construction: A survey in the Pliocene-Pleistocene hydrothermal-altered volcanic area
*Aren KANAZAWA1, Shuro YOSHIKAWA1, Ryohei HASE2, Ryoichi ASAUMI3, Ken-ichi ADACHI3 (1. Institute of Technology, Shimizu Corporation, 2. Civil Engineering Headquarters, Shimizu Corporation, 3. Kyusyu Branch, Shimizu Corporation)
Keywords:
mountain tunnel,observation of tunnel face,exploration ahead of the tunnel face,hydrothermal alteration,Hisatsu Volcanic Rocks
【はじめに】
真幸トンネルは宮崎-鹿児島県境,加久藤・大口盆地間の山間部をバイパスするトンネルである.本地域には,後期鮮新世~前期更新世の中期・新期肥薩火山岩類とそれらを覆う中期更新世の加久藤火砕流堆積物が分布する[1].真幸トンネル工事(1工区;延長850m)の掘削区間には強烈な熱水変質を被った安山岩質の溶岩や火山砕屑岩が分布し,これらは真幸変朽安山岩[2]と総称される.
山岳トンネル工事では,トンネルの掘削面(切羽)より前方の地質分布を予測することが重要となる.本発表では,トンネル坑口から約700~850mの区間において,切羽の地質状況を総合的に観察する「切羽観察」,掘削中に行うコアボーリングによって切羽前方の地質状況を探査する「先進ボーリング」,および削岩機によるノンコアボーリングによって切羽前方の地質状況を探査する「探り削孔」の結果に基づいて地質分布を精細に予測した結果を報告する.
【調査方法】
切羽観察は1日に1回(日進2~4mにつき1回)行い,切羽スケッチを作成し岩相・変質区分の分布を記録した.詳細な観察には採取した掘削ズリ(掘削により出る岩塊・岩片)を用いた.熱水変質岩の原岩の岩相は,岩石に残存する組織を肉眼で観察することによって識別・分類した.詳細検討のため,薄片観察をいくつかの試料を対象に行った.また変質区分の識別・分類には加藤・国分(2017)の熱水変質岩の肉眼記載要領[3]を用いた.代表的な試料に対してはXRD分析を行った.施工中に岩相・変質区分の分布を縦断図として描画し,掘削の進行に伴って更新することで地質の分布傾向を逐次把握した.
先進ボーリングは坑口から約790mの地点で切羽から掘進長約100m(うち手前40mはノンコア)で実施し,コアの岩相および変質区分を切羽観察と同様に記載した.また,探り削孔は坑口から約815mの地点において,切羽の中心から上下左右の4か所で,掘進長約30mで実施した.この時の穿孔速度の変化,削孔時の返り水の色および返り水に含まれる岩片(スライム)の性状の記載から,大まかな岩相・変質区分の分布を予測した.
【結果】
1.切羽観察
切羽観察結果からマッピングした岩相・変質区分縦断図を図に示す.当該区間に分布する真幸変朽安山岩の岩相は,塊状緻密な安山岩,破砕した安山岩,火山砕屑岩,凝灰岩の巨礫を含む角礫岩の4種に大別される.各層は層厚数10cm~数mで,層厚は側方に変化しレンズ状の形態をなすことがある.地層中には断層や岩脈はみられず,大局的には掘削方向に低角度(見かけ約10~30°)で傾斜して分布する.
変質区分は[3]に従えば,緑色系変質(プロピライト化)・粘土化・珪化の3種が主で,これらが亀裂沿い変質・コアストーン変質・全体変質として見られる.粘土化変質には灰色を呈するものと乳白色を呈するものの2種が存在する.原岩の岩相によって被る変質作用の種類と程度が異なり,塊状緻密な安山岩と比較して,破砕した安山岩は変質強度がより高い.また安山岩と比較して,凝灰質な火山砕屑岩は変質強度がより高い.礫質岩(破砕した安山岩,火山砕屑岩,凝灰岩の巨礫を含む角礫岩)では,基質は変質強度が高く,礫は変質強度が低くコアストーン化することが多い.変質区分境界は岩相境界に概ね沿っており,岩相と同様に掘削方向に低角度で傾斜して分布する.
2.前方探査結果とその可視化
先進ボーリングおよび探り削孔によって,硬岩(プロピライト化した塊状緻密な安山岩)と軟岩(粘土化した破砕した安山岩)の境界が,坑口から約840~875mの区間において,掘削方向に低角度に傾斜して分布していることが確認された.この層境界は掘削時にはトンネル天端部から出現すると予測した.これを㈱地層科学研究所の3次元統合可視化ソフトウェア「Geo-Graphia」,および3次元地質モデル逐次更新システム「SG-ReGrid[4]」を用いて3次元的に描画し,空間的な分布をイメージした[5].前方探査からイメージした層境界の姿勢は,切羽観察結果に基づいてマッピングした地層の姿勢と整合的だった.実際の掘削時には,この層境界は予測地点に近い位置の天端部から見かけ約10°で掘削方向に傾斜して出現した.結果として,切羽に現れる地質の変化を比較的精度良く予測することができ,安全性を確保した施工を進めることができた.
文献
[1]斎藤ほか,2010,20万分の1地質図幅「八代及び野母崎の一部」.[2]山本,1960,九工大地質学研究室.[3]加藤・国分,2017,日本地熱学会平成29年学術講演会講演要旨集.[4]吉河ほか,2025,応用地質.[5]金澤ほか,2025,令和7年度土木学会全国大会にて報告予定.
真幸トンネルは宮崎-鹿児島県境,加久藤・大口盆地間の山間部をバイパスするトンネルである.本地域には,後期鮮新世~前期更新世の中期・新期肥薩火山岩類とそれらを覆う中期更新世の加久藤火砕流堆積物が分布する[1].真幸トンネル工事(1工区;延長850m)の掘削区間には強烈な熱水変質を被った安山岩質の溶岩や火山砕屑岩が分布し,これらは真幸変朽安山岩[2]と総称される.
山岳トンネル工事では,トンネルの掘削面(切羽)より前方の地質分布を予測することが重要となる.本発表では,トンネル坑口から約700~850mの区間において,切羽の地質状況を総合的に観察する「切羽観察」,掘削中に行うコアボーリングによって切羽前方の地質状況を探査する「先進ボーリング」,および削岩機によるノンコアボーリングによって切羽前方の地質状況を探査する「探り削孔」の結果に基づいて地質分布を精細に予測した結果を報告する.
【調査方法】
切羽観察は1日に1回(日進2~4mにつき1回)行い,切羽スケッチを作成し岩相・変質区分の分布を記録した.詳細な観察には採取した掘削ズリ(掘削により出る岩塊・岩片)を用いた.熱水変質岩の原岩の岩相は,岩石に残存する組織を肉眼で観察することによって識別・分類した.詳細検討のため,薄片観察をいくつかの試料を対象に行った.また変質区分の識別・分類には加藤・国分(2017)の熱水変質岩の肉眼記載要領[3]を用いた.代表的な試料に対してはXRD分析を行った.施工中に岩相・変質区分の分布を縦断図として描画し,掘削の進行に伴って更新することで地質の分布傾向を逐次把握した.
先進ボーリングは坑口から約790mの地点で切羽から掘進長約100m(うち手前40mはノンコア)で実施し,コアの岩相および変質区分を切羽観察と同様に記載した.また,探り削孔は坑口から約815mの地点において,切羽の中心から上下左右の4か所で,掘進長約30mで実施した.この時の穿孔速度の変化,削孔時の返り水の色および返り水に含まれる岩片(スライム)の性状の記載から,大まかな岩相・変質区分の分布を予測した.
【結果】
1.切羽観察
切羽観察結果からマッピングした岩相・変質区分縦断図を図に示す.当該区間に分布する真幸変朽安山岩の岩相は,塊状緻密な安山岩,破砕した安山岩,火山砕屑岩,凝灰岩の巨礫を含む角礫岩の4種に大別される.各層は層厚数10cm~数mで,層厚は側方に変化しレンズ状の形態をなすことがある.地層中には断層や岩脈はみられず,大局的には掘削方向に低角度(見かけ約10~30°)で傾斜して分布する.
変質区分は[3]に従えば,緑色系変質(プロピライト化)・粘土化・珪化の3種が主で,これらが亀裂沿い変質・コアストーン変質・全体変質として見られる.粘土化変質には灰色を呈するものと乳白色を呈するものの2種が存在する.原岩の岩相によって被る変質作用の種類と程度が異なり,塊状緻密な安山岩と比較して,破砕した安山岩は変質強度がより高い.また安山岩と比較して,凝灰質な火山砕屑岩は変質強度がより高い.礫質岩(破砕した安山岩,火山砕屑岩,凝灰岩の巨礫を含む角礫岩)では,基質は変質強度が高く,礫は変質強度が低くコアストーン化することが多い.変質区分境界は岩相境界に概ね沿っており,岩相と同様に掘削方向に低角度で傾斜して分布する.
2.前方探査結果とその可視化
先進ボーリングおよび探り削孔によって,硬岩(プロピライト化した塊状緻密な安山岩)と軟岩(粘土化した破砕した安山岩)の境界が,坑口から約840~875mの区間において,掘削方向に低角度に傾斜して分布していることが確認された.この層境界は掘削時にはトンネル天端部から出現すると予測した.これを㈱地層科学研究所の3次元統合可視化ソフトウェア「Geo-Graphia」,および3次元地質モデル逐次更新システム「SG-ReGrid[4]」を用いて3次元的に描画し,空間的な分布をイメージした[5].前方探査からイメージした層境界の姿勢は,切羽観察結果に基づいてマッピングした地層の姿勢と整合的だった.実際の掘削時には,この層境界は予測地点に近い位置の天端部から見かけ約10°で掘削方向に傾斜して出現した.結果として,切羽に現れる地質の変化を比較的精度良く予測することができ,安全性を確保した施工を進めることができた.
文献
[1]斎藤ほか,2010,20万分の1地質図幅「八代及び野母崎の一部」.[2]山本,1960,九工大地質学研究室.[3]加藤・国分,2017,日本地熱学会平成29年学術講演会講演要旨集.[4]吉河ほか,2025,応用地質.[5]金澤ほか,2025,令和7年度土木学会全国大会にて報告予定.

