Presentation Information
[G-P-46]Results of the geological survey of the Onnebetsu Formation, Yezo Group in the Onnebetsu, Shibetsu City, Hokkaido (Preliminary report)
*Koh KUBOMI1, Atsufumi NARITA1, Takafumi ENYA1, Tetsuya HOMBE2, Kazuhiko MIZUTA2 (1. Hokkaido Museum, 2. Shibetsu City Museum)
Keywords:
Yezo Group,Onnebetsu Formation,Cretaceous,tuff,Shibetsu City,Hokkaido
北海道北部の空知-エゾ帯は,上部ジュラ系~下部白亜系の幌加内オフィオライトおよび空知層群,白亜系蝦夷層群,イドンナップ帯付加体,および神居古潭変成岩類から構成される(岡,1991;植田,2006;Ueda, 2016など).幌加内町~士別市周辺は,上記の地質学的要素が揃った非常に重要な地域であり,北海道の中生代の島弧-海溝系を復元するために,岩石学・古生物学的研究が昔から盛んに進められてきた(例えば,石塚,1980;君波ほか,1992など多数).士別市の温根別の採石場周辺には,砂岩や泥岩から構成される蝦夷層群上部の温根別層(小山内ほか,1970;松下ほか,1977)が分布する.本層からは年代決定に有効な大型化石や微化石の産出報告はこれまでなく,古生物学的研究は進んでいない.また,本層は厚い凝灰岩層を含むことが昔から注目されてきたが,その放射年代はこれまで検討されてこなかった.そこで本調査では,採石場に露出する温根別層の地質調査を実施したため,その結果を予察的に報告する.
採石場に露出する温根別層は,シルト~泥岩および砂岩から構成され,白色~灰色を呈する凝灰岩層を挟在する.本層の走向NS–N40°E・傾斜10–20°Wである.凝灰岩を挟在する砂岩層は,層厚約80 mであり,青緑色を呈する中粒~粗粒な砂岩である.凝灰岩層は層厚約17 mであり,単一の凝灰岩層ではなく,珪長質凝灰岩,凝灰質砂岩,凝灰質シルト岩および結晶質凝灰岩といった複数の単層からなることが明らかとなった.凝灰岩層を下位より岩相ごとに区分すると,最下部の珪長質凝灰岩層は層厚約2 mで灰色を呈する.粒径は細粒~中粒であり,方解石脈が所々に発達する.下部の凝灰質砂岩層は最大層厚約4~5 mと厚く,粒径は粗粒である.中部の結晶質凝灰岩層は層厚約30 cmと薄く,白色~灰色を示し,粒径は極細粒である.下位の珪長質凝灰岩や凝灰質砂岩に比べて,黒雲母を多く含み,岩片などの外来粒子はほとんど観察されない.上部では,凝灰質砂岩からシルト岩へと上方細粒化する,層厚約70 cmの2つのユニットが存在する.また,ユニット中のシルト~泥岩には炭化した植物化石片を多く含む.最上部の粗粒~極粗粒砂岩は一部にハンモック状斜交層理が発達する.最上部からは,軟体動物化石(アンモナイト類や二枚貝類)の破片を2点発見した.軟体動物化石の破片1点はアンモナイト類に類似するものの,本調査では特定には至らなかった.
従来,近隣地域の蝦夷層群の岩相対比から,本層は大夕張地域に分布する蝦夷層群中部の佐久層に対比されてきた(小山内ほか,1970;松下ほか,1977).大夕張地域の佐久層白金泥質砂岩部層は,層厚約数cm~30 cmの凝灰岩を多数含む(高嶋ほか,2018).それらの凝灰岩から約95–93 MaのジルコンU–Pb年代が報告されており,浮遊性有孔虫化石の検討や炭素同位体比分析とも併せて,その堆積年代は上部セノマニアン~チューロニアン階に対比されている(Quidelleur et al., 2011;Du Viver et al., 2015).本調査で発見した結晶質な凝灰岩は岩相や層厚が類似することから,先行研究で示された凝灰岩に対比できる可能性がある.今回得られた層序をもとに,微化石類の検討や凝灰岩を用いたジルコンU–Pb年代測定から,詳細な堆積年代を制約し,本地域を含めた北海道中央部の蝦夷層群上部~最上部の広域層序対比を考察する.
引用文献 Du Viver et al., 2015, Earth Planet. Sci. Lett., 428, 204–216. / 石塚,1980,地質雑,86,119–134. / 君波ほか,1992,地質学論集,38,1–11. / 松下ほか,1977,北海道立地下資源調査所,30p. / 岡,1991,士別市立博物館報告,9, 39–60. / 小山内ほか,1970,北海道立地下資源調査所,27p. / Quidelleur et al., 2011, Chem. Geol., 286, 72–83. / 高嶋ほか,2018,地質雑,124,381–398. / 植田,2006,地質雑,112,699–717. / Ueda, 2016, In Moreno, T., Wallis, S. R., Kojima, T. and Gibbons, W., eds., The Geology of Japan, Geol. Soc. London, 201–221.
採石場に露出する温根別層は,シルト~泥岩および砂岩から構成され,白色~灰色を呈する凝灰岩層を挟在する.本層の走向NS–N40°E・傾斜10–20°Wである.凝灰岩を挟在する砂岩層は,層厚約80 mであり,青緑色を呈する中粒~粗粒な砂岩である.凝灰岩層は層厚約17 mであり,単一の凝灰岩層ではなく,珪長質凝灰岩,凝灰質砂岩,凝灰質シルト岩および結晶質凝灰岩といった複数の単層からなることが明らかとなった.凝灰岩層を下位より岩相ごとに区分すると,最下部の珪長質凝灰岩層は層厚約2 mで灰色を呈する.粒径は細粒~中粒であり,方解石脈が所々に発達する.下部の凝灰質砂岩層は最大層厚約4~5 mと厚く,粒径は粗粒である.中部の結晶質凝灰岩層は層厚約30 cmと薄く,白色~灰色を示し,粒径は極細粒である.下位の珪長質凝灰岩や凝灰質砂岩に比べて,黒雲母を多く含み,岩片などの外来粒子はほとんど観察されない.上部では,凝灰質砂岩からシルト岩へと上方細粒化する,層厚約70 cmの2つのユニットが存在する.また,ユニット中のシルト~泥岩には炭化した植物化石片を多く含む.最上部の粗粒~極粗粒砂岩は一部にハンモック状斜交層理が発達する.最上部からは,軟体動物化石(アンモナイト類や二枚貝類)の破片を2点発見した.軟体動物化石の破片1点はアンモナイト類に類似するものの,本調査では特定には至らなかった.
従来,近隣地域の蝦夷層群の岩相対比から,本層は大夕張地域に分布する蝦夷層群中部の佐久層に対比されてきた(小山内ほか,1970;松下ほか,1977).大夕張地域の佐久層白金泥質砂岩部層は,層厚約数cm~30 cmの凝灰岩を多数含む(高嶋ほか,2018).それらの凝灰岩から約95–93 MaのジルコンU–Pb年代が報告されており,浮遊性有孔虫化石の検討や炭素同位体比分析とも併せて,その堆積年代は上部セノマニアン~チューロニアン階に対比されている(Quidelleur et al., 2011;Du Viver et al., 2015).本調査で発見した結晶質な凝灰岩は岩相や層厚が類似することから,先行研究で示された凝灰岩に対比できる可能性がある.今回得られた層序をもとに,微化石類の検討や凝灰岩を用いたジルコンU–Pb年代測定から,詳細な堆積年代を制約し,本地域を含めた北海道中央部の蝦夷層群上部~最上部の広域層序対比を考察する.
引用文献 Du Viver et al., 2015, Earth Planet. Sci. Lett., 428, 204–216. / 石塚,1980,地質雑,86,119–134. / 君波ほか,1992,地質学論集,38,1–11. / 松下ほか,1977,北海道立地下資源調査所,30p. / 岡,1991,士別市立博物館報告,9, 39–60. / 小山内ほか,1970,北海道立地下資源調査所,27p. / Quidelleur et al., 2011, Chem. Geol., 286, 72–83. / 高嶋ほか,2018,地質雑,124,381–398. / 植田,2006,地質雑,112,699–717. / Ueda, 2016, In Moreno, T., Wallis, S. R., Kojima, T. and Gibbons, W., eds., The Geology of Japan, Geol. Soc. London, 201–221.
